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地価を引っ張る人流、インバウンド、半導体――。2023年「基準地価」

朝倉 継道朝倉 継道

2023/10/01

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余談から――「基準地価」か「地価調査」か?

この9月19日に、国土交通省が2023年の基準地価を公表している。正しくは「令和5年都道府県地価調査」といわれるものだ。この記事では、その中からいくつかトピックを挙げていきたい。

なお、まったくの余談だが、新聞各紙はほとんどがこれを「基準地価」と呼んでいる。のみならず、テレビ局もそうだろう。よって、われわれ一般人も多くがそれに倣っている。

しかしながら、ある有名な一媒体はそうではない。これを「都道府県地価調査」もしくは「地価調査」と呼んでいる。つまり正式名称だ。ちなみにその媒体とはNHK。ある意味、気骨といっていい。

さらに、NHKは公示地価についてもより正確に「地価公示」の呼び名で報じている。オフィシャルな呼称との齟齬が生じないようにしているわけだ。

そこでいうと、筆者はどちらかというとNHKのスタンスに賛成だ。

だが、ここでは世のなかの大勢(たいせい)におもねって、みんなが使う「基準地価」の語を使うことにしたい。(笑)

コロナ去る――経済リブート・地価上昇が明確化

今年の基準地価における主要な変動率を並べてみよう。

まずは、全国平均からだ。全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続の上昇となっている。なおかつ、上昇率も拡大している。なお、下記カッコ内は前年の数字となる。

全国平均
全用途 +1.0%(+0.3%)
住宅地 +0.7%(+0.1%)
商業地 +1.5%(+0.5%)

三大都市圏それぞれの数字は以下のとおりとなる。やはりこちらでも上昇率の拡大が目立つ。

東京圏
全用途 +3.1%(+1.5%)
住宅地 +2.6%(+1.2%)
商業地 +4.3%(+2.0%)
大阪圏
全用途 +1.8%(+0.7%)
住宅地 +1.1%(+0.4%)
商業地 +3.6%(+1.5%)
名古屋圏
全用途 +2.6%(+1.8%)
住宅地 +2.2%(+1.6%)
商業地 +3.4%(+2.3%)

次に、地方圏全体および、その中の地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)、さらに地方四市を除いたその他の地方、それぞれの数字を挙げていこう。

地方圏全体
全用途 +0.3%(▲0.2%)
住宅地 +0.1%(▲0.2%)
商業地 +0.5%(▲0.1%)

上記のとおり、地方圏全体の平均にあっては、全用途、住宅地、商業地のいずれも今回、数字が下落から上昇に転じている。

地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)
全用途 +8.1%(+6.7%)
住宅地 +7.5%(+6.6%)
商業地 +9.0%(+6.9%)

地方四市平均では、上昇率の伸びが見てのとおり著しい。

その他の地方
全用途 0.0%(▲0.4%)
住宅地 ▲0.2%(▲0.5%)
商業地 +0.1%(▲0.5%)

地方四市を除いたその他の地方にあっても、数字はいよいよ下落を脱しつつある。

以上、地価におけるコロナ禍去る――さらにいえば「遠く去る」の印象がつよい。

都心を目指す2つの「人流」

首都圏中心部たる1都3県において、その各都県庁所在地となる東京23区および、さいたま市、千葉市、横浜市の変動率を見てみよう。

まずは住宅地からだ。カッコ内は前年の数字となる。数字は全てプラス=上昇を指す。

住宅地
東京23区 4.2%(2.2%)
さいたま市 2.6%(2.2%)
千葉市 2.6%(1.5%)
横浜市 2.5%(1.3%)

見てのとおり、東京23区における上昇率の拡大が、今回の基準地価では特に目立っている。要因のひとつとして、単純なことながら、現在、東京の人口がかつてないほどの規模にまで膨れ上がっていることを挙げていい。

東京都の発表による各月1日現在の人口推計から数字をひろってみよう。いずれも今年の数字だ。

1月 1403万4861人
(区部971万7480人 市部423万9226人 町村部7万8155人)
5月 1408万5336人
(区部976万4662人 市部424万2866人 町村部7万7808人)
8月 1409万7838人
(区部977万8923人 市部424万1288人 町村部7万7627人)

