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頻発するカセットボンベの事故 注意すべきポイントは何か

多数の窓が割れ、火災、やけど、家屋の損壊も…手軽で便利だからこそ気を付けたいカセットボンベの扱い方

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イメージ/©︎kvkirillov・123RF

神戸で、高知で、札幌で…

昨年末12月26日のこと。神戸の街なかでカセットボンベのガスが爆発する事件が起きている。場所は同市兵庫区にあるパチンコ店の2階駐車場だ。この爆発により当該建物のガラス窓14枚が割れる騒ぎとなっている。

さらに、現場にいてやけどを負った男1人が病院に搬送されたが、騒動を起こした犯人は実はこの人物だった。現場で「ガスパン遊び」をしていたらしい。カセットボンベ等に詰まったガスを故意に吸って自ら酸欠状態となり、酩酊した状態を楽しむ困った遊びだ。

年が明けて先月12日、31歳になるこの男は重過失激発物破裂の疑いで県警に逮捕されている。なお、たしかに酩酊していたと見えて、男は駐車場に停めた車の中で、ガスが充満しているにもかかわらずタバコを吸うためライターに火をつけたそうだ。よくぞ命が助かったものだ。

上記の事件の前月、高知市の民家でもカセットボンベが爆発し、家屋の一部が損壊している。高齢の住人がやけどを負った。なお、こちらはうっかり事故らしく、住人はボンベの装着されたカセットコンロを点火中のストーブの上に置いてしまった。ボンベ内部のガスが熱で膨張、圧力が上昇し缶が破裂、ガスに引火したとみられている。

さらに、いまから1年ほど前の2021年1月21日未明にも、札幌市手稲区でやはりカセットボンベが比較的大きな事故を招いている。現場はアパートの一室で、報道によれば火災も発生した。住人がやけどを負ったほか、近くにあった車の窓ガラスにもヒビが入った。鎮火までにおよそ2時間半を要したという。なお、原因はこちらも「うっかり」だ。

住人は当時、コンロで揚げ物をしていたが、カセットボンベをそのすぐ近くに置いていたらしい。そのため高知市のケース同様、熱によってボンベ内部の圧力が上昇、やがて缶が破裂し、ガスが噴出、引火したようだ。

さて、以上3つの事件・事故だが、最初の神戸の例はきわめてまれなものといっていいだろう。さらに、点火されているストーブの上にカセットコンロを置いてしまった高知の事故も、そうあちこちで似たケースが生じるものでもないはずだ(住人は普段からストーブの上を台に使い、コンロを置いていたそうだ)。

だが、札幌市の事故はそうではない。こちらはちょっとした油断から誰にも起こりうるものだ。というよりも……

「点火・調理中のカセットコンロのそばに、交換の準備のため予備のボンベを立てておくことなどよくある」――そんな人はきっと多いはずだ。すぐにやめよう。その行為はとてもキケンだ。

【参考記事】物件内では使用禁止にすべき…? 「ストーブ火災」原因の多くが、実は電気ストーブ

「熱」の元だが「熱」に弱いカセットボンベ

どのメーカーのカセットボンベでも、注意書きを読めば、そこには必ずこう書かれている。

「事故の原因になるので次のことを守ってください―――40℃以下の場所に保管する」

とはいえ、40℃といえば近ごろはさほど驚く気温でもない。真夏の猛暑日ともなれば、時折ニュースでも伝えられるくらいの温度だ。

ところが、カセットボンベのメーカーは、そのラインを超えればボンベには事故の危険が生じる旨を訴えている。カセットボンベは料理などに使う「熱」の便利な供給源だが、商品そのものは実は熱に弱いのだ(熱が加わると危ないのだ)。このことをしっかりと認識しておかないと、誰もが大きな事故を起こす可能性がある。

「熱」がボンベに及んで事故が起きた例をいくつか挙げてみよう(NITE・独立行政法人製品評価技術基盤機構および東京消防庁の公表資料より)。

・カセットコンロを2台並べ、鉄板をその上にのせて調理。熱せられた鉄板の下でボンベが加熱され、内部の圧力が上昇、破裂し爆発。15人が負傷(08年・東京)

・カセットボンベをファンヒーターの温風出口近くに置いていたため、ボンベが加熱され内部の圧力が上昇、破裂し爆発。使用者がやけど(13年・北海道)

・カセットコンロをIHクッキングヒーターの上に置いた状態で、誤ってヒーターのスイッチをオン。コンロの中のボンベが加熱され破裂。使用者軽傷(13年・千葉県)

・カセットボンベを使用中の業務用コンロの近くに置いていたため、ボンベが加熱され内部の圧力が上昇。破裂し火災が発生、9名がやけど(18年・神奈川県)

このとおり、どの事例からも「カセットボンベに熱を加えてはいけない」ことが教訓として示されている。

なお、1つ目の東京の事例は特殊なようでいて案外そうではない。要は、上部を鉄板に塞がれたその下で、カセットコンロに装着されたボンベの周囲に熱が籠ったことが爆発の原因とみられるが、同じことはカセットコンロ上に大きすぎる鍋等を置いた場合でも起こりうる。ぜひとも注意したいところだ。

穴あけ廃棄は危険

こうしたボンベに熱が加わってのかたち以外にも、カセットボンベの事故はほかの原因でも起こりうる。機器への装着が正しく行われずにガスが漏れるケースや、余ったガスをボンベから抜く作業をしていて、そのガスが引火してしまうなどだ。

例えば、コンロに火がつき、調理をしている部屋で、一方ではカセットボンベのガス抜き作業をするなど自殺行為にひとしい。同様に、ガス抜き作業中に近くでタバコに火をつけようとするなど、絶対にやってはいけないことだ。

なお、使いきれず、カセットボンベに残ったガスの処分については、缶に穴をあけて行う人がいるが、メーカーはこれを危険と呼びかけている。なぜなら噴出するガスを止められなくなるからだ。そこで、安全な方法としては……

・屋外の火の気のない風通しのよいところで
・カセットボンベの先端部を下に、コンクリートなどに押し付け、ガスを出す
・ガスが出なくなったあと、振って“サラサラ”と音がしなければガスは抜けている
メーカー「イワタニ」によるガイダンス

なお、空になったボンベは、各自治体の定めに従って、正しく廃棄するようにしたい。

狭い部屋ではボンベと熱源の接近が起こりやすい

以上、カセットボンベの事故にかかわる危険についてふれてみた。

いまや調理用カセットコンロのみならず、暖房器具(カセットガスストーブ、カセットガスファンヒーター)や発電機等にも使用されるカセットボンベは、われわれの身近にある頼れるグッズといっていい。災害時の備えとしても堂々の定番商品だ。

ただし、その内部には危険な可燃物が詰まっている。扱いにはデリケートさが要求される。ところが、カセットボンベは手軽で便利すぎるため、われわれはついそのことを忘れがちだ。

「うっかり」や「ぼんやり」あるいは「無知」による事故がそのため絶えることがない。自身の生命や身体、財産、さらには周りの人々のそれらも守るため、カセットボンベは誰もが厳重な注意をもって取り扱うことが肝心だ。

特に、賃貸住宅の狭い部屋での一人暮らしなどでは、カセットボンベと「熱源」との接近が起こりやすい。例えば、買ってきたボンベを立てておいたそばにあるファンヒーターや電気ストーブのスイッチをうっかりオン……いかにもありそうな場面となる。

入居者ひとりひとりが気を付けるほか、賃貸住宅オーナーや管理会社側も、注意の呼びかけを怠らないようにしておくべきだろう。 

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この記事を書いた人

編集者・ライター

賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室

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