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賃貸経営をする際の注意点とポイント

大家業のリスクヘッジと、 空室にさせないための取り組み方(2/2ページ)

小川 純小川 純

2022/04/05

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ロンダリング、今は昔 事故物件の明確化

高齢化が進む中で、大家として避けて通れないのが高齢の入居者を受け入れるかどうかということだ。もちろん、セーフティネット住宅として登録している物件であれば、高齢を理由で拒むことはできない。また、高齢者は入居すると引っ越すことが少なく、空室リスクの心配が少なくなるというメリットもある。

しかし、入居者が部屋で亡くなり、事故物件扱いになったらということも気になる。しかし、2021年10月、国土交通省から「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」が公表され、いわゆる事故物件か否か、入居者に対する告知について明確化された。

このガイドラインによると「老衰、持病による病死などの自然死は、居住用不動産で発生することは当然として、原則として、賃貸借取引及び売買取引いずれの場合も、告げなくてもよい」とされた。

ただし、自然死や日常生活の中での不慮の死が発生した場合であっても、死後、長期間発見されずそのままの状態だったため特殊清掃や大規模リフォームなどを行った場合は、買主・借主が契約をするかどうかの判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられるため、告知が必要になる。また、自然死や事故による死亡以外、自殺や殺人などについても告知が必要だ。

しかし、特殊清掃が必要なケースや事件性のある死亡であっても、おおむね3年が経過すれば原則として借主に対してこれを告げなくてもよい、とされた。

数年前に公開、放送された『ルームロンダリング』という映画、テレビドラマでは「一人目の人間を入居させ、よきタイミングで退去させることによって事故物件がクリーンな空き部屋へと変身します」というセリフがあったが、このガイドラインに沿えば、そうは簡単に“クリーン”になるわけではないということになる。

また、加えておくと、「経過した期間や死因に拘わらず、買主・借主から事案の有無について問われた場合」は、調査を通じて判明した点を告げる必要がある。とはいえ、「調査先の売主・貸主・管理業者から不明であると回答されたとき、あるいは無回答のときには、その旨を告げれば足りるものとする」とされる。いずれにしても誠意ある対応が必要になる。

空室、更新時にこそ試される大家の底力

物件を自主管理している賃貸住宅オーナーでなければ、直接、入居者と接するのは賃貸管理会社になる。そのため賃貸管理会社担当者の第一印象はとても重要だ。

とはいえ、賃貸管理会社だけがよければ済むというわけではない。やはり重要なのは、入居希望者が物件にどういった印象を持つかということである。管理会社に任せていれば大家が直接接することはないものの、物件を見れば大家のその部屋に対する思い、ひいては入居希望者、入居者への心配りが垣間見られるということになる。

「当たり前のことですが、1つは入居者に快適に過ごしてもらえる環境を提供できるか、2つ目は入居者のことをいかに気にかけているかということに気づいてもらえるか、ということと思います」と話す齋藤さん。

実際、齋藤さんは、コロナ禍が広がりはじめた2020年4月に賃貸管理会社と相談したうえで、とくに厳しい業種の入居者には1カ月分、会社勤めの入居者には0.5カ月分のクオカードを贈ったという。

「もちろん、見返りなどを求める気持ちはありませんでしたが、クオカードを贈った入居者さんからは、温かい心のこもったお手紙をいただきました。そして、今もだれも退去していません」(齋藤さん)

業者に余分なADを払うよりも、入居者に何某かのものをプレゼントしたほうがテナントリテンションにもつながる。また、空室になったときには、単に清掃するのではなく、ユニットバスであれば、バストイレ別にする工事を行う。さらに、モデルルームのようなホームステージングをして、入居後のイメージができるようにするなど、常に物件のブラッシュアップ、イメージアップを欠かさない。


ちょっとしたアイテムや家具をあしらうだけで部屋のイメージは劇的に変わる 写真はイメージ/©followtheflow・123RF

これらは入居希望者には「ここに住みたいという」気持ちになってもらうような取り組みだ。

「不動産投資では物件購入後、賃貸管理を任せてしまえば、空室にならない限り、基本的に大家としてやることはありません。言い換えれば、大家は自分の時間を割くことはありません。ですから、大家が何かできるのは『空室になった時』『更新の時』で、ずっと住んでもらえるようなことをする大家業の力の見せどころではないでしょうか。そして、賃貸住宅経営では、大家と入居者、管理会社がそれぞれプラスになることをすることが、空室にならず、長く継続して入居してもらえる秘訣ではないかと私は考えています」(齋藤さん)

大家としての取り組み方を、再チェックしてみてはどうだろうか。

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この記事を書いた人

編集者・ライター

週刊、月刊誌の編集記者、出版社勤務を経てフリーランスに。経済・事件・ビジネス、またファイナンシャルプランナーの知識を生かし、年金や保険など幅広いジャンルで編集ライターとして雑誌などでの執筆活動、出版プロデュースなどを行っている。

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