ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――分譲マンション投資のデメリットに対する見解について
横山 顕吾
2021/10/20
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自分の住みたいと思う物件を提供する——。そんな想いを持ち、広島県を中心に分譲マンションを区分で購入、賃貸として貸し出す賃貸住宅オーナーの横山顕吾さん。「ひろしま大家の会」の代表でもあり、自身を「分譲マンションコレクター」と称し、入居者に素敵な分譲ライフを提供するため日々尽力しているという。本連載は、横山さんが考える不動産投資、賃貸経営、オーナーのあるべき姿などをお届けしていきます。
前回までのおさらい
今までは、私が分譲マンションで投資しているメリットをお伝えしました。最終回となる今回は「分譲マンションの3つのデメリット」について私の見解をお伝えします。
分譲マンションの“管理”の仕方
デメリットの1つ目は「分譲マンションの場合、管理費や修繕積立金が毎月かかるので、経費率が高く、収益(キャッシュフロー)が少なくなる」です。
確かに、賃貸アパート・マンションの管理費は家賃の5%程度が相場です。修繕積立金はありません。
分譲マンションの管理費は、物件や広さによって異なりますが、5000円~1万円になります。賃貸物件で管理費を5%で換算すると、家賃が10万~20万円に匹敵します。
では、なぜ賃貸アパート・マンションの管理費が「家賃の5%」という料金なのでしょうか? これは管理業務の内容が、家賃の徴収や滞納督促がメインだからです。クレジットカードの決済手数料より少し高い割合ですから、お分かりいただけると思います。つまり管理費とは「家賃を管理」するための経費です。
一方、分譲マンションの管理費は、管理員さんの人件費や設備メンテナンスなどを行うための経費です。つまり「建物を管理」するための経費です。
ということで、分譲マンションの管理費は高いからダメなのではなく、建物を管理するための費用なのですから、賃貸アパート・マンションの管理費より高くて当たり前なのです。むしろ、賃貸アパート・マンションが建物管理にお金をかけてないことの方が問題と私は思うのです。
分譲マンションの大規模修繕
2つ目は、修繕積立金についてです。
修繕積立金は、将来の大規模修繕を行うために毎月積み立てるものです。大規模修繕は分譲マンションだけでなく賃貸アパート・マンションも必ず実施します。にもかかわらず、賃貸アパート・マンションに修繕積立金を積み立てる仕組みがないことの方が問題だと私は考えています。毎月相当額の修繕積立金を積み立てている方がよっぽど健全なのです。
以上から、建物管理費・修繕積立金という経費がかかるのは、建物を維持していくために必要なものであって、逆に「建物管理や修繕積立金がない方が心配」というのが、私の見解になります。
次に「分譲マンションの場合、自分の意思だけでは大規模修繕、建て替えなどはもちろん、さまざまな事案を自分で決めることができない」というデメリットについてです。
確かに、マンションの一区分所有者に過ぎない場合は、決定権としては総会の議決権行使しかなく、さまざまな事案について自分で決めることも発注することもできません。しかし、一般的にさまざまなトラブルについては、分譲マンション管理会社(自分の部屋の賃貸管理を委託している賃貸管理会社ではありません)が対応してくれます。
例えば、漏水事故などの緊急対応では、マンション管理組合と分譲マンション管理会社との間で締結している管理委託契約書にて「緊急に行う業務については、管理組合の承認を受けないで実施することができる。ただし管理会社は、速やかに書面をもってその業務内容及びその実施に要した費用を管理組合に通知しなければならない」とあります。
緊急事態でない場合は、判断を下すのはマンションの役員会(理事会)になります。理事会には年1回開催される通常総会で予算が与えられます。管理会社や住民からの提案などがあり、予算の範囲内であれば、理事会の決議で対応が可能です。
急ぐ事案や理事会で判断しなくてもよい軽微な事案であれば、理事長だけの決済で対応できます。支出を伴う事案の場合は、理事長に加え会計担当理事の承認が必要な場合が多く、理事長独断の抑止力になります。そして、理事長判断で行ったことについては、次回の理事会で報告をします。
そして任期の1年が経過すると、理事会で行った事業や会計については毎年1回の通常総会で全組合員(所有者)に報告します。
この理事会の役員は、区分所有者でなければなれません。区分所有者の大多数は、投資用マンションでなければ「一生に一度のマイホーム」として実際に住んでおり、資産を維持したい気持ちが強い方が多いです。また、社会的地位の高い方や弁護士などの難関国家資格者も居住している可能性が高く、いろんな視点からの意見が出てくることもあります。分譲マンションは、そういった十人十色の住民の意見を取り入れることができます。
住民自治がうまく機能しているマンションであれば、賃貸アパート・マンションのようにワンオーナーで決めるより、住民間で多くの意見が出てくる方が優れた結論が出る可能性が高いです。
賃貸経営者として優れた判断力を有している方であれば、確かに自分の意見がすぐに通らないことはマイナスかもしれません。しかし、管理を賃貸管理会社に丸投げしているのならば、オーナー一人で判断するより多くの人の意見を聞いたうえで決断する方が、正しい結論になるように私は思います。
理事会の役員が信用できる方々であれば、自ら関与しなくても「よい管理」をしてくれます。もしそうでない理事会であったり、自分の意見を通したいと考えたりするなら、自ら役員に立候補すればいいです。
以上より「分譲マンションは自分だけで決断できない」といわれるデメリットについては、確かに「迅速性がない」というマイナス面はありますが、「住民のさまざまな意見から判断できる」というプラス面の方が大きいというのが私の見解です。
区分マンションは儲からない?
