天井・壁の「乾式構法」――「ビニルクロス」「織物クロス」「紙クロス」「木質系クロス」…11種の特徴と使い分け
Mie
2020/09/03
イメージ/©︎bialasiewicz・123RF
前回は『湿式構法の材料』の「漆喰」「石膏プラスター」「ドロマイドプラスター」「コンクリート打ち放し」「土材」「砂材」「珪藻土材」「洗い出し」「タイル・天然石材」の9種について説明しました。今回は『乾式構法の材料』についてお話しさせていただきます。
『乾式構法』には「ビニルクロス」「織物クロス」「紙クロス」「木質系クロス」「無機質系クロス」「木質材」「金属材」「ロックウール板」「石膏ボード」「ケイ酸カルシウムスレート板」「ガラス・鏡材」があります。それぞれに特徴があり、風合いも変わるため、どんなイメージの空間づくりをしたいかによって、使い方も変わってきます。
『乾式構法の材料』11種の特徴と違いとは?
「ビニルクロス」は、主原料のポリ塩化ビニルに可塑剤、充填剤、安定剤、発泡剤、難燃剤、着色剤を混合してシート状にした物に紙を裏打ちしてから型押し加工やプリントを施しています。
製造が簡単な量産品から特殊印刷が施された高級品まで種類が幅広く、ビニルという素材の特性上、多様な細工処理が可能なため、プリント柄や大理石調の模様、凹凸のあるエンボス加工など、デザイン、カラー共に豊富です。また、耐久性が高く、水を通さないので、油汚れも拭き掃除で簡単に落とせますし、消臭、抗菌、防カビなどの工夫された機能を備えた商品も次々に開発されています。
「織物クロス」は、天然繊維を使用して製造されていましたが現在ではレーヨン(再生繊維)を使用した製品が主流です。また、レーヨンに麻や綿を混ぜた混紡糸も使用されています。
種類は素材の織り方によって平織り(ブロード生地、羽二重生地など)、綾織り(サージ生地、へリンボーン生地など)、朱子織(サテン生地など)に分けられます。布素材ならではの風合いや凹凸感が美しく、通気性に優れているため、湿気を吸収し、乾燥時には水分を放出してくれます。基本的に自然材料なので、化学物質が不安という方々から人気があります。凹凸のある生地は埃が付きやすいのでハタキ掛けが必要です。
「紙クロス」は特に欧米で採用されることが多いため、パルプを原料とした洋紙タイプの輸入商品も多く、プリント加工やエンボス加工されたものもあります。
このほかにも、コウゾ、ミツマタなどを使った和紙や、ケナフなどの非木材紙を原料とした「特殊紙」、表面がフィルム加工された「合成紙」もあります。これらは織物クロス同様に通気性に優れていて天然素材なので、シックハウス症候群などの健康面でも安心です。
まれに、製品によっては水拭きができないクロスや、ビニル素材が含まれている製品もありますので、確認したい場合には、施工業者に問い合わせください。
「木質系クロス」は大きく分けると、銘木(めいぼく)シートとコルクシートの2種類に分類されます。薄くスライスした天然木やコルクに、紙やアルミを裏打ちして作ります。ナチュラルで温もりのある空間にしたい場合に適しています。
「無機質系クロス」は金属箔、蒸着フィルムを使用したメタリック系、ガラス繊維系、石粒接着壁紙などがあります。不燃性の素材を用いられているため、防火性に優れ、他のクロス材には出せない塗装した壁のような独特のザラザラとした質感が特徴です。
「木質材」は無垢材と合板系に分類されます。無垢材は、有害物質を含まず、いたみにくく、長持ちすることが特徴です。その反面、材料費と工費が高額で、まれに調湿作用に伴う収縮や、ヒビ割れ、反り、曲がり等が発生する可能性もありますので、場所、用途、施工法に応じた適切な適材選びが必要となります。
「合板系」は、木片などを加工し、接着した製品で、材料費が安価で、耐水性、耐熱性などの機能も付加されていて施工も容易という特徴があります。
無垢材と合板系を迷ったら、その空間に最も必要な性能を持つ素材を優先することを基準に考えてみてください。
「金属材」は鉄、アルミ、銅などの加工品や合金があり、不燃材というのが利点ですが、住宅にはあまり使用されていません。
「ロックウール板」は安山岩や玄武岩を溶かして高圧の空気を吹き付け、急速に冷却してから繊維状にした物に接着剤を加えて加圧成型したあと、表面にさまざまな凹凸模様を付けたものです。不燃、難燃、耐水性があり、結露を防げるのもロックウールの特徴です。また、鉱物系になるため、シロアリ被害が少ないこともメリットです。
「石膏ボード」は石膏を紙でサンドイッチ状にした物で仕上げ用(化粧石膏ボード、吸音石膏ボード)か下地用(ラスボード、防水石膏ボードなど)かに分れます。
化粧石膏ボードには、板目やクロス模様を施した製品や、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドを吸着、分解、低減する機能を持ったものもあります。
「ケイ酸カルシウムスレート板」は、ケイ酸カルシウムにセメントと水を混ぜて攪拌し、ロールにかけて脱水した物を板状に加圧成型した製品です。原料の配合の割合によってフレキシブル板、軟質板、平板、ケイ酸カルシウム板に分類されます。不燃材であり、比較的、耐水、断熱効果もあって腐食しないことが特徴です。
「ガラス・鏡材」は装飾性が高く、種類も多いので室内の間仕切りなどにも用いられたりなど、使い方によって、とても豊かな空間を表現することが可能です。例えば鏡材は部屋の広さを実際の面積より広く見せたり、光や灯りの反射を利用して室内を数倍華やかに見せる効果があります。また、透光性のある強化ガラスブロックは透明度やカラーの選択が可能なうえ、装飾性と共に安全性、防音性、断熱性にも優れている製品です。
室内の約60%~70%と、大きな面積を占めるベースカラー(基調色)の役割を担う内装材は、使用用途に適した素材の性能に加えて、そのテクスチャーと施された色彩で豊かな空間を演出することが可能なのです。
この記事を書いた人
MIE色彩研究社代表
自由が丘産能短期大学能率課インテリアコーディネーター課程卒業。産業能率大学情報マネジメント学部卒業。東京商工会議所カラーコーディネーター検定試験認定講師。電子機器製造メーカー、産業機械商社に勤めながら、社会人学生として産業心理学を学び、色彩と人間の意識との深い結びつきに共感。さまざまな社会経験を通して、色彩と人の意識に関わる数多くの実証の基、色彩スペシャリストとして事業を展開。東京都中央区銀座のオフィスではこれまでに培ったパーソナルカラー、空間色彩、商品色彩、カラースクール、色彩セミナーなどを個人、法人を問わず全国で行っている。趣味は街散策。