ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

ファミリー向け分譲マンションに特化した不動産投資法――ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由④

横山 顕吾横山 顕吾

2021/09/17

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

イメージ/©️ bankrx・123RF

自分の住みたいと思う物件を提供する――。そんな想いを持ち、広島県を中心に分譲マンションを区分で購入、賃貸として貸し出す賃貸住宅オーナーの横山顕吾さん。「ひろしま大家の会」の代表でもあり、自身を「分譲マンションコレクター」と称し、入居者に素敵な分譲ライフを提供するため日々尽力しているという。本連載は、横山さんが考える不動産投資、賃貸経営、オーナーのあるべき姿などをお届けしていきます。

前回までのおさらい

このコラムでは、なぜ私がファミリー向け分譲マンション不動産投資をしているのかの理由をお伝えしています。

端的にお伝えすると、ファミリー向け分譲マンション投資はほかの不動産投資と比較して断トツの「低リスクNo.1!」と判断したからです。前回までに8つの具体的な理由をお伝えしました。

ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由
ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由②
ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由③

今回は、私が思っている残り全てのメリットをお伝えします。

管理に手間がかからない

メリットの9番目は、「管理が楽」ということです。

一棟物の場合は、建物全体を管理する必要がありますが、分譲マンションの場合、共用部分については、管理組合と分譲マンション管理会社が管理を行います。オーナーは専有部分(所有する部屋)を管理するだけです。

この分譲マンションでいう専有部分ですが、範囲は内法(うちのり)といって、壁面の内側ということになっています。したがって、コンクリートの壁や天井は共用部分です。玄関扉やバルコニーに出るサッシなども共用部分です。したがって、オーナーは建物を所有しているというより室内空間を所有していると言っても過言ではありません。

つまり、建物の劣化や設備の劣化のほとんどは共用部分になるのです。ということで、事故や大きな修繕のほとんどは共用部分で起こることになります。

また、入居者間のトラブルなどの対応や意思決定も管理組合で行われます。総会で承認された役員が理事会を開き、マンション内で発生した問題を解決していきます。

したがって、オーナー個人が決断する機会はとても少なくなります。管理に手間がかからないことは、時間的に制約のあるサラリーマン大家にとっては大きな魅力となります。

区分マンションは流動性が高い

メリットの10番目は、「流動性が高い」ということです。

一棟物と比較して、分譲マンションは1戸しかないため物件価格が安くなります。したがって、一棟物を購入できる人より分譲マンションを購入できる人は多くなります。ということは流動性(現金化できる可能性)も高くなるということです。分譲マンションを多く対応している不動産業者なら、即時に現金購入してくれる場合もあります。

一棟物の場合は、購入希望者は投資家のみですが、分譲マンションの方が投資家に加えて、自身が住もうとする実需層も対象になります。したがって、流動性が高く、一棟物より早く現金化できる可能性が高いです。

物件価格が分かりやすい

メリットの11番目は、「物件価格が分かりやすい」ということです。

一棟物の場合、近隣エリアに同様の土地面積・構造・規模(建物面積、間取や世帯数)・築年数・設備の物件がない可能性が高いです。オーナーが有する土地面積で最大の利益を生みだそうとするので、立地も異なれば、面積も異なりますので、近隣に同じ規模の一棟物はほとんどありません。

一方、分譲マンションの場合は、同一マンション内に同じ間取りの部屋が複数あります。大体、縦の列、例えば201号室~1501号室は2LDK、202号室~1502号室は3LDKというように、同じ敷地で同じ建物面積で同じ間取りの部屋が複数あります。

また、近隣の分譲マンションにも似たような間取りの部屋がある可能性が高いです。マンションデベロッパーで多少の設計の違いはありますが、人気ある間取りは似通っているからです。

したがって、自分が所有している同規模の物件が過去いくらで売買契約が成立しているのか、今どのくらいで売却できるのかということが分かりやすいです。

一棟物を設定する場合は、積算法や収益還元法で行われることが多いですが、分譲マンションの場合は、それに加えて取引事例法に基づいて売却金額を設定することがしやすいです。

