ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

不動産を法人で所有している方、必読!

特例承継税制の適用のポイント

野田洋介野田洋介

2018/12/15

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

〇はじめに

前回特例事業承継税制についての内容や手続きの流れについて書かせていただきました。特例事業承継税制は、自社の非上場株式を先代経営者から後継者へ承継することによる相続税・贈与税が実質的にゼロとなる制度です。

ただし、先代経営者、後継者、会社それぞれに適用要件があります。現状で要件を満たさなければ、その対応が必要となるため今回は適用する上でのポイントについて書かせていただきます。

〇先代経営者の要件

先代経営者の要件の一つ目は「会社の代表者であったこと」です。贈与の場合、贈与までに代表権を返上する必要があります。相続の場合は、相続開始直前において、代表者(代表取締役)なかったとしても問題はありません。

また、次の要件は「同族関係者グループで過半数の議決権株式を保有」し、「グループの中(後継者を除く)で、筆頭株主であったこと」です。この要件を満たさない場合には、自社株式の買取等によって、贈与・相続の開始までに同族関係者の中で筆頭株主になっておくことが必要です。この場合、株式買取のための資金対策なども必要になります。

〇後継者(受贈者)の要件~贈与の場合~

後継者が次のような場合には、対応が必要となってきます。

1、 会社の代表者でない場合
現状で後継者が代表取締役でない場合には、贈与の時までに、代表取締役に就任すれば問題ありません。また、その後継者を含めて複数の代表取締役がいても構いません。

2、 役員就任後3年を経過していない場合
後継者が役員に就任して3年を経過すれば、株式を贈与して納税猶予を受けることが可能になりますので、贈与・相続等の適用期限(2027年12月31日まで)に注意し、役員就任後3年を経過した以降に、株式の贈与を行う具体的な計画を立てましょう。

3、 後継者が保有株式数の上位者でない場合
同族関係者から自社株式を買い取るなどによって、代表者である後継者が同族関係者の中で議決権数の最上位者になります。

〇後継者(相続人等)の要件~相続の場合~

先代経営者の非上場株式等について、後継者である相続人(特例承継相続人等)が相続税の納税猶予を受けるには、先代経営者の死亡の直前において、後継者が役員であることが必要です。そして、相続開始の日の翌日から5か月を経過する日までに代表者となる必要があります。

〇資産管理会社は原則として適用できない

特例事業承継税制が適用できるのは。中小企業基本法で制定された中小企業※です。ただし、常時使用する従業員が1人以上いることなどの要件があります。
※(例)製造業:資本金3億円以下又は従業員数300人以下。小売業:資本金5,000万円以下又は従業者数50人以下。

資産管理会社(一定の要件を満たすものを除く)や医療法人、社会福祉法人、風俗営業会社なども適用対象外となります。

資産管理会社とは、有価証券、自ら使用していない不動産、現金・預金等の特定資産の保有割合が総資産の総額の70%以上の会社(資産保有型会社)や、これらの特定の資産から運用収入が総収入金額の75%以上の会社(資産運用型会社)をいいます。

資産管理会社のうち、次の要件をすべて満たす場合には、資産管理会社に該当しないものとみなされ、特例事業承継税制を受けることができます。
① 3年以上、商品の販売・貸付け(同族会社に対する貸付けを除く)等を行っている。
② 後継者・生計一にする親族以外の常時使用従業員が5人以上である。
③ 常時使用従業員が勤務している事務所、店舗等を所有又は賃借している。

 

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

税理士

昭和58年8月石川県金沢市生まれ。 平成18年3月法政大学工学部を卒業しその後会計事務所に就職。 平成24年12月に税理士試験を合格し平成25年4月税理士登録。 平成29年7月に株式会社アグラデッソ会計事務所、野田洋介税理士事務所開業。 開業後も法人・個人事業者の会計、税務顧問によりタックスプランニングや資金繰りコンサルティングを行う。その他、相続対策・事業承継・組織再編・IPO支援等中小企業や個人のコンサルティングを行っている。

ページのトップへ

ウチコミ!