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中国が5割を超えて最多。外国人による「重要土地」等の取得

朝倉 継道朝倉 継道

2025/03/21

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国が数字を初めて公表

昨年の末近くのこと。国が、初の報告となるあるデータを公表している。「重要施設周辺等における土地等の取得の状況(令和5年度)について」と題された資料だ。内閣府が指定する「重要土地等」において、外国人や外国系法人がどのくらいの数・面積の土地や建物を取得しているかを示す内容となる。以下、かいつまんで紹介していきたい。

「重要土地等」の意味は?

数字の前に、まずは言葉の意味だ。2021年6月に公布され、翌年9月に全面施行された「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」について、政府自身はこれを略して「重要土地等調査法」と呼んでいる。

そのうえで、「重要土地等」とは、わが国の安全保障上、重要な施設等を囲む一定の範囲に存在する土地や建物のことをいう。この範囲につき、内閣総理大臣が、その所有・利用の状況を見守る「注視区域」さらには「特別注視区域」に指定するかたちがとられている。

指定されうる対象としては、たとえば自衛隊施設の周辺がそれにあたる。加えて、国境に接する離島にも該当箇所は多数存在する。そのほか、原子力関係施設、海上保安庁施設、空港、米軍基地の周辺もこれに含まれる。具体的には「施設の敷地の周囲おおむね1,000メートルの区域内」と、いった指定が行われる。

なお、当該指定を受けた範囲は、分かりやすい地図のかたちでも公開されている。以下に例を挙げるとおりだ。(内閣府「重要土地等調査法に基づく指定区域の閲覧」より)

「都市部の事例(東京近郊)」

「国境離島の事例」

全体の5割以上を占める「中国」

さて、そんな重要土地等における土地や建物の動きについて、昨年12月23日に開かれた国の審議会で、本法令の施行以来初めてとなる報告が行われている。以下、内容の一部を紹介していこう。(第10回土地等利用状況審議会 配布資料4および5より)

種類土地(筆)建物(個)合計(筆個)
23年度までに指定された399区域においての取得状況 10,514 6,348 16,862
上記の内、外国人・外国系法人による取得 174 197 371(総数の2.2%)
外国人・外国系法人による取得においての上位10カ国
取得数(筆個)割合
中国 203 54.7%
韓国 49 13.2%
台湾 46 12.4%
ベトナム 15 4.0%
フィリピン 13 3.5%
米国 10 2.7%
シンガポール 7 1.9%
ニュージーランド 5 1.3%
ブラジル 5 1.3%
タイ 4 1.1%

見てのとおり、中国の数字が203筆個と、2番目の韓国の4倍を超えて突出し、全体の55%近くに及んでいる。以下、内訳を覗いてみる。

中国人・同法人による取得の内訳
種類土地(筆)建物(個)合計(筆個)
中国人・同法人による取得 87 116 203
個人・法人別の内訳
種類土地(筆)建物(個)合計(筆個)
個人による取得 41 77 118
法人による取得 46 39 85

事例の多い「市ヶ谷庁舎」区域

加えて、今回の資料には「該当事例の多い注視区域」として、外国人・外国系法人による土地・建物の取得が多い5つの区域が挙げられている。抜粋していこう。

種類取得数(筆個)内、中国による取得数(筆個)
防衛省市ヶ谷庁舎(東京都) 104 65
補給統制本部(東京都) 39 29
練馬駐屯地(東京都) 20 18
福岡駐屯地・自衛隊福岡病院・春日基地(福岡県) 16 12
松戸支処(陸上自衛隊)(千葉県) 15(内、最多はフィリピン6) 3

このとおり、防衛省市ヶ谷庁舎周辺の区域における数字が特に目立っている。なお、地図上、範囲は以下のとおりだ。

このように、日本の防衛の要といえる庁舎の周りで、外国人、とりわけ中国人や中国法人が多数の土地や建物を買っているとなれば、「すわ、何の企みか」と興奮してしまう人もいるかもしれない。

だが、落ち着こう。防衛省市ヶ谷庁舎周辺といえば、不動産の価値において国内一等地中の一等地といえる場所のひとつだ。お金さえあれば誰でも投資をしたくなるという意味において、日本の不動産への投資が大好きな隣国のお金持ちが、ここにたくさん物件を買っていても、それは何ら不思議なことではない。

また、同じことは、上記に並ぶ防衛省市ヶ谷庁舎区域以外の4つにおいても、大なり小なりいえることだろう。

指定は間もなく584カ所に

重要土地へのこれまでの指定の経緯を見ていこう。

 
施行時期区域数自衛隊施設の数国境離島の数
1回目 23年2月 58 15 25
2回目 23年8月 161 50 58
3回目 24年1月 180 207 0
4回目 24年5月 184 186 2
合計 583    
5回目 25年5月(予定) 1 1 0

(自衛隊施設、国境離島のほかには、米軍、海上保安庁関係、原子力関係のそれぞれ施設および空港がある。数字は割愛)

このとおり、総数は現在583だ。間もなく1カ所が追加され、584区域となる。

なお、以上のうち、今回の報告の対象となったのは、3回目分までの計399区域となる。そのうえで、1回目に指定された58区域においては「外国人・外国系法人による取得は無かった」とのこと。

さらに、残りの分についても「重要施設等の機能を阻害するような土地等の利用の中止等を求める勧告及び命令の実績はない」とのことで、とりあえず、以上399区域までの中には、問題のある事例が見られなかったというのが今回の結論となっている。

「歓迎しつつ監視」のメリハリを

重要土地等調査法は、前述したとおり21年に公布され、翌年全面施行されている。

この法律が生まれた背景には、あからさまに言えば中国がある。近年、中国人や中国資本による日本国内での不動産の取得が、自衛隊施設の近隣などセンシティブなエリアに及ぶケースがあることが、政府内外で問題視されたことが要因として大きい。

もっとも、それらに安全保障上の悪意が存在する例はほとんどないだろう。しかしながら、悪意はないと周りが思い込んでいるような環境にこそ、悪意は容易に潜伏しやすい。その意味で、重要土地等調査法は、われわれ日本人がそうした「思い込み」をしていないことを対外的に常時示すものとして、有効な抑止力となるはずだ。

中国という巨大な経済大国がわが国の隣に生まれたことは、基本として(特に経済上)われわれの幸福としてよい。事実、われわれはこの国への投資や、この国からの投資によって大いに潤っている。

だが、一方で当該隣人は取り扱いが非常に厄介だ。わが国のみならず、周辺国のいずれもが疑い、恐れるとおり、憂慮すべき危険な横顔も備えている。警戒は常に怠れない。

「投資は歓迎しつつも、中身や意図は油断せず注視」

そんな、メリハリを明確にした付き合いこそが、お互いの幸せのためにも重要なこととなるだろう。

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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