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【京都で愉しむセカンドライフ】京都の5月――葵祭の見どころ

奥村 彰太郎奥村 彰太郎

2020/05/04

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そもそも「セカンドライフ」とはいつから始まるのか?

「定年退職後の人生」を一般的に「セカンドライフ」と呼んでいる。では、仕事を引退したらセカンドライフが始まるかといえば、そうではない。意識の変化と捉えた方が良いと思っている。

例えば、役職定年や出向で役割や立場が変わり、「自分の経験を後輩に伝えなければ」とか、「歳をとっても続けられる趣味を持とう」とか意識が芽生えた時からセカンドライフが始まると考える。つまり、セカンドライフは突然始まるのではなく、徐々に意識の変化とともの移行する。フェードアウト・フェードインの関係で、決してブツ切れの人生ではない。

私自身、そのことに気づいたのは40代半ば。マネー情報誌の仕事を通じてファイナンシャルプランナー(FP)と接点ができ、知らないことを色々教えてもらった。良い機会だと思いFP資格の講座で学び、「ライフプラン」という考え方に出会い、自分のセカンドライフを真剣に考えるようになった。独立するつもりで資格取得をしたわけではないのだが、FP仲間の勉強会に参加するようになって、様々なロールモデルと接する機会が増え多くの刺激を受けた。結果、50歳でサラリーマンを卒業しフリーランスとして独立、企業のライフプラン研修の講師を始めた。中高年の社員に定年まで、どのように会社に貢献し、定年後どのようにしたいのかを考える機会を提供する役目だ。研修の仕事は、予め年間スケジュールが決まるので、余裕のある時期は国内外の旅行を楽しんできた。その延長で長期滞在の旅に憧れ、ロングステイに相応しい場所を探して京都に行き着いた。3年前に小さなマンションを確保し、時間がある時は京都滞在を楽しんでいる。

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5月の京都――葵祭

京都はなんど訪れても飽きない魅力のある街だ。日本の伝統文化が凝縮している。一年を通じてさまざまな伝統行事が行われている。今年は新型コロナウィルス感染拡大の影響で全ての行事が中止となっているが、これまで京都滞在で印象に残っていることを「セカンドライフを愉しむ」というテーマで紹介しようと思う。

今回は「葵祭」を取り上げる。

葵祭は上賀茂神社・下鴨神社の神事で1500年前に始まったといわれる京都最古の祭である。天皇の使いである勅使が、天皇からの神への御祭文と御供物を持って両神社へ参拝、五穀豊穣と国家安泰を祈願する。勅使を中心に護衛や共の者を従えた大行列が京都御所を出発、都大路を練り歩いて下鴨神社を経由し上賀茂神社に向かう。

正式名は「賀茂祭」と言うそうだが、行列参加者の装束や冠、御所車(牛車)、牛馬に至るまで、全てに双葉葵の葉をつけることから、江戸時代以降「葵祭」と呼ばれるようになったとのこと。


毎年5月15日、京都御所の建礼門前から行列が出発する。平安装束を身に纏った総勢500名を超える大行列がゆっくり進む。丸太町通、河原町通、北大路通など都大路に出ると、この大行列を一目見ようと大勢の見物人たちが沿道にあふれている。まるで平安絵巻を見るような優雅な行事だ。

行列の中で最も注目されるのは女人列の中心となる「斎王代(さいおうだい)」、葵祭のヒロインだ。十二単衣を身に纏い、8人が担ぐ輿に乗る美しい姿に目を奪われる。「斎王」とは賀茂の神社に奉仕した未婚の内親王(天皇の娘)のことで、平安から鎌倉時代にかけて斎王も行列に加わり都人の衆目を集め、枕草子や源氏物語にも取り上げられている。

その後数百年の歳月を経て、昭和31年に再興。斎王の代理を務めることから「斎王代」と呼ばれ、京都に住む民間の未婚女性から選ばれる。令和元年は、安土桃山時代創業のお香専門店の令嬢が第64代の斎王代を務めた。親子や姉妹で斎王代を務めた老舗もある。

葵祭に先立って、前儀となる様々な神事がある。5月3日に下鴨神社では流鏑馬神事(やぶさめしんじ)が、葵祭の道中の無事を祈って行われる。糺の森にある馬場で、公家装束を身に付けた射手が疾走する馬上から弓を引く。400メートルぐらいの直線コースの3カ所に設けられた的は50センチ四方の木板で、矢が的中するとパンと音を立てて飛び散り、観客から拍手と歓声が上がる。

5月4日は、斎王代・女人列御禊神事(にょにんれつみそぎしんじ)が行われる。女人列に参加する50人の女性たちが平安装束を纏い賀茂の神社に訪れる。十二単を身につけた斎王代が神社の小川で手を水に浸して身を清める厳かな儀式である。
5月5日上賀茂神社では賀茂競馬(かもくらべうま)が行われる。参道脇の馬場で二頭の馬が速さを競う迫力ある勇壮な神事だ。織田信長も観戦したと伝えられている。なお、競争する馬の組み合わせを決める儀式として、5月1日に競馬足汰式(くらべうまあしぞろえしき)がある。このように上賀茂神社と下鴨神社の伝統行事は、平安文化の一端に触れる楽しい機会でもある。

今年は、神社の中で行われる神事のみ関係者で行われるようだが、残念ながら恒例の雅な大行列を見ることはできない。感染が収束することを祈って、来年は再開されることを期待したい。

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この記事を書いた人

ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラー

1953年東京生まれ、東京都立大学卒業、株式会社リクルートに入社。進学や住宅の情報誌の営業や企画・人事・総務などの管理職を務め、1995年マネー情報誌『あるじゃん』を創刊。発行人を務めた後、2004 年 ファイナンシャル・プランナー&キャリア・カウンセラーの資格を活かし、“キャリアとお金”のアドバイザーとして独立。企業研修の講師や個別相談を中心に活動中。大学の非常勤講師も務める。東京と京都のデュアルライフを実践中。

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