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BOOK Review――この1冊 『ケーキの切れない非行少年たち』 宮口幸治/著(1/2ページ)

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「人を殺してみたかった」。時々、こうした動機で殺人を実行する少年がいるが、行為の重さと動機の軽さがアンバランスで、言いようもない違和感と恐怖にかられる。彼らの考え方は社会のルールからかけ離れ過ぎていて理解しづらく、だからこそ恐ろしい。

しかし、彼らからしてみれば、一般社会の方が「理解できないもの」であるのかもしれない。それは、彼らが未熟さや傲慢さゆえに社会を拒絶しているからではない。そうではなく、認知機能に問題を抱えているから、物事を正しくみることができず、そのことが犯罪などに結びついているのではないか――そう、本書は指摘する。

本書は、精神科医である著者が、問題行動を起こす少年たちと、認知のゆがみとの関係について論じる一冊だ。認知とは、記憶や知覚、注意、言語理解、判断・推論などのいくつかの要素が含まれた知的機能のことで、見る力や聞く力、想像する力などが含まれる。

著者は、精神的・身体的に疾患のある少年を治療しながら、矯正教育を実施する施設である医療少年院での勤務中、ある出来事にショックを受ける。殺人や強盗、強姦などの凶悪犯罪を起こした少年たちが、目の前にある図形を正確に書き写す、ホールケーキを三等分するといった課題をこなせないのだ。

本書には、少年たちが“三等分”したケーキの図がいくつか掲載されているが、これが衝撃的だ。「自分の分を多くしよう」などと考えて恣意的に等分しているわけでも、ふざけているわけでもないことは、著者と少年とのやりとりから分かる。

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この記事を書いた人

ウチコミ!タイムズ「BOOK Review――この1冊」担当編集

ウチコミ!タイムズ 編集部員が「これは!」という本をピックアップ。住まいや不動産に関する本はもちろんのこと、話題の書籍やマニアックなものまで、あらゆるジャンルの本を紹介していきます。今日も、そして明日も、きっといい本に出合えますように。

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