離婚しても両親で子育て「共同養育」しているママの声②〜共同養育コンサルタントしばはし 聡子コラム〜
しばはし聡子
2018/10/18
イメージ/123RF
前回は、離婚しても両親で子育てをする「共同養育」を実践しているママの声をお届けしましたが、今回はパパの声です。
自分の元夫と直接やりとりするのは拒絶感があっても、よそのパパの声を聞き、父親の思いや苦悩を知ることでなにか気づきがあるかもしれません。
離婚しても親同士の関係を続けていくためには、ストレスのない関係を作り上げることも離婚後の子育てが楽にできるコツ。ぜひご一読くださいね。
◾️小学生女の子のパパ
離婚して別々に暮らすようになったのは5年前になります。調停離婚だったこともあり面会交流のことはきちんと決めていたのですが、離婚後わずか1か月で履行されなくなり、その3か月後に面会交流について再調停を行うことになりました。
その間に子どもたちと会えたのは裁判所での試行面会の一度きりでした。この頃が一番苦しい時期だったと思います。私にとって救いとなったのは当事者グループとの交流でした。そこでは「本当に“子どもたちのため”というのは何か」を常に考えさせられたので、自暴自棄にならずに済んだと感謝しています。
会えていない時期での養育費については、支払いを止めようかと何度も考えましたが、子どものために自分の責務はきちんと果たしたいという気持ちのほうが少しだけ強かったので、欠かすことはしませんでした。関係改善後に、「養育費は助かった」と元奥さんが話してくれたので、結果として自分のためにも相手のためにも子どものためにも良かったことだったと思います。
再調停では面会交流は月1回2時間。当初は月4回8時間程度でしたから、大幅な削減となりましたが、面会を重ねていくうちに、宿泊ができるようになり、家族4人での買い物や食事ができるようになりました。全てが順調だったわけではありませんが、うまくいかなかった時は「3歩進んで2歩下がる」と心がけました。
今のような面会ができるようになってきたのは、元奥さんの「自分を克服したい」という思いによるものが一番大きかったように思います。そして、今のように家族で面会できるようになって一番喜んでいるのも元奥さんではないかと思っています。今でも私の自宅での面会は制限されていたり、家族がそろっている時にも高葛藤な状態になることもありますが、今までのように「少しずつ」よくなっていけばいいかなと応援するような気持ちです。
自分自身が心がけたのは「正論よりも相手の気持ちを優先する」ということです。 具体的には、客観的に「おかしいよね」と思うことでも、いったん「そう考えるくらい大変だったんだ」と思うようにしました。 また、自分自身子どものことを思ってしている行動が、本当に子どものためなのか、子どもの本心はどうかを考えることを心がけました。
紆余曲折があってようやく共同養育のできている家族のかたちになってきたように思います。
家族というものを積み木で例えるなら、離婚によって一度崩れてしまったものを、ひとつひとつ積み上げて、今では子どもたちも含めた全員でひとつのものをつくりあげているように実感します。今度は何があっても崩れない頑丈なものを作りたいと思っています。
◾️小学生男の子のパパ
息子が小1の夏の終わりに連れ去られました。4ヶ月間息子と会えず。その後、離婚調停を申し立てられました。こちらからは面会交流と監護者指定を申し立て、審判は監護権は妻へ。 離婚調停から2年以上が過ぎましたが未だに離婚してません。妻からもその後、離婚の話はありません。
毎週末の土日と祝日は息子と過ごしています。サッカーの練習に妻もよく見学に来ます。周囲の父兄からすればとても円満な家庭に見えているかも知れません。
ただ、いまだに宿泊を認めてくれません。キャンプに出かけたり、星空観察をしたりなど計画はするものの叶っていません。そんな中、共通しているのは「息子ファースト」にお互い徹していることかと思います。息子にとって何がベストなチョイスなのか。この点については息が合っているというか一致している気がします。
平日の生活と習慣的なものは妻がしっかりと指導、教育し、土日や祝日は私が外に連れ出すと同居時から変わらず役割分担が出来ているようです。
もうすぐ小4になります。『空気』を読んで「今日のことはママには言わん方がいいよね?」なんてこともありましたが、何でもパパ、ママ共に話していいんだよとと常々話しています。
現状、ほぼ共同養育が出来ている状態です。しかし、何が阻害しているのか。それは家庭裁判所や学校、地域なのかもしれません。週に2、3日は父親の元で過ごしてほしいと妻は思っていたのに、家裁では月に2日間という審判。学校や学童では離婚協議中だと報告しただけで、私は出入り禁止になりました。
特に別居親そして父親である場合は、社会性を伴った関係でなければ持続するのが難しいと思っています。
幼児期は二人の世界に終始してそれで成り立つわけですが、少年期に入ると、社会的関係の中で親子として関わっていけないと色々と難しくなってきます。高学年になるとそこに友達やチームメイトが居ないと成り立たなくなります。
ここが男親の大きな課題だと思います。学校行事、地域活動、友人との遊び方など中々男親では把握することすら難しいからです。私の場合は、共通したもの=サッカーがあったのでクリア出来ましたが、ここは高学年に差し掛かる子には重要なポイントだと思います。
行政、地域社会への共同養育の浸透、そして家裁への理解を求めていかなければと思っています。
いかがでしたでしょうか。日頃知ることのないパパ側の気持ちを垣間見れる機会になったのではないでしょうか。別居離婚後の子育てや相手との関わりに悩まれているママたちのご参考になれば幸いです。
この記事を書いた人
一般社団法人りむすび 共同養育コンサルタント
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の子連れ離婚経験を生かし当事者支援として「一般社団法人りむすび」を設立。「離婚しても親はふたり」共同養育普及に向けて離婚相談・面会交流支援やコミュニティ運営および講演・執筆活動中。 *りむすび公式サイト:http://www.rimusubi.com/ *別居パパママ相互理解のオンラインサロン「りむすびコミュニティ」 http://www.rimusubi.com/community *著書「離婚の新常識! 別れてもふたりで子育て 知っておきたい共同養育のコツ」️