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福岡市が「大都会」に昇格 地価LOOKレポート2024年第1四半期

朝倉 継道朝倉 継道

2024/06/19

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全地区が「上昇地区」に

この6月14日、国土交通省が令和6年(2024)第1四半期分(24年1月1日~4月1日)の「地価LOOKレポート」を公表している。

今期、ついに全ての地区が上昇地区となった。うち、住宅系地区では、全地区が上昇地区の状態が8期連続となっている。

なお、地価LOOKレポートの正式名称は「主要都市の高度利用地地価動向報告」という。日本の大都市部地価の動きと方向性を示す国の報告書となる。あらましについては、当記事の最後で改めて紹介したい。

まずは、国内「全地区」における前期、前々期からの推移だ。

推移 地区数 地区数(前期) 地区数(前々期)
上昇 80 79 78
横ばい 0 1 2
下落 0 0 0

前期、唯一上昇地区と評価されていなかった東京都江東区の「青海・台場」地区も、今期は上昇地区に加わった。結果、上記のとおりとなっている。

高上昇率地区6つの現況

上昇地区には、率に応じて3つのレベルがある。「上昇(6%以上)」「同(3%以上6%未満)」、「同(0%超3%未満)」となる。それぞれにおける数は、今期は以下のとおりとなった。

推移 地区数 地区数(前期)
上昇(6%以上) 0 0
上昇(3%以上6%未満) 6 7
上昇(0%超3%未満) 74 72

「6%以上」の上昇地区は見てのとおりゼロ。それに次ぐ「3%以上6%未満」の顔ぶれは、以下のとおりとなっている。

東京都 中央区 銀座中央(商業系地区)
新宿区 歌舞伎町(商業系地区)
中野区 中野駅周辺(商業系地区)
横浜市 西区 みなとみらい(商業系地区)
京都市 下京区 京都駅周辺(商業系地区)
福岡市 中央区 大濠(住宅系地区)

以下、地価LOOKレポートに掲載の不動産鑑定士によるコメントの中から、これら6地区における特徴的な地価上昇の理由、ポイントを抜き出してみよう。

「銀座中央」

  • 訪日外国人観光客による消費が活発な状況
  • 高額商品を扱う商業施設の好調ぶりはこれまでを凌ぐ勢い

「歌舞伎町」

  • 多数の国内若年世代や外国人観光客等が来訪し、活況が続く
  • 店舗賃貸市場では旺盛な需要が継続、空室はほぼ無い

「中野駅周辺」

  • 複数の大規模再開発等が進行または予定。競争力が高まっていくと予想

「みなとみらい」

  • 東京都心と比較してオフィス賃料が割安
  • 外資系グローバル企業の研究拠点、ハイブランドホテル等の開業が続く予定

「京都駅周辺」

  • 観光客の集散拠点であり、強い出店意欲。新規賃料水準は高値安定

「大濠」

  • 福岡市内の優良マンション開発可能エリアでは、用地の需給逼迫が持続中
  • 当地区は、市内有数の優良マンション供給エリア

以上、6地区のあらましだ。

完成近づく「みなとみらい」

上記のうち、「みなとみらい」について話題を添えておこう。目下、この街はいよいよ街づくりの最終段階を迎えようとしている。

広大な埋立地の上に広がる、いわば巨大人工都市であるこの街は、1983年の事業着工によって産声を上げた。現在、わずかに残った街区の開発および開発計画が進行中。おそらくあと5年ほどが経つと、半世紀近くをかけた街が完成する。本年3月現在の進捗状況は以下のとおりだ。

開発済み街区 約94% (以上、利用稼働中の土地は約99%)
暫定利用地 約5%
未利用地 約1%

開発等を管理する一般社団法人横浜みなとみらい21からは、現在までの街づくりの成果として、以下のような数字が公表されている。

進出企業数 約1,930社(23年まで)
就業者数 約13万4000人(23年)
来街者数 約7,730万人(23年)
建設投資による効果 約3兆4968億円(20年度までの累計)
都市稼動による効果 約2兆864億円(20年度年間)

みなとみらいにとって、今後は街の熟成、魅力の維持、力の保持といった課題が重くなっていく。横浜、ひいては首都圏全体にどんなインパクトを与えていくことになるのか、見守っていきたい街のひとつとなる。

大都会の扱いとなった福岡市

ところで、今期の地価LOOKレポートにおいては、対象地区の入れ替えが行われている。(廃止1、新たに対象に設定1)

滋賀県 草津市「南草津駅周辺」(地方圏 住宅系) 廃止
福岡県 福岡市 中央区「天神」(地方圏 商業系) 設定

これによって、福岡市内の対象地区は2つから3つに増えた。なお、地価LOOKレポートにおいて、同一都市内に3つ以上の対象地区を抱えるケースは、現在、以下に限られる。これより、福岡市はいわば「大都会」の扱いとなるわけだ。

地域 対象地区数
さいたま市 3
東京都(区部) 19
横浜市 3
名古屋市 8
京都市 5
大阪市 9
福岡市 3

また、以上によって、住宅系地区の総数は23から22地区へ。商業系地区の総数は57から58地区に変更されている。

ちなみに、「天神」についての不動産鑑定士によるコメントから、ポイントとなるいくつかの内容をピックアップすると、下記のとおりとなる。

  • 近年「天神ビッグバン」により、複数の大規模な建替え等が進行
  • オフィス需要は総じて底堅い
  • 投資適格物件の売却希望価格に下落傾向は見られない
  • 金融機関の融資姿勢も概ね前向き
  • さらなる繁華性の向上が期待される

宇都宮を対象に

上記、対象地区の入れ替えについて触れたが、筆者から、個人的にこの地価LOOKレポートの対象に入れるとよい旨、感じている街がひとつあるので挙げてみたい。

栃木県の宇都宮市だ。

北関東最大の人口(約51万2千人)を抱える産業盛んな大都市で、近年はLRT(ライトレールトランジット・次世代型路面電車システム)の開通が話題になった。また、当該プロジェクトが目下成功を収めていることで、宇都宮自体の都市としてのポテンシャルが、逆に示される結果ともなっている。

さまざまな面で伸びしろを感じさせる街だ。ぜひ推薦しておきたい。

地価LOOKレポートとは?

最後に、地価LOOKレポートとは何か? について添えておこう。

国交省が四半期ごとに公表する「地価LOOKレポート」は、公示地価・路線価・基準地価のいわゆる3大公的地価調査に次ぐ第4の指標として、他の3者にはない頻繁な更新をもって、われわれに日本の土地の価値に関わる方向性を指し示してくれるものだ。

特徴としては、地価の動向を表す9種類の矢印や、多用される表や地図により、内容がとても把握しやすい点が挙げられる。ただし、3大公的地価調査とは異なり、土地の価格そのものが示されるわけではない。地価のトレンドを調査し、分析する内容の報告書となっている。

全国80の調査対象地区全てにつき、不動産鑑定士による具体的なコメントが添えられている。それぞれのエリアの実情を理解するうえでよい助けとなるだろう。

留意すべき点として、地価LOOKレポートは全国の主な大都市部の地価にのみ対象を絞っている。正式名称「主要都市の高度利用地地価動向報告」が示すとおりとなる。

以上、当記事で紹介した今期分の地価LOOKレポートは、下記にてご覧いただける。

地価LOOKレポート 令和6年第1四半期分(24年1月1日~4月1日)

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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