続くコロナ禍 注目業種は製薬とIT・通信系――推奨7銘柄
望月 純夫
2020/06/09
©︎blueone・123RF
株価は二極化、キャピタルゲインでいくか、配当狙いか
新型コロナウイルスの新規感染者数は、猛威にさらされた欧米がようやく落ち着き始め、日本も緊急事態宣言後は減少傾向たどり、宣言解除までたどり着いた。米ギリアド社の抗ウイルス剤「レムデシビル」が米で認可され、日本でも特別認可を受けた。残念ながら期待された富士フィルムの「アビガン」は5月末までの承認には至らなかった。
また、オックスフォード大学が開発したワクチンを英アストラゼネカが年間10億回分供給できる体制を整えたことで、第2波の襲来に備えた体制も整い、各地で自由な外出が再開された。それを先取りする形で、株式市場では、極端に売り込まれた銘柄の買い戻しの動きが起き、コロナ対策で買われたマスクや防護服、消毒液などの銘柄は利益確定売りに押された。
戦後最悪の不況を織り込んだ決算やマクロ指標にもかかわらず、市場は右肩上がりを続け、日経平均株価は長期の移動平均線(200日)まで回復した。
3月末から4月初旬にかけては日銀のETF買いに支えられ、4月後半からは、裁定取引に伴う現物の売り残高が過去最高の2兆4千億円まで積み上がり、その空売りの買戻しが上昇を押し上げることに。1000億円の買いで日経平均株価が100円上昇するエネルギがあり、2400円の上昇が可能となった。相場格言に「セルインメイ(5月に売れ)」があり、極端な売りを誘うことになった。
すでにNYダウ、日経平均は下落幅の半値戻しを達成し、ナスダックや東証マザーズ指数は今年の高値を更新する勢いを見せている。当面出てくるマクロ指標や4-6月期の決算数字は過去の結果に過ぎず、改めて一気に未来への期待を織り込む動きは否定できない。
この局面ではTOW-TIERマーケット(二極化現象)が広がり、大きく上昇する銘柄、割安のまま放置された銘柄にはっきりと分かれ状態が起きる。
割安株で配当狙いという手もあるが、キャピタルゲイン狙いの投資家は未来に開かれる業種や銘柄に投資する必要がある。ワクチン開発や遠隔治療、オンライン学習、テレワークなどのDX(デジタルフォーメーション)、政府の規制緩和や資金提供が大きな鍵を握っている。
日経平均は2万3000円から2万円のボックス相場、個別には大化け銘柄が潜んでいる。6月12日(金)のメジャーSQ前に調整に入る可能性高い。営業日ベースで50日上昇のパターンが過去7回。
依然続くコロナ銘柄は目が離せない
5月は、治療薬アビガンの富士フィルム(4901)ワクチン開発絡みではアンジェス(4563)、オンライン医療システム関連のメドレー(4480)、エムスリー(2413)、メドピア(6095)、上海の大学病院や国立感染研究所とワクチン共同開発をするアイロムG(2372)などの銘柄群やオンライン学習のジャストシステム(4686)、朝日ネット(3834)を紹介した。
ワクチンの分野では、アンジェスの株主であり、傘下にUMNファーマを持つ塩野義(4507)を追加する。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛を受けて、テレワークやオンライン学習の利用が拡大し、動画配信やオンラインゲームを楽しむ機会が増え、それに伴いデータ通信量が急増している。
政府は、緊急事態宣言を全面解除したが、テレワークやオンライン学習の利用は今後も拡大すると見られ、データセンターの存在感は増すものと思われる。IT専門の調査会社では、2024年まで年平均4.6%の成長率があると予想していたが、コロナによる巣ごもり問題を契機に設備投資が加速することが予測される。クラウドサービス事業者大手のアマゾンやマイクロソフト、グーグルなどのキャパシティの拡大、国内大規模データセンターも建設ブームが続きそうだ。
