「人口100人でみた日本」10年前と現在を比べる。後期高齢者と子どもの数が逆転
朝倉 継道
2024/10/24
日本の「現在の姿」を示す分かりやすい資料
厚生労働省が毎年公表している「人口100人でみた日本」。厚生労働白書に添えられている。日本の人口を仮に100人であるとして、雇用、福祉、医療など、各分野の数字を拾い、まとめている。子どもにも分かりやすい簡潔な内容で、日本の現在(いま)を解説してくれる資料だ。実際に、娘さんや息子さん、お孫さんなど、子どもと一緒にひもといてみるのもいいだろう。
なお、この「人口100人でみた日本」、過去の年次版と比べてみるとさらに面白い。時間を経て変わっていく国の姿がよく掴めるのだ。
この記事では、最新の2024年版(令和6年版)と10年前の2014年版(平成26年版)を見比べながら、内容のいくつかを紹介していくこととしたい。
子どもよりも、おじいちゃん、おばあちゃんが多くなった日本
最初に、高齢者と子どもの数だ。日本の人口を100人と仮定すると、以下のとおりとなる。
24年版 | 65歳以上 | 29.1人 | 内、75歳以上 16.1人 |
15歳未満 | 11.4人 | ||
14年版 | 65歳以上 | 25.1人 | 内、75歳以上 12.3人 |
15歳未満 | 12.9人 |
このとおり、10年前の14年版では、65歳以上の割合はほぼ「4人に1人」だった。それが、最新の24年版では「3人に1人」がだんだんと近づく状況となっている。
一方、子ども(15歳未満)の数は、14年版では75歳以上をわずかに上回っていたが、24年版では逆転されている。この10年の間に、わが国では、子どもよりも後期高齢者にあたるおじいちゃん、おばあちゃんの数の方が完全に多くなったというわけだ。
以下は、そんな社会のかたちが別の面に表れた数字となる。仮に日本の人口が100人だとすると―――
年 | 介護サービスを受けている人 | 老齢年金の受給者 |
---|---|---|
24年版 | 4.3人 | 27.8人 |
14年版 | 3.8人 | 23.3人 |
なお、国の推計では、65歳以上の割合は、30年代の後半に「3人に1人」を超えるとされている。(日本の将来推計人口(令和5年推計)国立社会保障・人口問題研究所)
働く人が増え、働く時間が短い人も増えた
労働・雇用の分野を見てみよう。
24年版 | 仕事に就いている人 | 54.3人 |
内、雇われている人 | 48.9人 | |
内、自営している人 | 4.1人 | |
14年版 | 仕事に就いている人 | 49.6人 |
内、雇われている人 | 43.6人 | |
内、自営している人 | 4.4人 |
24年版では14年版に比べて仕事に就いている人の割合が増えている。内訳を見ると、自営の数字は減っている。被雇用者の伸びが、増加の要因として大きい。
そのうえで、労働時間はこのようになっている。
年 | 短時間働いている人(週35時間未満) | 長時間働いている人(週60時間以上) |
---|---|---|
24年版 | 17.5人 | 2.9人 |
14年版 | 14.7人 | 4.5人 |
長時間働いている人の割合が減り、逆に短時間の人が数字を伸ばしている。
つまり、「働く人は増えたが、長時間労働をする人の割合は減った」ということで、いわゆる働き方改革の浸透や、女性、高齢者の労働市場への参加など、複合的な要因が示唆される結果となっている。
さらに、こんな数字もある。
年 | 失業者 | 雇用保険受給者 |
---|---|---|
24年版 | 1.4人 | 0.3人 |
14年版 | 2.1人 | 0.5人 |
いずれも、仕事を失っている人の割合を示すものだが、人手不足が叫ばれる今日を反映してか、現状、この面での環境は過去に比べ改善されているようだ。
人口の4割が「通院者」
健康・医療に関してはこんな数字がある。見て驚く人も多いだろう。
年 | 病気やけがなどで通院している人 |
---|---|
24年版 | 41.7人 |
14年版 | 37.0人 |
なんと、現在(24年版)の日本においては「通院者」が人口の4割を超えている。
そこで、数字の内訳を拾ってみるとこうなる。(原資料・2022年国民生活基礎調査より)
9歳以下 | 13.1人 |
10~19歳 | 13.8人 |
