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人気のフリーレント物件のウラ側 借りる際の3つの注意ポイント

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イメージ/©︎malathirajagopal・123RF

人気のフリーレント 落とし穴もある?

多くの場合1カ月、長いとそれ以上の期間にわたって、当初の家賃を払わなくて済む「フリーレント」付きの物件。引っ越し費用など何かと出費がかさむ住み替えの時期には大助かりだ。

だが、意外な落とし穴もある。契約の際は注意が必要だ。

これから賃貸での部屋探しを始める方へ、フリーレント付きの物件を借りようとする際、ぜひ気に留めておいてほしい、3つの注意事項を伝えたい。

さらに、不動産のプロ以外はあまり知らない、フリーレントに関わる秘密もこっそりお伝えしよう。

1.フリーレントが設定されやすいのはそもそも不人気物件

フリーレントが付く物件はそもそも不人気物件であることが多い。

何らかのウィークポイントがあるため、なかなか入居者を決められずにいる物件に対するテコ入れ策として、管理会社や仲介会社が賃貸住宅オーナー(大家・貸主)に「フリーレントを付けましょう」と提案し、それをオーナーが了承しているケースが多いのがその理由だ。

なので、フリーレント付きの物件を選ぶ際の第一の注意点はこの部分となる。フリーレントを設定する要因となったウィークポイントをしっかりと押さえておこう。

とはいえ、要因にはさまざまなものがある。築年が古く、建物があまりキレイではないからなのか? バス・トイレが一緒だったり、洗濯機置き場が部屋の外にあったりと、仕様が不人気だからなのか? そこは日当りがゼロの位置にある1階の部屋なのか? あるいは隣が工場で音がうるさいのか? 駅から遠いのか? すぐ横が墓地なのか? そうした問題が複数重なっている物件なのか……?


フリーレントが設定された要因を押さえておくことが重要 イメージ/©︎maru1122maru・123RF

そんな疑問については、遠慮することはない。管理会社や仲介会社に(いずれもユーザーの目からは不動産会社となる)率直に尋ねてみよう。

「なぜ、この物件のオーナーはフリーレントを付けてくれているんですか? フリーレント付きの物件には理由があると聞くけれど、この物件の場合も何かありますか?」

先方がそれを把握していれば、あとあとのトラブルを避けるため、ほぼ隠すことなく教えてくれるだろう(期待も込めてこう書いておく)。

もっとも、不動産会社にもオーナーから直接募集依頼を受けている会社や、そうでない会社、いくつか立場の違いがあるため、物件のことをどこまで詳しく知っているかについては差がある。

なので、もちろん内見の際も、あるいは物件広告を見る際も、ぼんやりとせず、物件の内外・周辺の状況にしっかりと目を配っておくことがやはり重要だ。

一例を紹介しよう。首都圏のある駅のエリアでその駅からやや遠ざかったところに横たわる、ある一本の“線”を跨いだ先ではいきなりフリーレント物件が増加する……といった場所がある。

なぜか? 当然気になるのはその「線」だが、正体は広い「道路」だ。


迂回を迫られる立地には注意が必要だ イメージ/©︎aniruto7o6・123RF

大型トラックが四六時中ひっきりなしに行き交う幹線道路で横断歩道がきわめて少ない。なので、ここを渡るためには場所によっては延々と歩いて迂回する必要がある。もしくは、歩道橋の利用を迫られやすい。加えて、その歩道橋も数が少ない。

そのため、この車で溢れる川のような道路がネックとなり、この道路を越えて駅から遠い場所では生活が一気に不便になってしまう。ゆえに、そこに建つ賃貸物件も必然、不人気となりやすく、いきおいフリーレントも設定されやすいというのが、このエリアの実情だ。

なお、こうした状況は内見の際、駅から実際に歩くことなく、不動産会社の車に乗せられて物件までを往復するのみだと大抵見逃しやすい。

地図をしっかりと眺めておくほか、グーグルのストリートビューも覗いておくと、あとからのビックリやガッカリを減らすことができるだろう。

2.フリーレントは取り消されることがある プラス違約金も!?

