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『リチャード・ジュエル』 娯楽作品として昇華させた社会派映画(1/2ページ)

兵頭頼明兵頭頼明

2020/05/04

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『リチャード・ジュエル』ブルーレイ&DVDセット(2枚組) Amazon参考価格=3837円

新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に伴い、全国の主要映画館は休館を余儀なくされた。また、各映画配給会社は緊急事態宣言が発令される前から徐々に新作の公開延期措置をとっている。そのため、休館直前の映画館は終了予定作品の上映期間延長や旧作の再上映でしのぐという<緊急事態>に陥っていた。仮に事態が終息し、映画館が営業を再開したとしても、直ちに新作映画が公開されるということにはならないだろう。

日本映画製作者連盟によると、2019年の年間興行収入は2611億8000万円(前年比117.4%)、観客動員は1億9491万人(前年比115.2%)であった。ライブ感覚を求める若い観客層が映画館に戻り始め、今年は年間動員2億人が狙えるところまで来ていたので、映画業界は失望を隠せない。
とにかく今は、外出を自粛し、事態の終息を待つしかない。私たちは様々なシーンでライフスタイルの変更を求められている。映画鑑賞のスタイルも同様だ。映画館で見なきゃ映画じゃないという根っからの映画ファンも、今はその思いを貫くことができない。だが、映画鑑賞の方法はデジタル配信やDVD、ブルーレイといったパッケージまで、多岐にわたっている。新作の劇場公開から配信、パッケージ化に至るまでの時間も短くなった。

これまで本欄では公開直前の劇場映画を紹介してきたが、今回は4月15日にデジタル配信、5月20日にパッケージ発売予定の『リチャード・ジュエル』を紹介させていただく。1月17日に劇場公開されたばかりの〈新作〉である。

1996年7月27日、警備員のリチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、アトランタ五輪会場近くのセンテニアル公園で不審なリュックを発見する。中身は無数の釘が仕込まれたパイプ爆弾だった。彼の通報のおかげで多くの人命が救われ、リチャードは一躍ヒーローになるが、現地の新聞社とテレビ局は彼が犯人ではないかと疑い、実名報道してしまう。

状況は一変し、FBIは徹底した捜査を開始。連日に及ぶ各メディアの過熱報道により、リチャードの人格は貶められ、母ボビィ(キャシー・ベイツ)との静かな生活も脅かされてゆく。もはや大衆は、リチャードが犯人に違いないと考えていた。
困り果てたリチャードは、かつて面識のあった弁護士ワトソン(サム・ロックウェル)に助けを求める。彼の無実を信じ、弁護を引き受けるワトソンであったが、そこにはFBIとマスコミ、そしてアメリカ全国民の抵抗が待ち受けていた――。

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この記事を書いた人

映画評論家

1961年、宮崎県出身。早稲田大学政経学部卒業後、ニッポン放送に入社。日本映画ペンクラブ会員。2006年から映画専門誌『日本映画navi』(産経新聞出版)にコラム「兵頭頼明のこだわり指定席」を連載中。

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