節分天井彼岸底――緊急事態宣言明けの3月7日以降、東京五輪開催決定で五輪銘柄が反転か
望月 純夫
2021/02/08
イメージ/©︎blueone・123RF
2月相場は湿りがちは読み違い、一気に3万円台もありか?
相場は残念ながら相場格言通り「節分天井彼岸底」の様相を呈している。
市場の動きは、株価の規則的な上下動〔●〇●〇●〇●●〕という動きに現れ、最後は1月28日、29日と連続の陰線で終止符が打たれ、市場は調整局面入りをした。市松模様のその予兆はエムスリーの下落から始まりディスコなど値嵩半導体株に繋がった。
特に値嵩半導体株は好業績の発表にもかかわらず高値更新はできず、材料出尽くしの感だ。また1月20日の米大統領就任によるご祝儀相場も終わり、GAFAの好決算発表も終わり、次の材料待ちの状態に入りした。NYダウが25日移動平均線を割り込むのは10月30日以来である。
今回の相場は、20年11月2日のアメリカ大統領選挙の先行きが見えない状況下のスタートだった。
その後は上昇に転じ2万6143ドルから今年1月21日の高値3万1272ドルまで19.4%上昇した。10月30日の安値前の天井は10月9日の2万8676ドルだったので、調整期間は20日程度、調整幅は8.9%。今回も同様の調整幅であれば2万8500ドル割れまでの下落が予想されるが、2万9856ドルの4.6%で踏みとどまった。
東京市場も同様の動きで大幅上昇に対する調整幅は最小限で、これはこの相場の強さを表している。つまり、多くの投資家は2月の相場を大幅上昇の反動で、上値の重い展開と見ているようだが、これは読み違い。むしろ早期の3万円台乗せも実現性ありか。
懸念されていた7日の緊急事態宣言の期限は1カ月延長され、その解除は3月7日。緊急事態宣言解除後の注目点は、IOCの総会(3月10~12日)があり、3月25日には聖火ランナーのスタートに絞られ、東京五輪が中止、再度の延期がいわれはじめているが、この流れからは実現する可能性も高まってくるのではいか。
また、アメリカも、バイデノミクスの第1段の経済対策(総額1.9兆ドル)が議会で承認されるかにかかっており、これも3月15日頃が目安になる。
現状の東京市場は、多くの国民が東京五輪の開催は新型コロナの第三波のよって難しいと思っているだけに、赤字拡大の悪材料が早めに出ている五輪関連銘柄の拾い場も近づきつつある。
拾っておきたい五輪銘柄
21年のテーマには、通信株・地銀株・五輪関連株のような政策関連株。巣籠り消費・DX・エンタテイメントのようなニューノーマル関連株。ESG・ニッチトップ・業界再編のような海外勢再評価株と世界的にみて依然割安なバリューグロース株がある。
これまで太陽光発電や電気自動車関連の株の紹介は繰り返ししてきたので、今回は新たな視点から開催が不透明なことから余り物色の対象となりにくかった五輪関連銘柄を取り上げる。
政府は緊急事態宣言を1ヵ月延長することを決めたものの、いまだ新型コロナ感染者数の減少が見え始めた段階にある。緊急事態宣言延長によって1~3月期のGDPの再度のマイナスをも覚悟してのこの政府の決断は、五輪開催ありきに踏み切ったと考える。しかも観光客のインバウンド推進は管首相の肝いり政策でもある。
しかも、昨年12月には新経済連盟代表の楽天(4755)三木谷会長は「観光立国復活に向けた緊急提言」を提出済みでここは目を離せない。さらに観光関連では関空や伊丹空港を運営する関西エアポートの出資者であるオリックス(8591)、アドベンチャー(6030)、エアトリ(6191)、旅工房(6548)、日本航空(9201)、エイチ・アイ・エス(9603)、丹青社(9743)、セレスポ(9625)、テー・オー・ダブリュー(4767)が注目。
楽天(4755)
オリックス(8591)
アドベンチャー(6030)
エアトリ(6191)
旅工房(6548)
日本航空(9201)
エイチ・アイ・エス(9603)
丹青社(9743)
セレスポ(9625)
テー・オー・ダブリュー(4767)
コロナダメージの脱却には最大の効果が、五輪開催であると世界的にも考えられる。昨年の日本政策銀行と日本交通公社によるアンケートでは、コロナ後に旅行したい国ランキングの第1位となり、「食事がおいしい」、「以前も旅行して気に入った」、「清潔」、「治安が良い」との理由が挙げられており、コロナ終息後には反動による、旅行ブームの到来も夢ではない。
2020年の投資信託の運用実績から読み解く21年の方向性
昨年1年の投資信託の運用成績を調べると、DIAM新興市場日本株ファンド(アセットマネジメントOne・岩谷渉兵氏)が断トツの1位で+86.1%、13年間で22倍という驚異のパフォーマンスをたたき出した。
2位はダイワ新興企業株ファンド(大和アセットマネジメント・椎名諒氏)で+45%だ。同氏は運用する6つの投信が全て好成績である。
3位はザ・2020ビジョン(コモンズ投資顧問・伊井鉄郎氏)で+43.6%、同氏は創業経営者として起業家目線で投資判断。4位はミュータント(日興アセットマネジメント・北原淳平氏)で+22.7%、担当者がチーム入りしてから基準価格がウナギのぼりだった。
残念ながら、1位のDAIM新興市場日本株ファンドは新規の申し込みを受け付けていない。岩谷氏の組み入れ銘柄は、特別なものはない。組み入れも上位はスマレジ、ラクスル、Sansan、カオナビ、ユーザーベース、メドレー、ライフネット生命、セレス、ティーケービー、セルソースで約60%弱である。同氏の企業取材の特徴は有事の時で、09年のリーマンショック、20年3月のコロナショック後は集中して取材をしている。長期の目線で見ていることから、株価が低迷している時も持ち続け、その時々で保有のウエイトは変えるが、保有株がガラリと変わることはしていない。
過去の例では、医療関係者に製薬会社の情報を提供するエムスリーは株価が80倍になった。ほかに同氏が運用に携わっているファンドは未来変革日本株ファンドで3年連続好成績を残している。販売先はSBI証券、楽天証券、マネックス証券、松井証券、auカブドットコム証券、みずほ証券である。
コモンズ投信の伊井氏は、コロナで大きく落ち込んだ空運や陸運、また時代をリードする新エネルギーにも注目し、保有株バランスを変えていく戦略のようだ。
なお、実際に購入する際は、各投資のファンドマネージャーの投資方針をチェックしていただきたい。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。