「賃貸併用住宅」「再建築不可物件」「競売物件」とは?
枦山 剛
2016/02/24
投資家が同居する「賃貸併用住宅」
昔ながらの大家さんは、賃貸アパートの一室を自宅にしてひとつ屋根の下に暮らしていたケースが多く見られました。実はこのケース、いまでも多く存在しています。
このように、同じ建物のなかに投資家(大家さん)が同居している物件を「賃貸併用住宅」と呼んでいます。たとえば、賃貸に出すワンルームが10室と、そのほかに所有者が住む3LDKがあるというような物件がそうです。
この賃貸併用住宅のメリットは、金融機関の要件(その多くは自宅部分が総面積の半分以上)を満たすと、住宅ローンで融資を組めるという点です。住宅ローンは投資用ローンと違い、金利が格段に低くなります。極端な話、投資用ローンでは2~4パーセントの金利が1パーセントを切ってしまうこともあるのです。
また、大家さんが自ら属性の悪い入居者を発見したり、孤独死で事故物件になることを防いだりといったことを、日頃の生活のなかで行なうことができます。
とはいえ、デメリットも存在します。満室時の利回りが12パーセントだとしても、自宅部分が半分だと実質的には利回りは6パーセントになってしまいます。しかも、自分が住むことを前提とすると、職場や学校までの利便性など制約がたくさん出てきます。プラスして、空室リスクのことも考えなければなりません。
また、賃貸ユーザーとして圧倒的なシェアを占める20代30代の若者はプライバシーを重視する傾向が強いので、お大家さんが同じ建物に居住していることを避けることもあり空室の要因になりかねません。
こう考えてくると、金利面では有利な賃貸併用住宅ですが、自分の理想にぴったりはまる物件が出てくる可能性が非常に低いというのが現実です。そして「ここはいい」と思った物件は、駅近などの条件もあり、かなり高額になることが多くなります。
ちなみに、住宅ローンで融資を組み、自宅部分まで賃貸に出してしまった場合、融資した金額が別の用途で使用されているということで金融機関から一括返済などを求められる可能性がありますし、信頼の欠如にもつながるので絶対にやめましょう。
高いリスクがつきまとう「再建築不可物件」「競売物件」
「再建築不可物件」とは、その名の通り現在ある物件を解体した場合、その場所に新たな物件を建てられないという条件つきの物件です。また、隣地が取得できた場合は新たな建物を建てられるというケースも考えられる一方で、解体した瞬間に価値がゼロになるというケースもあります。
とはいえ、再建築付加物件には利回りがとてつもなく高いパターンもあるので、「元を取って再投資に回す」などいろいろな可能性が模索できなくはありません。
そして「競売物件」ですが、最大のデメリットは購入前の見学ができないことです。物件明細書・評価書・現況調査報告書といった紙の資料だけで判断することになります。
写真は一応掲載されていますが、すべての設備を掲載しているわけではないので、いざ購入してみたら修繕・撤去費用がとんでもない額になる可能性があります。実は、物件の不具合に関してアフターサービスがないのも競売物件の特徴なので注意が必要です。
初めて不動産投資用物件を探すときには、再建築不可物件・競売物件のような高い利回りの物件に目が行きがちですが、一癖も二癖もある物件が多いのが実情です。つまり、高いリスクを背負ってでも投資するかどうかということです。このリスクを許容できるかどうかで、購入の判断をしましょう。
この記事を書いた人
中学卒業後に大工、建設業、鉄工業などを経て、97年、若干23歳の時に鉄工業で創業する。大手ゼネコン5次下請けからスタートし、最終的には総合建設業者として大手ゼネコン5社の内2社、準大手ゼネコン5社、財閥系商社、建材メーカー、設計事務所、他数百を超える顧客と直取引するまでになり職人100人前後を抱える。同じころ飲食店、建設業専門経営コンサルタント業などを行なう関連会社3社も経営し、事業の多角化を行なう。 その間、約24年で多くの大型開発工事、投資用マンションとアパート建築、高層ビル建設、公共施設工事、メーカーの建材開発に携わり新施工法や新製品の商品化に貢献し徹底した品質管理と原価構造を学ぶ。しかし、拡大路線が裏目に出て廃業に至る。これを契機に経営者としての人生を徹底的に見つめ直し、顧客と社員と自身の相互利益を探求し学ぶ。 その後、不動産コンサルティングの業務に魅了され転身。 業界の活性化や顧客満足度の向上を阻む建設業界や不動産業界の古い慣習と収益構造に疑問を持ち、既成概念にとらわれない顧客サービスを模索し経営方針を固める。 現在、「経済活動を通し社会の不満、不便、不安を解消する」を経営方針に掲げ、顧客と企業の相互利益がかなうビジネスモデルを手掛け、建設と不動産に関わるすべての業界に変革を呼びかける。 (保有資格) 不動産系 1. 宅地建物取引士 2. 管理業務主任者 不動産コンサル系 1. 不動産コンサルティングマスター (合格後未登録) 2. 住宅建築コーディネーター 3.賃貸不動産経営管理士 4. 既存住宅アドバイザー 建築系 1. 一級建築施工管理技士 2. 監理技術者資格者証 3. 監理技術者講習修了証 4. 建築物石綿含有建材調査者 5. 特殊建築物調査資格者 6 マンション健康診断技術者 7. ブロック塀診断士 8. 建築仕上診断技術者 金融系 1. 貸金業取扱主任者 2. 住宅ローンアドバイザー ほか、損害保険募集人資格4種保有 その他 1. 相続診断士 2. 上級個人情報保護士 ほか、労働安全衛生法による資格16種保有