3つ目のデメリットは「区分マンションは儲からない」についてです。
確かに、新築ワンルームマンション投資の多くは「節税」が販売の謳い文句になっています。給与所得から源泉徴収された税金が、不動産所得と損益通算されることで戻ってくるので節税になるという理屈です。
言い方を変えますと「サラリーマンで稼いだ儲けを新築ワンルームマンションの赤字で減らすことにより支払う税金を少なくします」ということです。
新築ワンルームマンションが儲かるのであれば税金はより増えます。損益通算で税金が少なくなるということは、不動産所得では「儲かってない」ということです。
しかし、こういった「儲からない区分」は買わなければいいだけです。「儲かる区分」だけを購入すればいいのです。
一棟物といわれる賃貸アパート・マンションも、販売されているすべてが儲かる物件ではありません。一棟物も儲かる物件より儲からない物件の方が多いです。そのためセンミツ(いい物件は1000件に3件ほどしかない)と言われるのです。
もし本当に「儲かる区分」がないなら、私がサラリーマンをしながら6年間で9つ金融機関から融資を受け、売却することなしに30戸以上区分を購入することはできなかったはずです。「儲かる区分」が存在するから、9つの金融機関がフルローン以上の融資をしてくれたのです。
つまり「儲かる区分がない」のではなく、「儲かる区分を見つけられていない」あるいは、「儲かるように購入することができない」ということなのです。一棟物も区分も違いはありません。
次に、「儲かる」ついての考え方です。
一棟物の場合、一度の購入で、複数戸を取得することになります。したがって、家賃収入も一度に複数戸からいただけます。
一方、区分の場合は一戸のみの購入ですから、家賃収入も一つだけです。そのため「区分は儲からない」と考えられなくはありません。
しかし複数回、区分を購入すれば、この問題は解消していきます。区分マンションを6回購入すれば、6戸の一棟物と同じ収入数になります。
ここで、6戸の一棟物を購入するのと、区分を6回購入する場合を比較してみたいと思います。
一棟物の場合、6戸でいくら儲かるかという検討を1回します。区分の場合は、一戸ずついくら儲かるかという検討を6回します。
この差がとても大きいのです。つまり一棟物を購入する場合、多くの人は、一棟全体で検討していて、一戸ずつの個別検討をしていない場合が多いのです。6戸まとめるから儲かるように感じるだけで、一戸ずつの儲け額は決して一棟物も大きくありません。一棟物も各部屋で間取り、景観、階数など同じものは一つもありません。修繕費もかかる部屋とかかならい部屋がでてきます。マイナスの部屋が出ても一棟全体の収支の中にまぎれてしまいやすいです。
一方、区分の場合は、一戸ずつ収支が明確になるため、利益を確保しようとする意識が働きやすいです。
したがって、一戸ずつ確実に利益を得る区分を複数所有することは、同じ戸数の一棟物に比して、安定的な収入を得やすいということになります。
以上より「区分は儲からない」ではなく、一戸の儲かる額が小さいだけで、それは一棟物も同じ。むしろ、一戸ずつの利益を確保しやすい区分を複数戸所有することが、リスク分散にもなり、安定的な利益をもたらすというのが私の見解です。
今回のコラムで連載終了となります。今までお読みいただき、ありがとうございました!
【過去の記事】
第1話 区分マンションは儲からない? そんなことはありません
第2話 ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由
第3話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由②
第4話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由③
第5話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由④
この記事を書いた人
マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人
1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。