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個別株は目が離せないEV関連の新日本電工、日本電解、日本製鋼所 最近人気「予想分配金提示型」投信の注意点

金利引き上げ、ウクライナ情勢、米中間選挙…乱高下する相場を読み解く8つのキーワード

望月 純夫望月 純夫

2022/02/08

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イメージ/©︎blueone・123RF

寅年の今年、相場のアノマリー(経験則による相場の規則性)では「寅、千里を走る」というが、「寅、千里を戻る」というスタートになっている。

1月の大発会を見る限りは、まさにその通り千里を走るというのが正解であった。しかし、投資家であれば誰もが意識しているFRB(米国連邦準備制度理事会)の金利引き上げは、インフレ懸念から年3回程度が年5回程度に、極端な筋は7回の会合ごとに年7回行われるうちの、最初の引き上げの可能性が高い3月には0.5%まで引き上げる説まで出た。

これにより市場は急展開した。

NYダウの21年12月31日の引け値は3万6338ドルであったが1月24日には3万3150ドルまで下落。この間の下落幅3188ドル、下落率は8.8%になった。その間の日経平均は、12月30日の引け値は2万8791円、1月27日には2万6044円まで下落し、その幅は2747円。下落率では9.5%になった。NYと東京の下落を比較してみると大差はないように見える。

しかし、日経平均の天井は21年9月14日と今年1月5日につけたNYダウの天井よりも早くに形成されている。このことからも日経平均は米国の金利上昇以外の要因で下落していることが分かる。そこで22年の相場のキーワードは、次の8つになる。

1. 金利の引き上げ
2. 米中間選挙
3. ウクライナ問題
4. 中国の台湾侵略懸念
5. 中国共産党大会
6. 参議院選挙
7. 企業業績東証再編
8. コロナ(オミクロン株)

ただ、今の第6波で、1月時の急落で米国市場は金利の上昇を織り込んだと見てよいだろう。一方、国際関係のリスクとしては当面はウクライナ問題になるが、基本的にはにらみ合いで、突発的な侵略行為が起きれば瞬間に織り込むことになる。

政治的には、米市場の今後の市場かく乱要因は中間選挙。

日本においては岸田首相がマーケットとはかけ離れた発言を繰り返すがゆえ、頼れるのは企業業績である。企業業績の日経平均1株当たり利益は、21年9月8日の2175円がピークで、22年2月2日現在は2030円となっている。ピークから6.7%の減少である。日本株が上向くには、この1株当たり利益が増加することが大きな条件になる。

しかし、オミクロン対策で学校閉鎖や工場休止が続き「まん延防止等重点措置(まん防)」が継続している以上、投資家のマインドは盛り上がりに欠けるというわけだ。

欧米諸国では、オミクロンはインフルエンザ程度との意見も出ており、日本経済にとってこれ以上のまん防の延長や、ましてや緊急事態宣言はマイナス要因でしかない。

とにもかくにも、まん延の解除によって相場心理の回復させることで、新たな相場は始まる。

やはり目が離せないEV関連――決算要チェックの6銘柄

前号(2022年の株式相場は「セル・イン・メイ」――その理由とは?ではリチウムイオン電池の主要部材である正極材、負極材、セパレーター、電解液、電解質のメーカーの中から、正極材の田中化学研究所(4080)、住友金属鉱山(5713)、新日本電工(5563)、戸田工業(4100)を注目銘柄としたが、今月はこの中から新日本電工(5563)を推奨銘柄としてあげたい。

新日本電工(5563)

とはいえ、パナソニックに材料を提供する田中化学研究所、住友金属鉱山の需要は、トヨタのEV増産に伴い売上は急増しており、依然として期待できる。ただ、田中化学研究所はトヨタ元町工場の休止の影響を受け第3四半期の伸びは限定された(1月28日発表)。それでも第4四半期には拡大の余地は十分ありそうだ。

