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働き方は改革されたか? 健康は? 日本の10年前と現在(いま)を比べる

朝倉 継道朝倉 継道

2023/10/10

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日本の人口が100人だとすると高齢者は何人?

厚生労働省が「人口100人でみた日本」という面白い資料を公表している。厚生労働白書に添えられているものだ。

日本の人口を100人であると仮定して、雇用、福祉、年金、医療など、各分野の数字をひろい、まとめている。換算の効果により、とてもわかりやすいレポートになっている。

たとえば、現在、日本の人口が100人だとすると、15歳未満は11.6人になる。対して、65歳以上は29.0人。ちょうど2.5倍だ。なおかつ、そのうち半分以上が75歳以上の高齢者となっている(15.5人)。15歳未満の子どもの数は、後期高齢者とよばれるおじいさん、おばあさんよりもさらに少ないわけだ。

そんな100人が目の前に集まったイメージ、頭に浮かんだだろうか?

さて、この「人口100人でみた日本」、実は、過去の年次版と比べてみるのが面白い。わかりやすい資料だけに、時間を経て変わっていく国の姿がとてもよく掴めるのだ。

そこで、この記事では、最新の2023年版(令和5年版)と10年前の2013年版(平成25年版)をピックアップし、その内容のいくつかを見比べていくことにしよう。

働く人が増え、働く時間は減った

まず、最初のテーマは雇用や就労、「労働」についてだ。日本が人口100人の国であると仮定すると、仕事に就いている人と、そのうち雇われている人、自営している人の数はこうなる。

 
2023年版 仕事に就いている人 53.8人
雇われている人 48.3人
自営している人 4.1人
2013年版 仕事に就いている人 49.2人
雇われている人 43.2人
自営している人 4.4人

このとおり、10年前に比べ、23年版では仕事に就いている人の数が1割近く増えている。その内訳を見ると、雇われている人が増加した一方、自営している人は減少したのがわかる。

さらに、数字を挙げていこう。

2023年版 短時間で働いている人(週35時間未満) 18.0人
長時間働いている人(週60時間以上) 2.9人
雇用保険加入者 35.4人
失業者 1.4人
雇用保険受給者 0.3人
2013年版 短時間で働いている人(週35時間未満) 13.6人
長時間働いている人(週60時間以上) 4.7人
雇用保険加入者 30.2人
失業者 2.2人
雇用保険受給者 0.5人

つまり、ざっとこうなる。

  • 「長時間労働する人」…減った(多分いいこと)
  • 「雇用保険に守られている人」…増えた(多分いいこと)
  • 「失業者や、雇用保険を受給せざるをえなくなった人」…減った(いいこと)

この10年ほどで、わが国の雇用・労働環境はおそらくよい方向へ進んだようだ。

増える介護サービスユーザー、老齢年金受給者

福祉・年金分野の数字を見てみよう。

2023年版 介護サービスを受けている人 4.2人
老齢年金の受給者 27.7人
障害者 9.2人
生活保護受給者 1.6人
2013年版 介護サービスを受けている人 3.6人
老齢年金の受給者 22.5人
障害者 6.2人
生活保護受給者 1.6人

このとおり、10年前に比べ、23年版では介護サービスを受けている人が17%近く増えている。老齢年金の受給者はさらに大きく約23%の増加となっている。高齢化の進展がそのまま表れた数字といえるだろう。

一方で、高齢者の増加と関係が深いとされる、障害者や生活保護受給者については、前者は増えているものの、後者は伸びが抑えられている。

国民の4割が「通院者」

健康・医療の分野を見てみよう。

2023年版 病気やけがなどで通院している人 40.4人
2013年版 病気やけがなどで通院している人 37.0人

このとおり、いまの日本では人口の約4割が「通院者」となっている。

さらに、この数字については、元の資料の方が更新されていて(2022年国民生活基礎調査・23年7月公表)その後も伸びている。以下のとおりだ。年代別で区切ったデータ(その年代の人100人に対する人数)も添えておこう。

(22年国民生活基礎調査)
病気やけがなどで通院している人 41.7人
9歳以下 13.1人
10~19歳 13.8人
20~29歳 15.4人
30~39歳 21.1人
40~49歳 28.0人
50~59歳 41.9人
60~69歳 59.0人
70~79歳 70.8人
80歳以上 72.8人

(上記の元データは人口1,000人あたりの数になっているが、「人口100人でみた~」に合わせて数字を整えた)

増える「生活習慣病」を患う人

さらに、気になる数字として、日本の人口を100人と仮定した場合の各生活習慣病の患者数も見ていこう。

2023年版 がん 2.9人
糖尿病 4.6人
高血圧性疾患 12.0人
心疾患 2.4人
脳血管疾患 1.4人
2013年版/td> がん 1.2人
糖尿病 2.1人
高血圧性疾患 7.1人
心疾患 1.3人
脳血管疾患 1.0人

見てのとおり、すべての病気で患者数は増えている。背景として、ここでも高齢化があることは想像可能だが、一方で下記のような数字も挙がっている。

2023年版 健診や人間ドックを受けたことがある20歳以上の人 69.6人
2013年版 健診や人間ドックを受けたことがある20歳以上の人 64.3人

早期発見への意識の高まりも要因にあることを示唆するものとなっている。

少子化は進んでも大学生は減っていない

学生や、学校に通う児童の数は以下のとおりだ。

2023年版 小学生 4.9人
中学生 2.6人
高校生 2.4人
大学生・大学院生 2.3人
2013年版 小学生 5.3人
中学生 2.8人
高校生 2.6人
大学生・大学院生 2.3人

このとおり、小・中・高校生はいずれもこの10年で減少している。しかしながら、大学生・大学院生は減っていない。

背景には大学進学率の増加がある。昨年末に公表された文部科学省の学校基本調査(令和4年度・確定値)によれば、大学進学率は56.6%で、7年連続で過去最高を更新している。

以上、厚労省が公表している「人口100人でみた日本」について、内容をいくつかかいつまんで紹介してみた。実際の資料へのリンクを下記に掲げておこう。

厚生労働省 白書、年次報告書

併せて、文中で触れた2つの資料へのリンクも添えておく。

文部科学省 令和4年度 学校基本調査(確定値)
厚生労働省 2022年 国民生活基礎調査の概況

なお、この記事では「人口100人でみた日本」最新版となる2023年版と10年前の2013年版の比較を行ったが、ほかの年のデータも拾ってみるとさらに面白いかもしれない。

また、こうしたわかりやすい入り口を通して、調査・探索をさらに進めたり、分野の違うデータ間での相関関係を探っていったりするなども、探求心旺盛な読者にはぜひおススメしたいところだ。

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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