ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

サブリースで新たなトラブル続出 個人オーナーのサブリース契約が解約できない(2/2ページ)

大谷 昭二大谷 昭二

2021/12/01

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

「借地借家法」と契約の自由

以上のように借地借家法や消費者契約法では定められていますが、民法の起草者は賃貸借を「契約」として、賃貸借契約によって生ずる賃借権を「債権」として構成しました。しかし、これによって二つの問題が立法直後から表面化しました。

一つは、「契約自由の原則」との関係です。

民法の原則である契約自由の原則によれば、当事者は賃貸借契約の内容(条件)を自由に決めることができるはずです。しかし、この原則を不動産賃貸借にそのまま適用すると、経済的に優位な立場にある賃貸人が自己に有利な条件で契約を締結することを賃借人に強要し、貸してもらうという不利な立場にある賃借人は、それをのまざるをえないような状態でなされた契約でも有効なものとなってしまいます。

例えば、「賃貸人が明渡しを請求した時は、借家人は、即時に建物を明け渡さなければならない」という条項さえも有効なので、借家人は賃貸人からの明け渡し請求に怯えながら借家で暮らさなければなりません。

このように不動産賃貸借における契約自由の原則は賃貸人だけの自由であり、賃借人には契約の自由はないといっても過言ではありません。

そこで賃貸人と賃借人との関係の差を埋めるために、国家が賃貸借契約の内容に強制的に介入する必要がでてきています。民法上こうした劣悪な地位にある不動産賃借人を保護する目的でいくつかの特別法が制定されました。

まず、明治42年に「建物保護法」が制定され、ついで大正10年に「借地法」「借家法」が制定され、その後、昭和16年の改正をはじめとして、たびたび改正されましたが、平成3年に形式も内容も抜本的に改正された「借地借家法」が制定されました。

なお、民法と借地借家法は一般法と特別法との関係に立っているので、「特別法は一般法に優先する」との原則により、不動産賃貸借については、まず特別法である借地借家法が優先的に適用され、借地借家法に規定されていない事項についてのみ民法が適用されます。

サブリース会社は法律で守られる弱者なのか?

とはいえ、サブリース(マスターリース)契約では、果たして賃貸人と賃借人(サブリース会社)との間に賃貸人の経済的な優位性があるでしょうか。この問題を解決するには、マスターリースとサブリースは分けて考える必要があります。

つまり、マスターリースでは、賃借人はほとんどが上場企業であり、果たして借地借家法で保護すべき劣悪な地位と言えるのかということです。

一方、なかには法人という場合もありますが、多くの場合、区分所有の賃貸人はほぼ個人であり、賃借人であるサブリース会社に比べて弱い立場になります。

サブリース会社が契約解除に応じない理由

では、なぜ業者は解約に応じないのでしょうか。

サブリース(マスターリース)の解約に抵抗する業者が出現した裏には、マンションの売買の増加によって管理物件が奪い合いとなっているという背景があるからです。言い換えれば、業者が一定の利益を確保するため解約に応じないわけで、借地借家法の立法趣旨である「生活者保護」とは合っていないのです。

つまり、これらのサブリース会社は賃貸事業受託者であって、本来の借地借家法で保護される対象ではないと考えられます。サブリース(マスターリース)契約は純然たる商取引であって、一定の利益を得るための業者です。ここは区別されるべきです。

何度も指摘しますが、借地借家法の趣旨は劣悪な地位にある不動産賃借人の生活を保護する目的として立法されているのです。むしろ、保護されるべきは、あくまで転貸借人として、その部屋で日々生活を営む入居者なのです。 

【関連記事】
「スルガ銀行不正融資」から見えてきた不動産投資で失敗する人、しない人
スルガ銀行不正融資に見る 賃貸住宅「建築基準法違反」の実態
マンション外壁タイル剥離が続発!――その原因とどこまで施工会社に責任を求められるか

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事

1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。

ページのトップへ

ウチコミ!