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確定申告の重要度 2000万円問題で騒ぐより、戻せるお金はきっちり戻す

小川 純小川 純

2019/07/19

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イメージ/©︎123RF

「定年後の老後生活に2000万円が必要」――「年金制度が破綻した」「政府は嘘をついた」「そんなお金は貯められない」などなど、金融庁が出した「『高齢社会における資産形成・管理』報告書」をめぐって政府への批判は強く、デモまで起きた。さらに参議院選挙ではこの報告書が発端になり、にわかに選挙の最大の争点になった。

ただ、この一連の流れを見ると「2000万円」という数字だけが一人歩きした感は否めない。実際、報告書にもあるとおり、会社勤めをしている人を前提にすれば、例えば、夫がサラリーマンで働いた夫婦2人世帯の年金受取額はおよそ21万円で、交際費や趣味に使うお金も含めた1カ月の支出が26万円で、毎月不足分が5万円。それが90歳まで生きるとしたら2000万円足りなくなるという話である。しかし、サラリーマンの退職金の平均はおおよそ2000万円前後あるため、実は何とかなるというのがモデルケースとしての試算になる。

とはいえ、年金生活を考えた場合、年金が増えることはもはや期待ができないのだから、日々の支出をいかに減らすかが、実は重要なポイントになる。そこで定年後生活の支出を減らすための方法を考えていこう。

定年後、重くのしかかる税金と健康保険料

定年後も逃げられない出費といえば、税金と健康保険料。税金は会社に勤めているときは給与から天引きされるため、その負担感をあまり感じない人もいたかもしれないが、給与明細を見れば、誰もが「こんなに引かれているのか」と思ったはずだ。しかし、これが定年後の年金生活になると、より痛切に感じるようになる。

その理由は、税金も健康保険料も自分で納めることになるからだ。もちろん、現役時代も自分で納めていたわけだが、現役時代は自分の財布(銀行口座)に入る前に取られるのでその重みをあまり感じないでいられた。しかし、定年後はひとまず自分の財布に入ってから出て行くため、“取られている”感が半端なく大きく感じるというわけ。

そこで忘れていけないのは、取り返せるものは1円でも取り返すという意識。そして、何といっても重要なのは年に1度の確定申告である。

現役時代は年末になると、会社から「年末調整」の書類を渡され、この書類に、家族構成や加入している生命保険、個人年金保険、住宅ローンがあればその控除証明書類を添えて提出すると、お金が返ってきた。

しかし、年金生活ではこうした税務上の手続きは自分で行わなくてはならない。意外と忘れている人も多いが、定年退職して収入が年金だけになっても、65歳未満で108万、65歳以上では158万以上になると、年金から所得税が源泉徴収される。そのため毎年2月から3月の「確定申告」は必須になる。しかも、この確定申告をもとに住民税や健康保険料が決定されるため、しっかりと申告をしないと、これらの金額も高くなってしまうのだ。

ただ、ここにちょっとした落とし穴がある。それは年金所得者を対象に確定申告を免除する「年金所得者に係る確定申告不要制度」というものだ。

「確定申告をやらなくて済む!」

と便利そうに見える。

免除の条件は、「公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、公的年金等に係る雑所得以外の各種の所得金額が20万円以下である場合」というもの。これを見ると、年金だけで生活している人はほとんどが確定申告が必要がなくなる。めんどうな申告をしなくて、これは便利だが、よくよく考えると、年金だけで生活していても生命保険料を支払っていたり、扶養の家族がいたり、病気などで入院や通院して10万円以上(年金金額に違いがある)の医療費があれば、それも控除の対象になる。

医療費でいえば17年にセルフメディケーション税制が導入され、市販薬でも対象医薬品を購入すれば、合計で1万2000円を超えた額の20%を所得税、10%を住民税から控除される。

つまり、確定申告をして還付を受けなくては損ということになる。しかも、ここできちんと申告しておかないと、住民税の控除もなくなり、結果、税金が増えてしまうといった影響も出てくる。さらにいえば所得をもと健康保険料も計算されるのだから、その負担はまさに増える。

確定申告と聞くと、税務署にいったり書類をそろえたりと、とてもめんどうに感じるかもしれないが、最近ではネットを通じて申告書の作成ができ、そのままネットから申告ができるため手間がかからないようになってきている。

ほとんど人は確定申告をすれば還付を受けられるので、めんどうがらずにしっかりと確定申告を行い、1円でも取り戻せるものは取り戻す――こうした姿勢で少しでも出費を減らすことが重要なのだ。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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