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高額療養費――制度を理解してリターンを最大限に

小川 純小川 純

2021/04/06

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イメージ/©megaflopp・123RF

3割負担でも高額療養費があるのが強み

いまではあたり前になっている日本の「皆保険制度」。しかし、これが導入されのは60年前のこと。それ以前は人口の3分の2ほどしか保険に加入していなかった。社会福祉が発達している欧州では皆保険制度の国は多く、フランス、ドイツ、オランダなども導入している。なかでもスウェーデン、イギリスは個人の医療費負担はゼロだ。また、カナダ、ニュージーランなどイギリス連邦に入る国も皆保険制度を導入しており、個人負担もゼロだという。

それに比べると3割負担の日本は劣っているようにも感じる。しかし、多くの国では「かかりつけ医制度」を採用し、日本のように日本中全国どこの病院でも同じ3割負担で、同じ水準の診療が受けられる国は多くない。そうした点では、日本の皆保険制度は世界基準でも高く評価されている。

また、現役世代は3割負担とはいえ、日本では一定額以上の医療を支払った場合、それを超えた部分をが払い戻しがされる「高額医療制度」がある。

高額療養費は、70歳未満の人は年収/約1160万円~(標準報酬月額83万円以上)、年収/約770万円~1160万円(同53万~79万円)、年収/約370万円~約770万円、年収/~約370万円、住民税非課税者と世帯ごとの上限額が5段階に区分さてている。

また、3カ月以上の高額療養費の支給を受けた(限度額適用認定証を使用し、自己負担限度額を負担した場合も含む)場合には、4カ月目から「多数該当」となり、自己負担限度額がさらに軽減される。

使い方で大きな差が出る理由とは

大きな病気やケガをして、高額な治療費がかかったときにに頼りになる高額医療制度だが、活用する際に覚えておきたいポイントがある。

例えば、協会けんぽに加入し、月収が40万円の世帯であれば「区分ウ」に属する世帯の人が入院・手術で100万円の医療費がかった場合の自己負担額は30万円になる(表2)。そこで高額医療費を申請すると自己負担の上限額は、

8万100円+(100万円-26万7000円)×1%=8万7430円

自己負担額30万円-8万7430円

で、21万2570円が高額療養費として払い戻されることになる。

しかし、この入院・手術が月をまたいで、最初の月は60万円(自己負担18万円)、翌月の医療費が40万円(自己負担12万円)とすると、最初の月の高額療養費の戻り額は

18万円-8万7430円=9万2570円

翌月の戻り額は

12万円-8万7430円=3万2570円

となって、戻り額の合計は、12万5140円

つまり、戻る医療費が

21万2570円-12万5140円=8万7430円

も少なくなってしまうわけだ。

このよに同じ月にすべての治療を行った場合と比べ、その差は大きく出るのである。

もちろん、すぐに入院、治療、手術が必要というような場合であれば話は別。しかし、医師と相談しながらの治療のスケジュールや入院、手術と日程を調整が可能であれば、入院・手術は月の初めにして1カ月のうちにまとめて行うほうが、医療費の自己負担を減らすことが可能になる。

同じ制度であっても、ちょっとした活用の仕方で違いが出ることを知っておきたい。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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