重要なリスク分散

メリットの12番目は「リスクを分散しやすい」ということです。

分譲マンションは一棟物と比較して少額なため、エリアを分けて複数所有することも実践しやすいです。エリアを分けて所有できれば、自然災害や火災などが起こっても、その影響はその部屋のみで済みます。一棟物の場合は、建物全体の被害をすべて受け入れる必要があります。

自殺や他殺のような事件が発生した場合や、企業や大学の移転があった場合も同様で、一棟物であれば家賃下落が全室に影響しますが、分譲マンションの場合は所有している部屋のみです。

一室ずつエリアを変えて分譲マンションを所有することでリスク分散できるのも賃貸経営の安全性を高めます。

修繕積立金制度

メリットの13番目は、「大規模修繕費用の心配が少ない」ということです。

分譲マンションは、建築された日から修繕積立金を貯めるという仕組みがあります。一棟物で修繕積立金制度を採用している物件はほとんど聞いたことがありません。したがって、一棟物と比べて大規模修繕費の心配が少ないです。

しかも、中古区分マンションを購入した場合は、今まで貯まっている修繕積立金を引継ぐことができます。前のオーナーが払ってくれた修繕積立金は、前のオーナーに返金されることもありません。

一方、中古一棟物を購入する場合は、仮に前所有者が修繕積立金を貯めていたとしても、それを引き継ぐことはありません。築10年でも築20年でも、その経年劣化をゼロから受け入れる必要があり、すべての修繕対応が必要になります。

さらに、分譲マンションの場合、緊急事態が起こり大きな工事が必要になっても組合の修繕積立金で対応します。仮に工事代が足りない場合でも、全所有者で平等に負担しますので、個人的な負担額は少なくなります。一棟物の場合は、工事代の全てを所有者で負担するリスクが常にあります。

30年間の長期修繕計画

メリットの14番目は、「長期修繕計画がある」ということです。

通常の分譲マンション管理がされていれば、長期修繕計画はあります。長期修繕計画とは、今後30年間で予測される修繕内容を一覧にしたものです。30年間の工事代金総合計が出ますので、逆算して、月々各所有者から徴収する修繕積立金額を算定するための根拠となる資料です。

一方、一棟物に長期修繕計画を備えている物件はほとんどありません。したがって、躯体や設備をどのくらいの期間でどういうメンテナンスをしていくのかが分かりません。

重要な修繕履歴

メリットの15番目は、「修繕履歴がある」ということです。

通常の分譲マンション管理がされていれば、修繕履歴もあります。これは管理組合が毎年決算報告をする必要性があることから、自動的に修繕履歴を作れるからです。管理費会計の修繕費項目と修繕積立金会計の支出項目を一覧にすれば、その年の修繕履歴になります。

分譲マンションでは、毎年の決算報告は総会での一番重要な議案項目ですので、これが作成できている限り、建築された日から今までの修繕履歴は残っていきます。この修繕履歴があることで、今後行わなければならない工事は何か、計画より長持ちしているのか、そうではないのかも明確化されます。そういった記録を自動的に残せる仕組みがあることも分譲マンションの大きなメリットです。

私は、長期修繕計画と修繕履歴を基にした修繕積立金の収納制度が、賃貸アパート・マンションにも浸透していくことが、建物の健全性を高めるのに必要だと思っています。しかし、現状の賃貸管理の仕組みでは、これらの仕組みを構築するのは難しいです。

以上より、私は一棟物を所有するには不安がいっぱいありすぎると考えます。

次回からは、分譲マンションのデメリットについての私の考え方をお伝えさせていただきます。

【過去の記事】
第1話 区分マンションは儲からない? そんなことはありません
第2話 ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由
第3話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由②
第4話ファミリー向け分譲マンションで不動産投資をする理由③

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

マンション管理士、管理業務主任者、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、賃貸経営アドバイザー、防火管理者、損害保険募集人

1970年岡山市生まれ。筑波大学体育専門学群卒業後、転職を繰り返し、6つ目の勤務先として分譲マンション管理会社に就職。2008年から一般財団法人日本不動産コニュニティー(J-REC)広島支部長を務め、12年に投資用分譲マンション2戸を取得。17年に区分マンション所有に特化した専業家主へ転身。趣味はリフォーム、ラグビー観戦。

ページのトップへ

ウチコミ!