経済成長マイナスとコロナの巣ごもり需要――推奨・デフレ、対コロナ7銘柄
望月 純夫
2020/08/05
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実は弱かったアベノミクス景気
内閣府が景気の転換とする「山」を2018年10月と認定したことで、過去最長の景気拡大記録を更新とはならなかった。これで12年12月からスタートした景気回復局面は71カ月となり、戦後2番目の長さとなった。
戦後最長の記録は2002年2月から08年2月までの73カ月で、通称「いざなみ景気」である。いざなみ景気当時の成長率は1.6%、今回の回復局面は年1.1%で、同じ期間の先進国である米国の2%、英国の2%程度、ドイツの1%台後半と比べても成長率を下回っていた。
厳しい欧米のV字回復
今回の新型コロナウイルスの感染拡大では、米国の4-6月期の実質GDP(速報値)は、前期比年率換算で32.9%減少し、感染の再拡大懸念もあり7-9月期の回復もV字回復の見通しは困難と言えそう。8月5日現在、雇用支援対策(7月末打ち切り)が続けられるが当面の焦点になっている。また、クレジットカードのデータを見る限り、個人の消費は6月下旬から減速している。
総合的な通貨の強さを示す「ドル指数」は7月に4%超下げ、月間の下落率として約10年ぶり大きさとなっている。マネーは無国籍通貨の「金」に向かい、12月物は1トロイオンス2000ドルを超える水準で、最高値を更新した。
この傾向はビットコインも同様で、1BCT=1万ドルの大台を回復している。その一方で10年物国債の利回りの低下は著しく、実質金利は過去最低のマイナス0.9%まで低下した。
欧州に目を向けると、ドイツのGDPは前期比10.1%の減で、年率換算では米国を上回る30%半ばのマイナスとなった。主要国でコロナ前の水準を上回るのは中国(5%増)ぐらいしかない。
国内にチラつきはじめたデフレの影
わが国においては、7月30日に内閣府が発表した2020年度の経済成長率は実質マイナ4.5%と年初見通しのプラス1.4%から大幅な下方修正。これは新型コロナウイルス禍による経済減速を反映したもので、今後も感染の第2波による海外経済の減速次第では、さらに0.5%程度の下振れ懸念が残る。
消費者物価は0.3%の下落が見込まれ、要因は原油安とコロナによる需要減が重なったことで、4年ぶりのマイナスとなり、デフレの影が改めてチラつく状態になる。為替は米国のGDPや雇用統計発表後に円高に一旦流れたものの、円安に戻したことで、チャート的には一層の円高を阻止したように見えている。日本のマネーは、4、5月は5.7兆円の売り越しだった米国債を、6月には4.2兆円と買い越しに転じている。また輸出は大幅に減少している。
巣ごもり、デフレで強みを見せるDIYと100均
新型コロナウイルスの影響に、上期は巣ごもり需要ということで、DIY用品や園芸用品など利益率の高い商品が売れ、ホームセンター業界は当初の見通しを大幅に上方修正している。
7月31日現在のDCMホールディングス(3050)の株価は1329円でPERは14.4倍、PBRは0.9倍、コメリ(8218)の株価は3320円でPERは14.9倍、PBRは0.89倍、コーナン商事(7516)の株価は3930円で、PERは10.9倍、PBRは1.01倍、島忠(8184)の株価は2878円で、PERは18.7倍、PBRは0.63倍、綿半HD(3199)の株価は2189円で、PERは11.5倍、PBRは1.31倍、アークランドサカモト(9842)の株価は1953円で、PERは15.4倍、PBRは1.06倍である。カインズは未上場である。
100円ショップも上方修正が目立つ、業界第2位のセリア(2782)の株価は4230円で、PERは26.5倍、PERは4.42倍、業界3位のキャンドゥ(2689)の株価は2337円で、PERは88.7倍、PBRは2.97倍、業界4位のワッツ(2735)の株価は999円で、PERは24.5倍、PBRは1.36倍である。業界第1位のダイソーは未公開だが、今年公開の噂もある。
食品スーパーも好業績が目立ち、ハローズ(2742)の株価は3585円でPERは24.1倍、PBRは2.02倍、神戸物産(3038)の株価は6510円でPER53.4倍は、PBRは14.21倍、ライフコーポレーション(8194)の株価4485円で、PERは22.7倍、PBRは2.63倍。ヤオコー(8279)の株価は8400円で、PERは25.7倍、PERは3.14倍である。
コロナ関連で期待できる3銘柄
注目していたNEC(6701)は、4-6月期の業績は赤字と言うことで8月3日には大きく売り込まれたが、通期の業績は上方修正される可能性は十分にあり、押し目買い対応。NECとNTTの関係が改善され、世界で活躍出来る日も近い。
上場来高値を更新する中に自転車部品の大手シマノ(7309)があり、今年の1月末の時価総額は1.6兆円で日本の順位は86位だったが、4月末にはJR西日本を抜き、6月末には日産まで抜き64位まで順位を上げ、市場の映す鏡が大きく変化している。また、リモート会議は予想以上に膨らんでおり、ブイキューブ(3681)の決算発表に期待したいところ。
投信は外国株式からバランス型への流れだが、落とし穴も
コロナ禍でも投資信託への資金流入は続いている。
これまでは外国株式型が中心であったが、バランス型にも資金が流入している。このバランス型は相場変動に強いのをウリにしているものが多い。バランス型は当初設定した資金配分比率を基準に運用される「比率固定型」と、機動的に配分を変える「比率配分型」に分類される。
中でも最も資産が多いのが、財産3分法ファンド(不動産・債券・株式の毎月分配型で純資産は3665億円、2位は「投資のソムリエ」で2212億円、3位はセゾン・バンガード・グローバルバランスファンドで2033億円である。
注目の「投資のソムリエ」の特徴は運用を株式・債券・不動産投資信託等々8種類の資産クラスで運用し、基準価格の変動リスクを年率4%に抑えながら、安定的な基準価格の上昇を目指している。
8つの資産クラスは毎日精査して素早く資産配分を変えることで3年間の騰落ランキングでは1位となっている。ただ変動リスクを抑えるタイプは、株価の急騰局面ではトレンドに乗り遅れる傾向があり、比例固定型も運用成績は遅れがちになるため、好業績を残す投信は少ない。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。