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下落で始まった2021年――株式投資の格言から読み解く今の相場は「悲観」か「楽観」か?

望月 純夫望月 純夫

2021/01/04

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イメージ/©︎blueone・123RF

踏みとどまった? 2021年大発会の株価

2020年の株価は新型コロナウイルスにより悲観の底からはい出しワクチン開発が進むにつれ楽観論が広がり、12月30日の大納会の日経平均終値は2万7444円17銭と前営業日よりは下がったものの、1989年12月29日の大納会3万8915円87銭以来、31年ぶりの高値を付けて終わった。

この日経平均は、3月19日の年初来安値1万6552円から12月29日には2万7568円の高値まで65.5%、上昇幅では1万1016円で、東証1部全体の時価総額は約666兆円、17年末の674兆円に次ぐ過去2番目の大きさとなった。

しかし、2021年(丑年)の大発会はプラスでスタートするも新型コロナ感染拡大に伴う1都3県の緊急事態宣言の可能性が高まり一時400円超の下落、押し目には買いが入り、大納会に比べ185円79銭(0.68%)安の2万7258円38銭で引けた。

前場、後場ともに連続安、大幅下落となると、今年の相場の先行きが心配されるところだが、初日だけを見ると、かろうじて踏みとどまったように見える。

新型コロナによって20年の相場は急落、その後、上昇し反転したのはFRB(米連邦理事会)がほぼゼロまでの金利引き下げ、それに追随するかたちで先進各国の中央銀行も金利を引き下げたことによる。

新型コロナ対策に関連した世界の財政や金融支援は13兆ドル(1340兆円)。この例のない規模のマネー供給がリスク資産を押し上げた。米国では、スマホで売買する「ロビンフッダー」といわれる人が登場し、個人売買シェアが25%まで膨らんだ。カネ余り現象はIPO市場にも及び20年の資金調達額は23日時点で3354億円に達し前年比53%増となった。

相場の格言に「強気相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」というものがあるが、現状を鑑みると、現在の株価はまさにこの格言の中にあるのではないかと思える。

超えるかPBR1.2倍の壁――水素、5G、EV・電池、AI、半導体の5テーマに注目

というのも、まだ多くの人はこの上昇相場には疑問をもっており、急速に終焉するとは思っていないようだ。

日経平均株価は、純資産倍率(PBR)の0.8倍から1.2倍を動いている。現在の動きは非常に稀なケースで、リーマンショックの時、今回の新型コロナにおいてもPBRは0.8倍で底打ちをしている。

一方、高値に関しては1.2倍が上限とされており、その原則通りならPBR1.2倍で頭が抑えられることになり、この壁を乗り越えられるかどうかが最大のポイントだ。ただし、この1.2倍の壁を超えたのが1987年のブラックマンディ以降のバブル相場である。

投資の神様であるバフェットも5大商社株を購入し、こうした状況が続いているのは、日本市場の改革(スガノミクス)に期待しているようだ。

実際、外国人投資家の買いも衰えず、12月第3週の投資部門別売買動向では、外国人投資家は1655億円(現物)を買い越し、買い越しは7週連続となった。10月末から12月24日までの上昇は景気敏感株が中心で、造船株、海運株、繊維株の上昇が目立った。

21年の前半戦では、1月20日バイデン氏の大統領就任時でのパリ協定への復帰が表明されており水素、5G、EV・電池、人工知能(AI)、半導体の5大手テーマ株が要注目だ。

注目5テーマの推奨5銘柄

長野計器(7715)は車載向けの世界屈指の圧力計・圧力センサーが主力だが、半導体製造ライン向け製造圧力センサーやデジタル圧力計でも高い実績を誇る。燃料電池車の普及には水素ステーションの普及が欠かせない。同社はこの水素ステーション向けに独自の高圧技術を生かした製品を提供している。高圧水素用圧力センサーの特許を取得しており、2017年に長野県知事賞を受賞している。トヨタ燃料電池車の新型「ミライ」で燃料電池車に対する注目度が上昇する中、長野計器の株価にもフォローの風が期待できる。

長野計器(7715)