このとおり、今年1月1日現在の数字と8月1日現在のそれとを比べると、都内全人口においては6万2977人が増加している。そのうち、中心部となる区部の増加が6万1443人と、ほとんどを占めていることがわかる。

なお、5月の数字については、報道で見かけた人もいるにちがいない。「東京都の人口が過去最多になった」として、いくつかのメディアが採り上げたものだ。

その後も、6、7、8月と、東京の人口は都の推計値で過去最高を更新し続けている。転居という骨太なかたちでの人流が、東京中心部へ向け、現在集中している状況が見てとれる。

一方、商業地は以下のとおりだ。(全てプラス。カッコ内の数字は前年)

商業地
東京23区 5.1%(2.2%)
さいたま市 3.7%(2.7%)
千葉市 4.6%(3.0%)
横浜市 5.3%(2.7%)

こちらでは、東京23区に加え、横浜市の上昇率拡大も著しい。そこでいうと、東京・横浜、両者ともにその横顔のひとつは、大都会であるとともに一大観光都市ということになる。

すなわち、背景として色濃く見えてくるのが、インバウンドや国内観光など、いわば「休日人流」の回復といったところになる。

インバウンドがテコ入れするスノーリゾートの地価

今回の基準地価で、「特徴的な地価動向が見られた各地点」として、国交省が挙げているものの中に、北海道富良野市および長野県白馬村の名前がある。いずれも国内有数のスノーリゾートとして知られるエリアだ。

こんな数字となっている。(全てプラス。カッコ内の数字は前年)

富良野(住宅地) 20.3%(9.8%)
白馬村(商業地) 27.3%(13.3%)

なお、白馬村の数字は、商業地地価の上昇率としては全国7位。長野県内では堂々の1位をゲットしている。

ちなみに、その白馬村に次ぐ商業地地価・上昇率長野県内2位は、下記となっている。

野沢温泉村(商業地) 8.5%上昇(▲0.4%)

有名温泉地と国内屈指の規模を誇るスキー場のハイブリッド・エリアといえるこの場所だが、見てのとおり、前年の下落から一転しての急上昇となった。県内では大きな話題となっている。

なお、国内スキー&スノーボード人口の大幅な減少がそもそものベースにある中、これらの地価にテコ入れしているのは、インバウンドとなる。

コロナ禍が去り、急速に回復する訪日外国人客による需要が、これら各地のスノーリゾートにおける経済的期待値を押し上げ、地価を引っ張る状況が見てとれる。

南・北で地価を引き上げている「半導体」

今回の基準地価で、もっともインパクトを放つ話題かもしれない。大手半導体メーカー2社の進出が、進出先周辺の地価を大幅に上昇させている。

まずは、北海道千歳市だ。

空港のまちとして知られるこの町の土地が、住宅地の上昇率全国1~3位、8位、10位、商業地の2~4位、工業地の3位をも埋めている。

ここには「ラピダス」(Rapidus)が進出する。

先端半導体の国産化を目指すとして、政府支援のもとトヨタ自動車はじめ国内8社が出資し、設立された企業となる。今年2月に千歳市への工場設置が発表され、9月1日には起工式が行われた。

一方、九州の熊本県。

菊池市、大津町、および菊陽町の各土地が、商業地の上昇率全国1位および6位、10位、さらに工業地の1位、4位を占め、こちらも話題となっている。

ここには、半導体の受託生産で世界のトップシェアを誇る台湾のTSMC(台湾積体電路製造)が進出する。なお、同社進出による周辺地価の上昇は、3月発表の公示地価でもすでに大きな話題となっていた。24年末までの稼働開始に向け、現在、巨大な工場の建設が進んでいる。

以上、2023年基準地価――令和5年都道府県地価調査について、さらに詳しくは下記リンク先にて資料を確かめられたい。

国土交通省発表資料「」
同 「」

途中に掲げた東京都の推計人口については、下記でご確認いただける。

「」

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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