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重要事項説明書における水害リスクの説明義務

森田雅也

2020/08/14

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©︎bee32・123RF

従来、不動産を購入または賃貸時において重要事項説明書の説明義務を宅地建物取引業者に対し課していました(宅地建物取引業法35条)。

この説明義務の範囲は契約に基づく物件の内容や、契約の内容、及び、購入者・賃借人の利益保護の必要性など多岐にわたります。この利益保護の中には津波や土砂災害に関する説明義務は含まれていましたが、水害に関しては含まれていませんでした。

そこで、国土交通省は、近年大規模水害が頻発している背景から、甚大な被害が出る水害についても重要事項説明書の説明義務を新たに課すこととしました(公布:令和2年7月17日 施行:令和2年8月28日)。

改正点

今回の改正に伴い、確認しておくべきポイントは、以下の3点です。

1つめは、重要事項説明書の説明義務に、水防法の規定に基づき作成されたハザードマップにおける対象物件の所在地を提示することが義務づけられました。

これにより、購入者・賃借人は当該物件(購入または賃貸物件)が、水害発生のリスクをどの程度負うことがあるのか自分で調べなくても明示及び書面による交付がされることになりました。

また、平成28年4月に発表された国土交通省の「水害ハザードマップ作成の手引き」によると水害ハザードマップは、「水害のリスク」と「水害時の避難に関する情報」を住民目線で作成することが目的とされていますので、万が一水害発生時には重要事項の説明で受け取った書面をもとに避難することができます。

ただし、重要事項説明時のハザードマップは最新のものを交付することが改正の内容ですが、長年その物件に住み続けていた場合においての水害発生時は必ずしも最新のものとは言えない場合があります。

そこで、本来は賃貸借契約更新の際に35条の説明義務はありませんが、契約更新の際に当該物件の最新のハザードマップが改訂されている場合などは更新契約書と一緒に交付するなどして出来るだけ最新のハザードマップを交付するほうが望ましいでしょう。

2つめは、今回の改正にはハザードマップに記載されている避難所についても併せて示すことが望ましいとされております。これは上記「水害時の避難に関する情報」の目的に資するものと思われます。

ただし、こちらは義務ではなく「望ましい」という努力義務に留まりますので、避難所が明記されてないことだけをもって、説明義務違反とすることはできないように思われます。

3つめは、対象物件が浸水想定区域内に該当しないことをもって、水害リスクがないと誤認させることのないように配慮しなければなりません。

上記3点が今回の改正に伴い確認しておくべきポイントとなります。

今回の法改正で、宅建業者としては新たに説明する事項が増えたことになります。対応にお悩みの方は、ぜひ一度弁護士に相談してみて、重要事項説明書の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

弁護士

弁護士法人法律事務所オーセンス 弁護士(東京弁護士会所属)。 上智大学法科大学院卒業後、中央総合法律事務所を経て、弁護士法人法律事務所オーセンスに入所。入所後は不動産法務部門の立ち上げに尽力し、不動産オーナーの弁護士として、主に様々な不動産問題を取り扱い、年間解決実績1,500件超と業界トップクラスの実績を残す。不動産業界の顧問も多く抱えている。一方、近年では不動産と関係が強い相続部門を立ち上げ、年1,000件を超える相続問題を取り扱い、多数のトラブル事案を解決。 不動産×相続という多面的法律視点で、相続・遺言セミナー、執筆活動なども多数行っている。 [著書]「自分でできる家賃滞納対策 自主管理型一般家主の賃貸経営バイブル」(中央経済社)。 [担当]契約書作成 森田雅也は個人間直接売買において契約書の作成を行います。

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