フリーレントは場合によってはあとから取り消されることもある。このこともしっかり覚えておこう。

すなわち、入居後そこに長く住むことなく一定期間内に退去すると、いわばペナルティとして、さかのぼってフリーレントの対象となっていた期間の家賃を請求されるケースがあるのだ。

「一定期間」の設定はさまざまだ。半年、1年……と、長くなればなるほど、入居者にとっては不利となる。当然ながら、なんらかの理由で退去したくなっても、それをしにくい状態におかれる期間が増すからだ。

ちなみに、こうした「〇カ月縛り」「〇年縛り」的なやり方はフリーレントが賃貸物件に導入され始めた頃、フリーレント期間が終了するとともに別の物件に移り住んでしまう“渡り鳥”入居者がいたことなどがきっかけとなり、始まったとされている。

結果、こうしたちゃっかり者の横行を避けるため、いまではほとんどのフリーレント物件が、上記の縛りを設定しているのが実情だ。

加えて、そもそもかなり不人気なため、致し方なくフリーレントが設定されているような物件などでは、フリーレント以前に短期解約を抑えるための「違約金」が設けられている場合もある。これには特に注意を払いたい。

例えば、「1年以内に解約すると1カ月のフリーレント期間は取り消し」が設定されている物件で、なおかつ「半年未満の解約で家賃2カ月分」「半年以上1年以内の解約なら1カ月分」と、短期解約にともなう違約金が設定されている場合、半年未満で解約してしまうと出費は一気に家賃3カ月分となる。11カ月解約でも2カ月分だ。“被害”はきわめて大きい。

つまり、こうした物件では、ある意味、覚悟を決めての入居が必要となる。よく覚えておこう。

3.いきなり滞納!も

3つ目の注意点は、これはほんの軽いミスともいえるが、結果が案外重かったりするので、よく心得ておいてほしい。

「うっかり滞納」だ。

フリーレント期間が当初存在する分、家賃のことをつい忘れ、銀行口座を残高不足のままにしていたり、振り込みを忘れたりと、フリーレント期間終了後のいきなり初っ端から、家賃を滞納してしまう人がいる。

もちろん、「ついうっかり!ゴメンナサイ」でコトは済むが、1度これをやると、次が起きた際は前歴2回のカウントとなる。ぜひ注意しておこう。

同じ物件なのにフリーレントが付いたり付かなかったり?

最後に、一般の人はあまり知らないフリーレントにかかわる話を伝えよう。

実はすべてではないが、フリーレントは同じ物件でも扱う不動産会社によって付いたり付かなかったりすることがある。

なぜか? 仕組みはこうだ。

まず、以下を意思決定しているのは、通常は物件のオーナーだ。あるいはオーナーから直接入居者募集を依頼されている管理会社か、または同じ立場の「元付け」と呼ばれる不動産会社が、これをオーナーに提案し採用されていることが多い。

カギとなるのは「インセンティブ」だ。

オーナーはまずはその物件の入居者が早く決まるよう、例えば家賃1カ月分に相当するインセンティブを設定する。出費はオーナーとなる。

そのうえで、管理会社や元付けを通じ、以下のように呼びかける。なお、呼びかける相手は、その物件を実際に広告し、入居者募集をする「客付け」と呼ばれる不動産会社だ。

「このインセンティブについては、契約を勝ち取った貴社(客付け)が自らの報酬として受け取るか、あるいは入居者へフリーレントを提供するための元手とするか、どちらでもよい。任意に判断を」

フリーレントの流れ(一例)

図/編集部作成

つまり、不動産会社が前者(自らへの報酬)を選ぶならば、もともとの仲介手数料に加え、成約時の収入がさらに増えるため、入居希望者へのプッシュが当然手厚くなる。

一方、後者(フリーレント)ならば、広告に「フリーレント」と打つことができる。すなわち、入居希望者の目をひくことで広告効果が上がり、契約のチャンスが増えることに期待がもてる。

そこで、客付けとしては自らの得意とする辺りも考えながら、どちらか望む方を選択することになるわけだ。

なお、オーナーとしては客付けがどちらを選んでも、結果が出ればそれでOKの立場となる。つまり、同じ額のお金が出て行くか(報酬)、入って来なくなるか(フリーレント)、その違いが生ずるのみだ。

以上をふまえて、客付けをする不動産会社が「複数ある」と考えてみよう。同じ物件でもフリーレントが付いたり付かなかったりすることがある仕組みが、すぐに理解できるだろう。

もちろん、すべてのフリーレントで上記の運用が行われているわけではない。しかしながら、この話はそれほど稀な話でもない。一般の人も、知っておいて損はないだろう。

ちなみに、上記のインセンティブをオーナーがさらに増やし、家賃2カ月分で設定したとすればどうなるだろうか?

答えは簡単だ。客付け側の選択肢も、さらに広がることになる。

すなわち、2カ月分全てを自らへの報酬とするか、フリーレントを2カ月付けて“目玉物件”にするか、あるいは、1カ月分を報酬に、1カ月分をフリーレントにして、入居者と半分ずつ分け合うか………もちろん、入居者側とすれば、より多くフリーレントを付ける判断をしている会社を見つけて選ぶのがおトク、ということになるわけだ。 

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この記事を書いた人

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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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