火のないところでも火事は起こる 持ち家も賃貸も、炎上させないために知っておきたいこと
賃貸幸せラボラトリー
2021/10/27
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火のないところにも煙は立つ?
火のないところに煙は立たない――という。しかし、噂話はともかく現実の火災においてはそうではない。
「火の気なんてないはずなのに火が出た!」「住宅や部屋、家具が焼けてしまった!」といった例があちこちで発生している。ご存じだろうか?
大切な持ち家、他人に借りている部屋……その内部に潜んでいる「火のないところに煙を立てる」意外な危険について、いくつか挙げていこう。
「私はタバコを吸わないから」「ウチは石油ストーブを使わないから」で、安心していてはいけないのだ。
電子レンジ
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独立行政法人製品評価技術基盤機構「NITE」が、「調理家電の事故の中では、電子レンジの事故が最も多い」と、記したリリースを発表したのが今年の5月末のこと。その後4カ月も経たない9月9日に北海道の北見市で電子レンジが原因の火災が発生している。現場はアパートの2階だ。火は約3時間後に消し止められたものの、火元となった部屋はほぼ全焼した。2人が死亡する惨事となっている。
電子レンジは、いまやどの家にも見られるもっとも一般的な調理家電だ。ガスコンロやカセットコンロなどと違い、いわゆる火の気はない。なので、火災とは縁の無い印象をもつ人が多いが実はそうではない。使用や管理にあたっては、かなりの注意を要するデリケートな機械だ。
加熱のし過ぎによる食品の発火や、庫内汚れによる火花の発生など、火災の危険が電子レンジにはいくつか潜んでいる。上記NITEのリリースがそれを知るためのよい参考になる。ぜひ目を通してみてほしい。
IHクッキングヒーター
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「火を出さないから安全」のイメージのまま、ついつい気を抜いた使い方や誤った使い方をされやすい。そのことが、逆にIHクッキングヒーターの大きなリスクとなっている。
例えば、天ぷら油火災だ。決まった量を守らず、少ない油を加熱したことで、安全装置が正しく作動せずに発火したり、揚げ物専用ボタンの存在を忘れて普通に加熱したため急に温度が上がりセンサーの反応が追いつかず発火したりといった事例が、たびたび報告されている。
さらに、ヒーターの上面がフラットで物を置きやすいからといって、便利な台にしてしまうなどもってのほかだ。誤ってスイッチが入った場合、条件が揃えば載せられたものが発熱し、燃え出すことは当然ありうる。実際にそうした事故も起こっている。
エアコン
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火災のイメージが湧きにくい家電のひとつだろう。ところが、使用電力が大きなことなどが要因となり、配線の不手際や、内部洗浄した際のミスといった意外なところから、火災を発生させることがある。
さきほどのNITEが、今年6月にリリースしたところによれば、「2016年度から2020年度の5年間に、NITEに通知された製品事故情報において、エアコンによる火災事故は247件」に及ぶとのこと。
「使用する時期が来る前に必ず試運転・点検を行う」「内部洗浄は正しい知識をもったプロに任せる」「コンセントはエアコン専用に設置されたものを使い、テーブルタップや延長コードを使用しない」など、大事な注意点を上記リリースなどからぜひ学んでおきたい。
リチウムイオン電池
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普段はまさに火の気無し。ところが、何らかの理由でときに発火し、火災原因にもなることでリチウムイオン電池はよく話題となる。
しかしながら一方で、スマートフォンやモバイルバッテリー、パソコンなどに加え、充電式の掃除機や電動工具等々、リチウムイオン電池を内蔵する機器は、いまやわれわれの暮らす家の中にあふれる状況だ。
注意すべきポイントは何だろう。消防当局や国民生活センター、行政の呼びかけなどを参考にまとめてみよう。
・製造元や販売元、型式などの明示がない製品、仕様が不明確な製品を使わない
・法令に定める安全基準を満たしていることを示す「PSEマーク」が付いている製品を選ぶ
・製品に付属している充電器や、メーカー指定の純正品など、規格の正しく合った機器、製品を使う
・膨張、異音、異臭のほか、充電が最後までできない、使用可能な時間が短くなった、不意に電源が切れる、発熱が著しいなど、異常が生じているものは使わない
・高温下や、放熱が妨げられる環境下で、製品を使用しない
・製品に衝撃を与えたり、変形を生じさせたりしない
なお、リチウムイオン電池の発火事故の多くは、充電中か製品の使用中に起きていると見られる。外出時や就寝時などは、電源をオフにし、コンセントから外しておくのが安全ということになるだろう。
乾電池
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棚の引き出しなどに普通に転がっている乾電池が、火災を引き起こす可能性もある。最近話題となった例が、昨年の8月に福岡市城南区で発生し、2階建て住宅兼事務所を全焼させた火事だ。原因が乾電池であったことが今年になり明らかとなっている。
報道によると、角型電池のプラス端子とマイナス端子(これらは同じ側に付いている)にボタン電池が接触し、ショートしたらしいとのこと。つまり、各種の電池をハダカのまままとめて保管するような行為は非常に危険ということだ。たとえ使用済みのつもりでも、電池に残った電力の有無は目では確かめられない。当然気は抜けない。
コンセント・プラグ・タップ・コード…配線器具
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あらゆる電気製品を使うのに不可欠な電力を導くための配線器具。これらでも出火事故は起こりうる。
・ホコリや水分などの付着や浸入により、トラッキング現象が生じて発火
・コードなどに無理な力が加わり、断線してショート
・接続可能な最大消費電力を超える電気製品を接続したことで異常発熱
こうした例を読者も見聞きすることが多いだろう。
昨年の12月にNITEが「テレワークで大混雑~プラグ・コードの取り扱いに注意~」と題したリリースの中で示している、火災事故を避けるためのポイントが以下のとおりだ(要約)。
・電源プラグはしっかりと差し込む。プラグや差込口などにホコリが溜まっていないか確認し、あれば掃除する
・テーブルタップやコンセントと電源プラグとの接続部分に、水分や液体などが付着、侵入しないよう注意する
・電源コードを引っ張る、机や椅子の脚で踏むなど、無理な力を加えない
・接続可能な最大消費電力を確認し、これを超えるような使用をしない
・異臭や変色など、事故の予兆を見逃さない
しばらく片付けていないモノだらけの部屋の隅に隠れたコンセント……散らかった部屋の床の上でタコ足配線されているテーブルタップ……。そんな状況が身の周りに存在していないだろうか。ぜひ見回してみてほしい。
小さな電球による発火も 「電気あるところに火の気あり」
ここまでに6つの例をピックアップした。すでにお気づきの読者も多いだろう。これらはすべて「電気」が絡んだものだ。
つまりこういうことだ。「火の気は無くとも、電気あるところに火の気あり」――。
そのため、ほかにもあらゆる電気製品が、実際に思いがけない火災事故の原因になっている。例えば、クローゼットの天井に設置されたダウンライトの熱が、直下に積み上げられていた寝具を燃やした例など、起こる可能性を誰もが想像しにくいものだ。
電気ストーブならば「火の気」としてつねに注意を向けるところ、電球だとなかなかそうはならない。誰もが見落としやすいリスクといえるだろう。また、今年の1月に東京都練馬区で住宅7棟を焼いた大きな火事は、調査の結果、部品が劣化した空気清浄機の発火によるものと見られている。
「火の気は無くとも、電気あるところに火の気あり」。ぜひ肝に銘じておこう。
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賃貸住宅に住む人、賃貸住宅を経営するオーナー、どちらの視点にも立ちながら、それぞれの幸せを考える研究室