ブロードタワー(3776)、東京や大阪などに拠点を構える都市型データセンター大手、さくらインターネット(3778)は、東京や大阪、北海道にデータセンターを展開する業界大手、TIS(3626)は、東京や大阪、富山にデータセンターを展開している。全国17拠点で都市型・郊外型のデータセンターを展開し、海外でもデータセンターを展開するIIJ(インターネットイニシアティブ/3774)、東京、神奈川、大阪、九州でデータセンターを展開するシーイーシー(9692)にも注目が必要。行動様式の変化の典型として注目されるのがテレビ会議システムで、手軽に使われているのがZOOMで、NECの子会社のNECネッツア(1973)。同社は通信インフラ工事を手掛ける企業として知られているが、企業のネットワークや業務に必要なシステムやサービス(デジタルソリューション)を手掛けている。
5Gのインフラ構築や企業のデジタルトランスインフォメーション(DX)へのニーズと共に、中長期で成長が期待出来る。経済産業省もDX促進に動き出しており、新型コロナウイルスで蹂躙された今回の企業決算の中、IT関連企業の好決算が目立つ。
業界ツートップのNEC(6701)は20年3月期に3兆円を超え、21年3月期の目標を達成し、今期も18%増の予想をし、富士通(6702)は非開示だが、新たなビジネスチャンスに動き出している。DXの有望銘柄としては、安川グループのYE DIGITAL(2354)、大企業に強みのフォーカスシステムズ(4662)などが有望で、それに伴い次世代MPU用パッケージの増産効果で想定以上に期待できるイビデン(4062)に期待。
給付金の手続きでデジタル化の遅れが目立ち公共事業体に強いITbookホールディングス(1447)、オンライン授業の普及で業績拡大が期待できるウチダエスコ(4699)にも注目したい。
投資信託は海外米国株運用が人気、今こそ長期スパンで
3月の投資信託の純資産残高は9兆5000億円減少の106兆円となった。しかし増減の内訳をみると、相場の下落による運用減が10兆5000億円、償還や分配金支払いが2000億円となっており、1兆2000億円の資金が流入してきている。
上位20本のうち、海外で運用するファンドが半分を占めいている。その10本のうちインデックス運用が2本、アクティブ運用が8本、中でも米国株だけで運用するファンドが上位に食い込んでいる。4月からの株価の戻り局面では、巣ごもり関連を組み入れた中小型株ファンドが軒並み上位ランキング入りした。DIAM新興市場ファンドは1カ月で20%超の上昇をした。
今回の新型コロナによる大変動で、最近積み立てを始めたばかりの人の中に、動揺が広がり、せっかく始めた投資を中止してしまったり、中には慌てて積み立てを解約する人も出ている。しかし、長期で見れば、積み立てによる投資効果はこのような株安の時期にこそ高まるもの。過去2000年のITバブル、2008年のリーマン・ショック、2016年の英国のEU離脱に株価の急落を経験し、そのような時ほど、たくさん量が買えて平均コストが下がり、その後の株価が上向くと利益が出やすく、様々な危機の際にマイナスになった人は、安値圏の時に積み立てを止めてしまった人である。
そして、安値の期間が長い方が、株価が上昇した時に、むしろ有利と言える。1985年から積み立てた運用成績は、山あり谷ありでも年率5%程度の成果が見られる。長期で積み立てる以上、長期で上昇する確率の高い資産に投資することでもある。世界株指数の連動投信などは無難な投資と言える。
※本稿は、投資における情報提供を目的としたものです。株式の売買は自己の責任において、ご自身の判断で行うようお願いします。
この記事を書いた人
コンサルタント、ラジオパーソナリティ
1971年慶應大学法学部卒、同年山一証券入社。1985年新本証券国際部入社、パリ駐在員事務所長を経て企業部にて新規公開企業の実務に携わる。 1998年退職後、コンサルタントとして独立。著書に『株をやさしく教えてくれる本(あさ出版)などがある。フジサンケイビジネスアイ株式初級講座、ラジオ日経の「株式宅配便」のパーソナリティを務める。