加入している保険が分からない――生命保険契約照会制度の活用法
内田 まどか
2021/10/12
イメージ/©︎tomertu・123RF
緊急時は電話、平時はWebか郵送で
生命保険協会では、2011年3月の東日本大震災以降、台風や地震、津波などで災害救助法が適用された地域で、家屋などが流失、もしくは焼失し、どこの生命保険会社に契約をしていたか分からなくなってしまった人のために、どこの保険会社に加入していたかを調べる制度を設けてきました。
これは「災害地域生保契約照会制度」といわれ、災害が起きた地域限定での制度でしたが、一人暮らしの高齢者が亡くなったり、認知機能に衰えが生じ、どんな保険に加入していたか分からなくなってしまったりした時でも利用できるように、21年7月に「生命保険契約照会制度」として拡充されました。
災害時は、被災し保険加入の手掛かりがなくなってしまった場合のセーフティネットとして、電話さえつながれば電話口で分かる情報だけで利用できますが、平時は有料となり、受付方法もWebもしくは郵送となっています。
Web申し込みをする場合、生命保険協会の「生命保険契約照会制度」にアクセスし、マイページを作成し、利用申請から必要書類をアップロードするところまでしなければならないので、ある程度操作になれている必要があります。
郵送申し込みの場合でも、一度は「生命保険契約照会制度」にアクセスし、Web上から申込書の取り寄せをする必要があります。
平時と災害時での利用方法を以下にまとめてみました。
すべての保険契約が分かるわけではないので注意が必要
生命保険契約照会制度を利用してわかるのは、原則、どこの保険会社に契約があるかということだけなので、契約があるとわかったら、保険金の請求や給付金の請求などの手続きは、該当の保険会社に各自連絡して行うことになります。
ただし、財形保険や財形年金保険、支払いが開始した年金保険や据え置きになっている保険金など、この制度の対象にはならないものもあります。さらに民間の生命保険会社以外のJAや全労済、県民共済等の共済や損害保険などもこの制度の対象外なので、それぞれ別に契約があるかどうか照会する必要があります。
平時の保険契約照会制度利用をする前に、保険の契約があるかどうか、探る方法は他にもあります。
家の中や銀行の貸金庫などに保険証券がないか探すのはもちろんのこと、生命保険会社は年に1回、契約内容を案内する手紙を送っています。保険会社から案内が来ていないか探してみましょう。
また、取引金融機関やクレジットカードの利用明細から保険料が引き落とされていないか、保険金が振り込まれていないか確認するのも有効です。現役で働いていた人なら、給与天引きなどで保険料が引かれていなかったか、勤務先に確認する方法もあります。
やはりエンディングノートがあると便利だけれど…
認知症になってしまったあと入院することになっても、どこの保険会社に契約していたか分からなかったり、急に死亡してしまったことで、保険金請求ができなかったり、手続きをする家族が苦労する前に、エンディングノートを作ることをおすすめします。
ご両親など親族がエンディングノートを書くのを面倒くさがるようなら、それとなく聞き取りをしておくだけでもよいと思います。自分自身にとっても、残される家族が大変な思いをしないように、生命保険だけでなく、取引している証券会社や銀行、クレジットカード会社、普段使っているパソコンや携帯の暗証番号など、分かるようにしておきましょう。
【この著者のほかの記事】
加入中の保険をムダにしない――保険見直しでの外せないポイント
うつ、統合失調症…「こころの病」に保険はどこまで対応できるのか?
医療保険の特約の付け方で、保障内容と保険料のバランスを考える
この記事を書いた人
ファイナンシャルプランナー
東京都出身。1997年にFP資格取得後、損害保険代理店・生命保険代理店・FP事務所を開業(現在、保険分野は他代理店と合併)。「万が一」のためだけではない、生きていくための保険の入り方から、住宅取得、転職、早期退職など、夢や希望を叶えるための個人相談を中心に活動している。