東邦チタニウム(5727)はチタン製錬を中核事業としており、高度なチタン関連を礎とした電子材料分野でも高シェアを誇っている。業績的には航空機向けチタンは不振で21年3月期は大幅減収減益が避けられない。しかしながら、22年3月期は5G投資需要もありV字回復に期待。さらに技術開発分野では、全固体電池や空気二次電池に応用されるリチウムランタンチタン酸化物という有望素材を手掛けており、ここも注目しておきたい。

東邦チタニウム(5727)

アドソル日進(3837)は独立系ソフト開発会社で大企業向けシステム開発において競争力が高く、業界での優位性をもつ。日本IBMや日立、東芝といったそうそうたる大手IT企業と一緒に産業技術総合研究所がまとめたAIの品質ガイドライン策定にも参画するなど、同分野における実力は証明済みだ。また前期まで10期連続の営業増益を達成しているところもプラス材料。

アドソル日進(3837)

アドテック プラズマ テクノロジー(6668)は、半導体向けを主力とする高周波プラズマ電源装置のメーカー最大手。足元の業績は伸び悩んでいるものの、5G関連やデータセンタ増設を背景とした半導体設計需要の高まりを背景に中期成長トレンドに陰りは見られない。21年8月期は9%増の9億5000万円程度の増益を見込んでいる。

アドテック プラズマ テクノロジー(6668)

大真空(6962)は、高速通信規格5Gの商用サービスが徐々に軌道に乗る中、KDDIと米アマゾン傘下のAWSが5Gを使ったクラウドサービスをスタートさせ、21年1-6月期のiPhone生産計画を前年同期比3割増とするなど積極攻勢の構えだ。21年3月期営業利益は前期比3.6倍の10億円を予想している。22年3月期は車向けの回復で2桁の利益成長期待。

大真空(6962)

田中化学研究所(4080・JQ)、エヌ・ピー・シー(6255・東マ)、三櫻工業(6584)、キャリアリンク(6070)、菊池製作所(3444・JQ)は注目継続である。

田中化学研究所(4080・JQ)

エヌ・ピー・シー(6255・東マ)

三櫻工業(6584)


キャリアリンク(6070) 

菊池製作所(3444・JQ)

投資信託はインデックスだけでなく、アクティブ、新興国にも目を向けよ

現在、インターネット証券会社を通じての投資信託販売が急増している。

実際には20年1月から11月までの月平均の資金流入額は約680億円と昨年比の3倍に増加。特に若年層を中心に資産形成に向けた投信購入が目立っている。

新型コロナ感染により3月中に株価が大幅下落した後の株価上昇が追い風となり、ネット証券の投信残高は11月末で約2兆5000億円と、この2年間で倍増している。三菱UFJ国際投信によれば、ネット証券の資金流入をみると19年10月から14カ月連続の流入超になっている。

運用資金の5割弱が先進国株で、約1割が日本株です。国内外とも株価指数に連動するインデックス型投信の人気が高く純資産残高が7月に2兆円を超えている。

大手ネット証券5社の口座数も、9月までの6カ月間で100万以上増えている。新型コロナにより在宅勤務が始まったことで、証券投資に踏み切った人が増えた。その背景には老後資が不足するとした2019年の「2000万円問題」により運用への関心が高まったことも影響してようだ。

過去の投資スタイルは、株価が上昇すれば売却し利益を確定するものだった。しかし、最近の個人投資家の傾向は、積立型の少額投資非課税制度(つみたてNISA)の活用だ。14年にNISAは14年に導入され、18年につみたてNISAをはじまったことで、投資に対しての認識が高まった効果と言える。ようやく日本も長期投資が理解され、米国のように厚みのある証券市場が出来る可能性が出てきたようだ。

とはいえ、その投資の中心はインデックス運用で長中期資産形成だ。

これはこれでよいが、今年はアクティブ運用で機動的に短期資産運用を併用することを中・上級者はチャレンジしてほしい。先進各国が新型コロナによって身動きができない状態だ。もちろん、リスクの想定は必要なのは当然だが、今年は中国からベトナム、インド、インドネシアなどのアジア諸国の成長への投資も検討してみたいところ。

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この記事を書いた人

コンサルタント、ラジオパーソナリティ

1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。

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