20~29歳 | 15.4人 |
30~39歳 | 21.1人 |
40~49歳 | 28.0人 |
50~59歳 | 41.9人 |
60~69歳 | 59.0人 |
70~79歳 | 70.8人 |
80歳以上 | 72.8人 |
65歳以上再掲 | 69.6人 |
75歳以上再掲 | 72.9人 |
全年代総数 | 41.7人 |
見てのとおり、「70~79歳」および「80歳以上」では、病気やけがなどで通院している人の割合が7割を超えている。「60~69歳」でも、ほぼ6割だ。
全人口の4割以上が通院者という、一見驚きの状況は、高齢社会がやはり生み出しているものであることがよくわかる。
「生活習慣病」を患う人が増えている
通院や病気といえば、以下も気になる数字だ。日本の人口を100人と仮定した場合の各生活習慣病の患者数となる。
年 | がん | 糖尿病 | 高血圧性疾患 | 心疾患 | 脳血管疾患 |
---|---|---|---|---|---|
24年版 | 2.9人 | 4.6人 | 12.0人 | 2.4人 | 1.4人 |
14年版 | 1.2人 | 2.1人 | 7.1人 | 1.3人 | 1.0人 |
全ての数字が24年版で増えている。当然ながら、高齢化がここでも影響していることは容易に想像可能だ。
ただし、一方で、国民の健康意識が高まっていることを表すこんな数字もある。全ての項目で24年版での“改善”が示されている。
年 | タバコを吸う人 | 習慣的に運動をしている人(20歳以上) | 健診や人間ドックを受けたことがある人(20歳以上) |
---|---|---|---|
24年版 | 16.7人(減) | 28.7人(増) | 69.2人(増) |
14年版 | 17.3人 | 26.3人 | 64.3人 |
少子化が進んでも、大学生は増加
学生および、小学校に通う児童の割合は以下のとおりだ。
年 | 小学生 | 中学生 | 高校生 | 大学生・大学院生 |
---|---|---|---|---|
24年版 | 4.9人 | 2.6人 | 2.3人 | 2.4人 |
14年版 | 5.2人 | 2.8人 | 2.6人 | 2.3人 |
見てのとおり、小・中・高校生の数字は24年版の方が少ない。しかしながら、大学生・大学院生はわずかながら増えている。
この背景には、当然ながら大学進学率の増加があると考えられる。文部科学省が昨年末に公表した23年度の「学校基本調査(確定値)」によれば、大学進学率は57.7%。過去最高を8年連続で更新している。
もうひとつの資料「日本の1日」
以上、厚労省が毎年公表している「人口100人でみた日本」の最新24年版と10年前の14年版から、いくつかの数字を抜き出して比べてみた。
ところで、厚生労働白書に添えられている同じような資料に、もうひとつ「日本の1日」というのもある。「日本で一日に起こる出来事の数を調べてみた」とする内容だ。
24年版の中にある4つの数字をやはり10年前(14年版)と比べてみたい。
年 | 日本で1日に生まれる人の数 | 同・亡くなる人の数 | 以上の差=誕生と死亡による1日の人口減少数 | 同・結婚するカップル |
---|---|---|---|---|
24年版 | 1,993人 | 4,318人 | 2,325人 | 1,301組 |
14年版 | 2,821人 | 3,475人 | 654人 | 1,810組 |
いかがだろうか。
結婚数の減少、少子化、亡くなる人の増加―――“人口減少3点セット”ともいうべき数字が確然として並んでいる。
以下、この記事で採り上げた資料のリンク先となる。
「厚労省『人口100人でみた日本』『日本の1日』」
「国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口(令和5年推計)」
「厚労省 2022(令和4)年 国民生活基礎調査」
「文科省 令和5年度(23年度)学校基本調査(確定値)」
(文/朝倉継道)
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この記事を書いた人
コミュニティみらい研究所 代表
小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。