#11 不動産の所有形態
中野亜紀
2019/10/16
イメージ/123RF
ハワイにおける 不動産の所有形態
ハワイの不動産を購入する際、所有者名義と所有形態を決める必要があります。日本では一般的に単独名義か共有名義かの2択だと思いますが、ハワイ不動産の所有形態は4種類あります。所有形態によっては所有者が亡くなった場合、亡くなった方や相続人の国籍を問わず、米国内に財産があればプロベートという相続検認の手続きが必要になってきます。この相続検認の手続きには年単位の時間と、数千ドルから一万ドルを超える費用が掛かると言われています。
1.Tenancy in Severalty(単独所有権)
単独で100%所有権を持つ場合です。個人でも法人でも名義人になれます。所有者が死亡した場合、物件全体が相続検認の対象になります。
2.Tenancy in Common(分割共同所有権)
複数の個人または法人で共同所有する形態です。均等割合である必要はないので、例えば親子で持つ場合、父40%・母40%・子供20%等持ち分割合を設定することができます。各自個別の所有権を保有することになるので、自分の持ち分は自由に譲渡することができます。ただしこの中の所有者の一人が亡くなった場合、例え親子でも亡くなった方の持ち分に対して相続検認の手続きが必要となります。
3.Joint Tenancy(含有所有権)
複数の個人(法人は不可)で平等の所有権利を持つ所有形態です。例えば3人で所有していて1人が亡くなった場合、その持ち分は相続検認の必要がなく、他の2人に平等に譲渡されます。この2人のどちらかがなくなった場合は、最後の1人の単独所有となります。また自分の所有権利は他の所有者の同意を得ることなく自由に第3者に譲渡することができます。
4.Tenancy by the Entirety (夫婦共有所有権)
夫婦もしくは条件を満たす同性・異性のパートナーのみが選択できる所有形態です。同等の権利を持つ不可分所有なので、売却や抵当権の設定をする場合は、必ず両方の承認・署名が必要になります。どちらか亡くなった場合には相続検認を受ける必要なく、残された配偶者の単独所有権となります。
相続検認(プロベート)を 回避する2つの方法
1.修正可能なリビングトラスト(Revocable living trust)名義にする
リビングトラストとは生前にいつでも変更・修正可能な実質遺言書のようなものです。所有者がトラストの設立者となり、このトラストに資産(不動産だけでなく美術品・宝石等を含む動産、株券、債券、証券口座等も可能です)を入れ、設立者が亡くなった後、その資産をどのように管理・分配するかを明記しておきます。その際、不動産の名義もトラスト名義にする必要がありますが、受託者(Trustee)・受益者(Trustor)共に設立者がなることにより、トラスト名義にした財産は個人の財産として引き続き利用できます。ただし、個人の所得税を減税する目的で不動産を所有したい場合や減価償却で節税を考えている場合は、トラスト名義になってしまうため会計士や税理士に事前に相談することをお勧めします。また、プロベートのように長い時間がかかることは回避できますが、費用はこのトラストを弁護士に作成してもらうのに約5,000ドル位~かかると言われています。
2.TODD(Transfer on Death Deed)を登記する
幾つかの州で認められているTODDが、ハワイ州でも2011年から認められるようになりました。これは所有者が亡くなった場合、この物件の名義を誰に移行するかあらかじめ登記をしておく事により、所有者の死亡後、英訳した除籍謄本を登記所に提出すれば、相続検認を受けることなく登記していた名義人に名義変更できます。所有者が亡くなるまで名義は変わらないため、所有者は自由に売却や賃貸でき、税務効果も影響されません。弁護士に依頼しても1物件当たり約2,000ドル前後ですので1,2件所有の場合はトラストより費用も手続きも簡単です。
名義や所有形態は日米両方の法律や税法がかかわってきます。米国側の弁護士や会計士・税理士は不動産業者が紹介することできますが、日本側も必ず自身の弁護士や税理士に相談して決めてください。
この記事を書いた人
東京都出身。2000年8月から一人娘とともにハワイへ移住。2005年ハワイ大学経営学部会計学科卒業後、ハワイの日系不動産会社に勤務しハワイ州不動産免許(後にブローカーライセンス)を取得。2013年、雇用による永住権を取得し、現在は不動産投資・開発・管理・売買・商業物件・バケーションレンタル等扱う現地総合不動産会社“リアルセレクトインターナショナル”で、日本人顧客の居住用不動産売買を担当。https://www.realselectintl.com/