住友金属鉱山、戸田工業、新日本電工の決算発表は2月8日。新日本電工は1株当たり利益3倍の大幅増益であることから1月28日、先んじて業績予想の修正に関する発表が行われた。このこともあって2月8日の決算発表は要チェックだ。

このほかにはパナソニック向けのリチウムイオン電池用電解銅箔を製造する日本電解(5759)、リチウムイオン電池向けの電極塗工装置のヒラノテクシード(6245)の決算発表も見逃せないところ。

日本電解(5759)

ヒラノテクシード(6245)

このほかにも決算をチェックしておきたいのは、欧州原発向けの鋳鍛鋼製造需要とEV用フィルム・シート製造需要が増加している日本製鋼所(5631)の最大出力150キロワットと国内では最高クラスの発売を21年1月に開始しているEV用の急速充電器のメーカーの新電元工業(6844)

日本製鋼所(5631)

新電元工業(6844)

この急速充電器の充電時間は一般普及(50キロワット)に比較し約6割短縮が可能で、ガソリンの給油時間なみの充電で、100キロ以上の走行ができるという。同社の筆頭株主はホンダ(12.9%)である。

政府は30年をメドに急速充電器を現在の4倍の3万基まで増やすことを表明している。こうした背景もあって、トヨタは系列ディラー約5000カ所にEV急速充電器を設置する方針である。

最新式の充電装置は設置費込みで1基1000万円前後が相場である。

そこで注目したいのが、東光高岳(6617)、ダイヘン(6622)等の急速充電器メーカー、2月10月決算のEV用塗工装置のテクノスマート(6246)、トレックス・セミコンダクター(6616)、海外展開を広げるトリドール(3397)に注目したい。こちらは短期のみならず中長期対応だ。

トレックス・セミコンダクター(6616)


毎月分配型に代わって登場した「予想分配金提示型」の活用法

長期の投資運用利益は、再投資に充てるのが鉄則で、税金対策上では、なるべく決算頻度が少ない投信を選ぶのが有利に働く。しかし、投資家の選択は必ずしもそうではなかった。

かつて国内の投信の主流は毎月分配型で、11年当時純資産ベースでは7割を超えていた。これは年金生活者などが定期収入として分配金を受け取りたいという需要が根強かったからだ。つまり、利回り期待の普通預金という位置づけと言える。

そもそも自分の購入した損益の確認方法が分からなく、通帳に払い込まれる分配金を利息と理解し、安定的に利息が入ると錯覚していたと思われる。その後、毎月分配型ファンドの運用悪化に伴い、元本を取り崩して高水準の分配をしていたことが明らかとなり、金融庁が過剰な分配に対して「顧客本位でない」と指摘。解約流出が続き、21年現在、その数は2割程度となっている。

このような状況下、最近人気を集めているのは「予想分配金提示型」だ。

21年に31本が設定され、純資産額が3兆円を突破した。予想分配提示型ファンドは毎月分配型ファンドと同じく毎月分配金を支払うが、決算の前営業日のおける基準額の水準で分配金が決る仕組みである。

この仕組みは以前からあったが、現在人気を呼んでいるのは対象が債券ではなく株式となっているものである。海外株式や米国株に投資をしていて、特にテーマ型が多くなっているところがこのファンドの特徴。

それだけに値動きが大きい点に注意が必要である。

値下がりした場合は、分配は当然ない。また基準金額を上回っている場合は分配金が手に入るが、基本的には自分の収益を取り崩したものである。年金生活者がこのタイプのファンドに投資するのには疑問符が付く。

また、気を付けたいのはこのようなファンドの信託報酬など保有にかかるコストも割高であることだ。

インターネット証券や独立系運用会社では定期売却サービスを提供しているところもある。こうしたものであれば、分配型ファンドよりも安い費用で同じ効果があるので、相場判断が苦手な年金生活者には向いているかもしれない。

※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。

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この記事を書いた人

コンサルタント、ラジオパーソナリティ

1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。

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