菅政権早い動きに期待――業績とPBRから選ぶ推奨7銘柄と日経平均上回るアクティブファンド
望月 純夫
2020/10/05
©︎blueone・123RF
動きの早い菅政権に外国人投資家がどう動くか
2020年9月16日に安倍晋三政権が総辞職し、菅新政権が発足した。安倍政権の継続性を強調していることから、第1の矢、第2の矢の先の第3の矢(成長)に重点を置いた政策を実行することが見えてきた。
その第3の矢こそ、デジタル化で、これから数年でやり遂げることになる。当初、菅首相は70%を超す支持率を背景に解散総選挙に臨むと思われていた。しかし、むしろ自民党の総裁期限(2021年9月末)、衆議院議員の任期満了(2021年10月21日)を考慮した作戦の可能性が高い。
東京オリンピック(7月23日~8月8日)、パラリンピック(9月5日~13日まで)、大イベントを成功させて、その終了直後に総裁選、衆議院選挙となる確率が高いと言えそうだ。そのためにはまずは2021年1月の通常国会で、予算案を出来るだけ早く通し、5月中にはデジタル化法案を通過させることが最大のポイントになる。
その後には7月には東京都議会選挙も控えており、オリンピック開催を前提とすると、立て込んだ政治日程になる。
政権発足直後の9月19日から22日までの連休期間中の政権の動きを見ても、過去にないスピードを持ってデジタル化の遅れを取り戻すべく動いているのが分かる。
こうした菅首相の動きは、年内解散を目論んでいた筋には、失望感が漂いそうである。しかし、大事なことは、コロナ後の景気回復だ。菅新政権の動きに外人投資家が乗るかが気になるところである。
携帯電話料金の引き下げを求める菅首相にとって、今回のNTTによるNTTドコモのMBOはインパクトがあり、併せて楽天が大手の半額の料金で市場参入を果たしたことは、自らが進める政策のスタートダッシュという点でとてもプラスな材料だ。
一方、弱いと言われていた外交も、近隣諸国、ベトナム、インドネシアなどを10月中に訪問することで不安感を一掃することになろう。
今後は、親中派の自民党の勢力、公明党との調整も必要である。11月3日に米大統領選挙が控えているだけに、あまり大きな動きはしづらい。
2016年の米大統領選挙のトランプの勝利の予想を的中させた木村太郎氏は、今回もトランプ氏に分があると予想している。しかし、テレビ討論では混沌さを増し、さらにはトランプ大統領のコロナ感染と、これがネガティブになるか、ポジティブとなるかは読み切れない。日本の株式市場は、新型コロナをきっかけに大きく変貌する期待があるだけに、下値は堅い展開で、PBRの1.2倍の2万5600円程度までの動きは、2021年3月末までにはありそうだ。
投資の神様のバフェットの大手5商社の打診買いは、押し目対応で今後の外人買いを占う上での試金石と言えよう。
デジタル、コロナ、オリンピックの推奨7銘柄
7月は、注目業種としてコロナ関連から通信事業関連(IIJ、ITbookHD、スマートバリュー、自動制御システム等)へのシフト、8月は巣ごもり銘柄(DCMHD、コーナン商事、ヤオコー、シマノ、セリア等)、9月には5大商社、GOTOトラベル関連(ANA,JAK)、景気敏感関連(三井金属)を取り上げた。
今後も好業績と割安株(低PBR銘柄)、景気敏感株を上手くミックスしたポートフォリオが良さそうだ。
菅政権が率先垂範するデジタル化関連は、引き続いて注目したいところ。加えて不妊治療の保険適用、地方銀行の統合促進、かなり大きく市場が変化しそうだ。
特にデジタル化は、これから2年から3年は業容が大きく変容しそうなだけに少し長いスパンで注目する必要がある。また、ワクチンや治療薬の開発が進み、大きな不安が小さな不安に変わる局面であり、業績の回復関連も見逃せない。
自動車の分野ではEV化が進み、北京の自動車ショーでも多種のEVの車がお目見えした。
米国カルフォルニアでは、EV化の動きが加速しそうである。
デジタル化関連では、小型株を中心に取り上げてきたが、今月は野村総研(4307)、NTTデータ(9613)、景気敏感関連では三井ハイテック(6966)、DMG森精機(6141)。
野村総合研究所(4307)
エヌ・ティ・ティ・データ(9613)
三井ハイテック(6966)
DMG森精機(6141)
不妊治療関連では、あすか製薬(4514)、巣籠関連では地域生協の業績拡大と共に歩むスクロール(8005)、cotta(3359)。
あすか製薬(4514)
スクロール(8005)
cotta(3359)
東京五輪開催関連ではTOW(4767)、アシックス(7936)、丹青社(9743)、地銀統合ではSBI(8473)、清水銀行(8364)、予想配当利回りが8%台のJT(2914)は12月決算、EV関連では、安永(7271)、田中化学(4080)に注目したい。
テー・オー・ダブリュー(4767)
アシックス(7936)
丹青社(9743)
SBIホールディングス(8473)
清水銀行(8364)
日本たばこ産業(2914)
安永(7271)
田中化学研究所(4080)
投資信託の人気は「国内中小銘柄」、「新興国株式」は後退
2012年12月26日の第2次安倍政権発足以降、約7年8カ月続いた長期政権は9月16日に幕を閉じた。
大胆な金融緩和を含む経済政策「アベノミクス」を掲げ、その期間の上昇率は2.3倍となった。国内の中小型株で運用するファンドが軒並み上位に入った。1位は「DIAM新興市場日本株ファンド」(販売停止中)は12倍に上昇。2位は「SBI中小型株ファンド、ジェイネクスト」、3位の「日本新興株オープン(日興)」も上昇率は共に約6.5倍となるなど、各ファンドマネージャーの力量の高さが目立った。
コロナショック後の上昇率ランキング(3月19日から8月末)でも、アクティブ運用する銘柄の投資信託が大きく日経平均を大きく上回っている。
首位は「厳選ジャパン(アセマネONE)が約120%、2位はDIAM新興市場日本株ファンド(アセマネONE)、3位は「企業価値成長小型株ファンド(アセマネONE)とアセットマネジメントが上位を独占した。
大和アセットマネジメントもESG(環境・社会・企業統治)に着眼点を運用に取り込み好成績を収めた。
8月の流入額でみると、「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド」が839億円と断トツで、運用先はアセットマネジメントONEで、引き続いてESG関連ファンドの純資産額は増加傾向がみられる。一方、新興国株式投信は、新型コロナの影響で人気が後退している。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。