「父親の存在を消したかった」〜二児の母が面会交流に前向きになるまでの軌跡〜(2/2ページ)
しばはし聡子
2021/06/03
実は元夫に会いたいと思っていた子どもたち
――その後、直接会う機会はありましたか。
コロナが落ち着いたらと思っていたのですが、いつまで経っても落ち着かなくキリがないので、ゴールデンウィークに会えるようにやりとりをしました。子どもたちは父親に会えることが分かると、嬉しくてたまらなかったのか体中からワクワク感があふれ出ていました。
夫は自宅に住み続けていたので、近くまで送り届けて、父子3人水入らずで1日過ごしました。実に1年半ぶりです。一緒にゲームをしたようです。
帰った後に、お礼のLINEを送ると「どういたしまして。こちらこそありがとう」といった内容の返事がきました。夫婦でいた間は、丁寧なやり取りをできていませんでしたが、親同士になったことでいい関係性ができたと感じた瞬間でした。
――ご自身の気持ちの変化を振り返ってみて感じることは?
「会わせていない」という気持ちを抱え続けていたときは苦しかったです。「父親の存在を消すことは間違えていない」と思い込むこと自体がそもそも無理があったんですよね。子どもたちにタブーを作ってしまっていたことも苦しかったし、なにより子どもたちが苦しかったと思います。
「子どものために会える環境をつくればいいんだ」と決めたらすごく楽になりました。
――別居や離婚後の子育てで悩んでいるパパやママへメッセージをお願いします。
私は、ひとりで考える時間があったことがよかったと思っています。もし、夫が別居直後から「子どもに会わせろ」と急かしてきていたら今のような気持ちになれなかったし、もっと関係が悪化していたと思います。
私は1年半もかかってしまって、その間子どもを苦しめてしまいました。だからこそ、早いうちから離婚しても親はふたりなのだから、縁を切れるわけではないということを知っておくことが大事だと思います。そして、お互い責め合ったり奪い合ったりするのではなく、相手の気持ちを尊重すること、ときにはそっとして考える時間を与えることも大事なのかなと。
元夫は面会交流の条件も出さず、その後も連絡をしてくることもなく、それは元夫の性格的なこともありますが、結果してそのスタンスのおかげで私自身、自分を変えることができました。
考え方を変えたら、子どもの笑顔は増えたし、私自身も苦しさから解放されて前向きな気持ちになれています。今もまだまだ進行形ですが、こうやって話をすることで気持ちを整理することができています。
これからも子どもたちが自由に父親と関われる環境を作っていきたいと思いますし、同じように悩んでいる方に対して、私の経験が役に立つといいなと思っています。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️