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特徴ある返礼品は、地方を知るきっかけづくり

都市にいながら「ふるさと」をつくる―ふるさと納税活用法

馬場未織

2016/01/04

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ふるさと納税とは自治体への寄附金

 地域格差や過疎による税収減少に悩む自治体に対する措置として、2008年に創設された「ふるさと納税」制度。いまでは実に多くの自治体が参加し、「ふるさと納税」ブームともいえる状況になってきました。地方への移住に興味がある人にとっては、目が離せない動きです。

 まず制度の概要を説明しましょう。ふるさと納税とは地方自治体への寄附のことです。「納税」という名前がついているために誤解されがちですが、通常の税金とはまったく関係がありません。さらに「ふるさと」といっても、寄附先は居住地や出身地に限定されるわけではなく、自分の好きなところを選べます。つまり、この制度を使うことによって、あたかも第二の「ふるさと」と思えるような場所を全国各地に持つことができるのです。

 自治体への寄附金は、地域のさまざまな課題解決のために使われます。農林水産など一次産業の支援、自然保護、高齢者福祉の充実、子ども・青少年の育成、祭事など伝統文化の保全、震災復興などなどです。

 たとえば栃木県小山市では、2012年にラムサール条約湿地に登録された渡良瀬遊水地の保全に、ふるさと納税による寄附金を役立てています。秋田県八郎潟町では、県の無形民俗文化財に指定されている「願人踊」の保存・継承に活用しています。

 こうした各地のがんばりを、都市部に住みながら応援できるのが、ふるさと納税のおもしろさです。

魅力的な返礼品の数々

 この制度が急速に広がっているには理由があります。寄附者にも大きなメリットがあるためです。寄附者には税制上の優遇があるため、寄附額のうち2000円を越える分については、所得税と住民税から原則として全額が控除される仕組みなのです。

 さらに、寄附をすると、お礼として地域の特産品などが送られてくるのがうれしいところ。たとえば長崎県佐世保市に3万円寄附をすると、お礼として長崎和牛ロース肉ステーキ(600グラム)が送られます。1930(昭和5)年に創業した老舗の精肉店が目利きした長崎和牛で、美しい霜降り、キメ細かく柔らかい肉質が自慢のロースです。3万円のうち2万8000円は控除されますから、実質たった2000円の寄附で豪華な返礼品が手に入るわけです。ふるさと納税については、「たった2000円でおトクがいっぱい!」といった宣伝文句を耳にしますが、こうしたオトク感が、ふるさと納税の人気が高まっている背景にあります。

 現在、ふるさと納税に関するポータルサイトが複数できていますが、こうしたサイトを見て「どんな返礼品がいいかな?」と考えているだけでも、全国各地の豊かさを実感でき、移住・デュアルライフ(二地域居住)への夢が膨らみます。
 
 ただ、このふるさと納税フィーバーが昨今過熱しすぎている向きもあります。この制度がつくられた当初は「ふるさとに恩返ししたい」という素朴なものでしたが、今では特産品目当てに寄附する人が増え、つられて自治体間の競争が激しくなり、中には赤字覚悟で返礼品を用意するという本末転倒な自治体もあるそうです。

 そんな問題点も心に留めながら、できれば特産品だけに注目をするのではなく、心から応援したい地域を選び、一票を投じる思いでふるさと納税をしていきたいものです。

実際に足を運ぶきっかけにも

 返礼品は、ご当地グルメの食材ばかりとは限りません。実際に足を運ぶきっかけになるものもたくさんあります。

 岡山県の南東部にある和気町では、観光名所である和気鵜飼谷温泉のペア宿泊券という返礼品が選べます。こうした宿泊券のほか、ユニークな体験の機会を提供している自治体も多くあります。山梨県中央市では、ふるさと納税のお礼として、味噌づくり体験を楽しむことができます。盆地特有の寒暖の差を生かし、山梨の味噌はコクと旨みが増すのだとか。自分でつくった味噌なら、おいしさも格別なうえ、その地域に対する愛着も自然とわくはずです。
 
 こうして、自分もちょっぴりトクをしながら地方を応援し、お気に入りの地域を絞っていくのもいいでしょう。ご当地グルメのお取り寄せから始まり、次に現地に旅行に出かけ、心からステキな場所だと思える地域に出会える場所を探してみる。移住・デュアルライフの準備として、ぜひふるさと納税を活用してみてください。

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この記事を書いた人

NPO法人南房総リパブリック理事長

1973年、東京都生まれ。1996年、日本女子大学卒業、1998年、同大学大学院修了後、千葉学建築計画事務所勤務を経て建築ライターへ。2014年、株式会社ウィードシード設立。 プライベートでは2007年より家族5人とネコ2匹、その他その時に飼う生きものを連れて「平日は東京で暮らし、週末は千葉県南房総市の里山で暮らす」という二地域居住を実践。東京と南房総を通算約250往復以上する暮らしのなかで、里山での子育てや里山環境の保全・活用、都市農村交流などを考えるようになり、2011年に農家や建築家、教育関係者、造園家、ウェブデザイナー、市役所公務員らと共に任意団体「南房総リパブリック」を設立し、2012年に法人化。現在はNPO法人南房総リパブリック理事長を務める。 メンバーと共に、親と子が一緒になって里山で自然体験学習をする「里山学校」、里山環境でヒト・コト・モノをつなげる拠点「三芳つくるハウス」の運営、南房総市の空き家調査などを手掛ける。 著書に『週末は田舎暮らし ~ゼロからはじめた「二地域居住」奮闘記~』(ダイヤモンド社)、『建築女子が聞く 住まいの金融と税制』(共著・学芸出版社)など。

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