緊急事態宣言で意外と下がらない日経平均株価――来年には3万円超えも期待
望月 純夫
2021/08/06
イメージ/©︎blueone・123RF
緊急事態宣言延長で五輪後の回復シナリオは崩れたけれど…
東京市場は、2月16日の高値30467円以降、完全に上昇トレンドはストップとなり、長期の調整を余儀なくされている。最大の要因は、3月19日の日銀金融政策決定会合で、上場投信(ETF)購入は原則年6兆円の目安を削除したことにある。
1月14日までの時点、PERが26.33倍の高値まで買われたのは嘘のようだ。
というのも、企業の業績が回復するにつれ、日経平均を構成する銘柄の1株当たり利益(EPS)は2060円程度まで急回復しているが、PERについては13.5倍割れ水準まで売り込まれているからだ。
通常時のPERが14倍から16倍であることを考慮すると、あまりにも売られ過ぎである。この売られ過ぎの要因は、コロナ感染者数の拡大による緊急事態宣言にある。
コロナと株価の動きをよく見ていくと、緊急事態宣言発動の都度、下値を模索する展開が続いている。
実際、第2回目の緊急事態宣言の発動時には2万7500円まで売り込まれ、第3回目の発動時には再度2万7500円まで売り込まれた。今回の第4回目も同様に2万7500円割れの状態。しかも、悪いことに8月22日の終了予定が8月31日まで延長となったことである。
このことで8月の五輪終了後の回復期待シナリオが崩れてしまった。ただ今後も下押すかどうかについては疑問符が付く。
とはいえ、2回、3回、4回と出された緊急事態宣言の局面で日経平均を押し下げたのはソフトバンクG(9984)とファーストリテ(9983)である。
日経平均の下落率は、2月16日の高値3万714円から7月30日の安値2万7272円まで11.3%の下落だった。
これに対して、ソフトバンクGは3月7日の高値1万615円から7月28日までの安値6706円まで36.9%の下落。ファーストリテは3月2日の高値11万500円から8月3日の安値7万2430円まで34.5%の下落となった。
これは日銀が関与した相場が終焉し、今後は市場が自然体で動くための助走期間と考えたい。
つまり、年末までには、1株当たりの利益(EPS)の2060円に対する14倍から16倍に戻るという前提だと、日経平均は2万8840円を下値に3万2960円に向かうトレンドが形成されてもおかしくはない。今後も企業業績の上方修正が見込めれば、22年2月頃には3万3000円超えも期待できる。
トップメーカーもついに本腰 EV関連部品メーカー注目銘柄
今まで何度も電気自動車(EV)についての話題で盛り上がったため、EVというとまたと思う人も多くいるだろう。また、EVについては半信半疑に捉える向きもあるようだ。
ただここに来て、欧米、中国のEVに対する姿勢を見せつけられたことで、世界のトップメーカーもようやくをEVにカジを切る動きを見せはじめている。それを裏付けるのは部品メーカーの業績動向にある。
トヨタに対するリチウムイオン電池の供給は、パナソニック(6752)と三洋電機である。
パナソニック
子会社のパナソニックEVエナジーに提供する正極材は住友金属鉱山(5713)と田中化学研究所(4080)、電解液は三菱ケミカルHD(4188)、電解質はステラケミファ(4109)となっている。
田中化学研究所
三菱ケミカルHD
田中化学研究所の業績については、当初予想の赤字が黒字転換となり、8月3日には株価はストップ高となった。
EVに乗り遅れたと思えるトヨタの今後のEVに対する展開を考えると、同社の株価は想定以上の株価上昇を見せる可能性が高い。ステラケミファは電解質をトヨタやホンダにも供給。
中国のBYDに電解質を供給するのは同じくステラケミファと、関東電化(4047)。NEC系のオートモーティブエナジーサプライに正極材を供給する日本製鉄系の新日本電工(5563)など、株価上昇妙味のある銘柄が多い。
ステラケミファ
関東電化
ジーエス・ユアサ(6674)は、ホンダ(7267)と三菱自動車(7211)に車載用電池を供給している。オートモーティブエナジーサプライ(日産系)、三菱ふそうや、いすゞ、GMに電池部材を提供する新日本電工(5563)にも期待が高まる。
ジーエス・ユアサ
新日本電工
流行のテーマ別アクティブ型はしっかり中身までチェックを
21年3月期の国内資産運用会社大手9社の純資産額(上場投信・ETF)が公表された。
これによると公募投資の純資産額は3月末時点で約76兆円と1年前より約3割も増えた。しかし、運用会社が受け取る信託報酬は、ETFを除く公募投信では8年連続で減少。運用歴が長く、信託報酬の高い投信が嫌気され、株式指数に連動した低コストの「パッシブ型」投信に資金が流れる傾向が顕著となった。
運用会社の資金流入額で上位に入った三菱UFJ国際投信も1%減益と苦戦した。
これは業界最低水準の信託報酬を売り物とするパッシブ型は好調だが、往年の債券型投信などからは資金が流出したことによる。
新たに個人マネーの海外シフトも逆風となった。国内の運用会社が海外資産に投資する場合、同業の外資系に実質的に運用を委託するケースが大半で、報酬を分け合う形となるために儲けは限られている。
加えて、市場のパフォーマンスを上回る運用を目指すアクティブ型の成績が振るわず、運用会社自らがアクティブ投信からのマネー離反を招いている面もある。
海外運用の米ブラックロックは、4から6月期の純利益は前年同期比14%増となっている。セゾン投信のように「オルタナティブデータ」を使った運用体制を整え、横並びの運用からの脱却を図る必要性に迫られている。
金融庁から「ESG投信」について、指摘を受けた運用会社も出ている。「グローバルESGハイテク成長株ファンド」は人気商品で、設定時に4000億円近い資金を集めたが、商品名から「ESG」を外したほぼ同名の投信と比較し、保有株上位10銘柄のうち8銘柄が重なっていた。ちなみに、環境などの名称を含む投信は21年6月末で44本発売され、20年の年間38本をすでに上回っている。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。