ゆっくりじんわり暖かい、猫たちが喜ぶ暖房器具は人にも優しいけれど
山本 葉子
2022/02/11
イメージ/©︎imoppet・123RF
使いやすいのは小型の暖房器具だけれど…
寒い日が続きますが、2月に入り、春の息吹を感じるようになってきました。とはいえ、新型コロナのオミクロン株の影響もあって、室内飼いの猫はもとより、人も室内で過ごすことが多くなっています。
普通であれば、人は寒い季節でも通勤や通学で外に出て、室内とは違う空気にふれながら過ごすわけですが、リモートワークが推奨されるコロナ禍の生活では一日中室内といった環境で暮らすこともあります。実は、室内飼いの犬、猫、小鳥とった伴侶動物は常にこの状態の中で生活しています。
そうなると、やはり室内の空気や温度の「質」が気になりますね。今や、ほとんどのご家庭ではエアコンなどの暖房器具が各部屋に付けられているのではないでしょうか。
最近の暖房器具は、センサーやタイマーが付いていて細かい温度設定ができるものも多くなっています。また、機種によっては「低い場所へ温風を届ける機能」や「人のいる方向を感知して作動」といったものなど、効率よく温められる機能がついたものもあります。
それでも暖房の暖かい空気は、基本的に室内の上に溜まってしまうので、キャットタワーやキャットウォークのあるお部屋では猫たちはそこに陣取ってぬくぬくと過ごしたりします。
そんな暖房器具のなかでも、安価で手に入って、軽いので場所の移動も楽な小型温風機といったものは、手軽な暖房器具の1つです。すぐに温風が出てトイレや洗面所などの空調が効いていない場所を素早く快適温度にする事ができます。ただ、温める力は弱いので狭い場所向きです。
同じように小型の暖房器具としては、電気ヒーターがあります。ただ、電気ヒーターは熱線があるので火傷や火災などに注意が必要です。そのため猫や犬のいるご家庭では、事故が起こらないように対策が必要です。
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燃料を燃やす暖房器具は危険もあった
少し前まで多くの家庭では、灯油ストーブを使っていました。直接火を使うため、お湯が沸かせたり、機種によってはそこでお餅などの焼き物をしたりと、室内に火があるのはそれなりに楽しかったりしましたが、近づきすぎた猫のひげがチリチリに焦げて、いわゆる「男爵ひげ」になってしまったり、シニア猫の場合は毛が焦げているのに気が付くのが遅れたりと、危険もありました。それを防ぐために、ストーブの周りにサークルをつけたりしていました。
また、日本ならではの暖房器具としては、コタツも寒がりの人や猫にとってもは嬉しいアイテムでした。電気コタツは、その点安全ですが、古くは練炭などを熱源にして布団をかけていたため、猫が入ってうっかり長時間過ごしてしまうと一酸化炭素中毒を起こして、ふらふらになって出てくることもあったりして、やはり猫にも、もちろんお子さんにも危険がありました。
いずれにしてもコタツに入っているだけで、ぽかぽかと暖かく、ついついコタツから出て動くことが億劫になってしまいます。これは猫も人も一緒でしょう。
猫も喜ぶ「輻射式」冷暖房機器
さて、そんないろいろな種類のある暖房器具の種類に「輻射式」と呼ばれるものがあります。
具体的には、パネルヒーターやカーボンヒーター、オイルヒーターなどで、ホットカーペットもその一つだとされます。
これら輻射式の暖房器具のよいところは、ファンがないので風が出なくて埃などが立ちにくく、音が静かという点です。また、燃焼するわけではないので、空気が汚れることなく、じんわりと時間をかけて暖まっていくので身体に優しいということもあります。しかし、この輻射式の暖房器具は、エアコンやファンヒーターと比べて部屋が暖まるのに時間がかかる点が難点です。
とはいえ、猫たちにとっては風が来なため、鼻が渇いたりしにくいこともあって、こうした暖房器具の近くでよく暖をとっています。輻射式の暖房器具は、なんらかの物体を温めてその熱で周りの温度を上げるためか、なんだかとても体が楽です。
一方、暑い夏に室内を冷やすのにも、パネルや壁の中に通してある管を冷たくして、その温度を体に受ける方法で涼むと、いわゆる冷房病になりにくいのだそうです。
人にも猫にも優しいけれど、財布には優しくない?
暖めるにしろ、冷やすにしろ、こうした輻射式の暖冷房器具は立ち上がりに時間がかかるため、早く暖めたい、涼しくしたいときはもどかしいですが、風が吹き出して暖める暖房器具に慣れている身体にとって、「暖まるってこういう感じだった!」とちょっと感動してしまうほど快適です。猫たちにとっても。これらの暖房器具は本体が熱くないので、猫たちがたまにスリスリしているところを見かけることもしばしあります。
そして、特に猫たちにとって嬉しい暖房器具が「床暖房」です。
床暖房のスイッチを入れると猫たちは床でとろけています。人も一緒にゴロゴロすれば、そこはもう天国。頭寒足熱――何もしたくなくなります。
猫と暮らす戸建てを計画している方は、壁と床にそれぞれ輻射式の冷暖房を仕込んでおいてはいかがでしょうか。猫に優しい暖房は人にも優しい暖房です。
猫たちが家に恋をしちゃうかも。ただし、費用は一番高くかかりそうではありますが……。
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この記事を書いた人
NPO法人東京キャットガーディアン 代表
東京都生まれ。2008年猫カフェスペースを設けた開放型シェルター(保護猫カフェ)を立ち上げ、2019年末までに7000頭以上の猫を里親に譲渡。住民が猫の預かりボランティアをする「猫付きマンション」「猫付きシェアハウス」を考案。「足りないのは愛情ではなくシステム」をモットーに保護猫活動を行っている。