ウチコミ!タイムズ

賃貸経営・不動産・住まいのWEBマガジン

賃貸経営・不動産投資、困ったときのフクマルさん ♯2 〜真実を知るためには、大家さん自身で学ぶことが必要〜

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

イメージ/©️Piotr Adamowicz・123RF

不動産と建築の業界に携わって今年で33年目。「住まいは女性が一番知っている」「女性の大家さんには堂々と賃貸経営に携わってもらいたい」「安心安全な不動産取引をしてもらいたい」、このような思いから、女性大家の会「白ゆり大家の会」を2016年に立ち上げました。

不動産業界で生き残れるかどうかは、知識があるかないかで変わる、と私は思っています。私の経験談、そして、昨年の民法改正などについて、私独自の見解も交えながら6回にわたってお届けさせていただきます。

「よく分からなかった」では済まされない

2回目の今回は、昨年から始まった改正で、大家さんにとって大変な事件に巻き込まれる可能性があることからお話します。

2020年6月12日、賃貸住宅管理業者の登録制及びサブリース関連規制等について定めた「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」(賃貸住宅管理業法)が成立し、同年6月19日に公布されました。同法のうち、サブリース関連規制部分は20年12月15日に施行となっています。

そして大家さんには、賃貸住宅管理業法第3章「特定賃貸借契約の適正化のための措置等」、第28条「誇大広告の禁止」に関する法令にご注意いただきたいのです。これに違反した場合は、サブリース業者または勧誘者に対する罰則について、6カ月以下の懲役若しくは 50 万円以下の罰金、またはこれを併科に問われることがあります。

サブリース会社や、そこに勤務する営業のなかには、いい加減で詐欺まがいなセールストークをする場合も多いので、大家さんがよく分からないまま誘われて一緒に勧誘してしまうことで、事件に巻き込まれる可能性があるのです。

大家さんにとって古きよき時代は終わった

高度成長期の時代は、賃貸物件が不足し、入居付けだけを行う町の不動産屋さんが活躍していました。その時代はほとんど自主管理であり、賃貸経営は家族で行うことが当たり前でしたが、人口増加、地価高騰、相続対策といったこともあり、賃貸物件は“建てれば埋まる”という大家さんにとって古きよき時代でした。ところがバブル崩壊後の1992年、新生産緑地法によって急激に建てられた賃貸物件に、大家さんの高齢化や相続などに伴う兼業化が増え、また、管理内容の高度化などにより、管理業者に管理委託を依頼する大家さんが増加しました。自主管理の大家さんたちが、管理を業者に任せることで片手間経営となり、その後“サブリース”が登場したのです。今は逆転して、サブリースを含む委託管理が80%と言われています。

こうして、賃貸経営に管理業者の介在が増加するなか、大家さんあるいは入居者さんと管理業者とのトラブルが増加することで、もっと楽な賃貸経営としてサブリースの契約が増えましたが、家賃保証などの契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化となっていったのです。

厳しい罰則で大家さんが「勧誘者」に…

では、今回の法律はどういった内容なのでしょうか。

第1弾として、20年12月15日施行された、賃貸住宅管理業法の「サブリース規制措置」では、マスターリース契約の締結を勧める建設業者や不動産業者、特定のサブリース業者から勧誘の依頼を受けた大家さんが「勧誘者」に該当することを明確化しています。

では、なぜ大家さんが法令違反で罰則を受けることになるのか、疑問に思うわれる方もいると思います。

大家さんがサブリース業者などから、勧誘の対価として紹介料などの金銭を受け取り、契約を結ぶことを勧めたり、契約の内容や条件などを説明したりする場合、また体験談を用いて説明すると勧誘者となり第28条違反になってしまうのです。

“どこ”とは書きませんが……、最近、テレビCMも流れなくなった企業など、たくさんのサブリース会社が真実を説明していないことが多く、誤認という解釈のもといままで見過ごされていましたが、新しい法律によって今までにない厳しい罰則ができたのです。

「誇大広告」「虚偽広告」と言われる内容とは

次に、「誇大広告」「虚偽広告」と言われるものを具体的にご説明します。

・契約期間中であっても業者から解約することが可能なのに、その旨を記載せずに、「30 年一括借り上げ」「契約期間中、借り上げ続けます」「建物がある限り借り続けます」といった表示をしている。

・実際には、毎月大家さんから一定の費用を徴収して、原状回復費用に充てているにも関わらず「原状回復費負担なし」といった表示をしている。

・実際には、大規模修繕など一部の修繕費は大家さんが負担するにも関わらず「修繕費負担なし」といった表示をしている。 

・維持保全の費用について、一定の上限額を超えると大家さん負担になるにも関わらず、「維持保全費用ゼロ」や「業界随一のお得なシステムです」といった表示をしている。

・契約を解除する場合は、月額家賃の数カ月分を支払う必要があるにも関わらず、その旨を記載せずに「いつでも借り上げ契約は解除できます」と表示している。

・24時間入居者対応と説明されたが、実際にはサブリース業者が実施しない維持保全の業務を実施するかのような表示をしていて、休日や深夜は受付業務のみ、または全く対応されないにも関わらず「弊社では入居者専用フリーダイヤルコールセンターを設け入居者様に万が一のトラブルも24時間対応しスピーディーに解決します」といった表示をしている。

一部の例ですが、このような内容を告知しているとなれば、業者はもちろん、行政処分としては指示処分で業者名が公表、そして、業務停止命令などになります。大家さんも親切のつもりが、勧誘とは知らずに自分の事例を話したことでも、そのサブリース会社が反する行為をしたら、勧誘者違反になってしまうので要注意なのです。

勧誘者として、不動産業者や建築業者そして大家さんという話ですが、私的には、銀行が融資を出したいがため勧誘していたし、税理士さんも仕事を取るために勧誘していることをよく見かけたのですが、皆さんはいかがですか。

また、大家さんのなかには「知らなかった」という言い訳をされる方もいますが、知らないということはないとは思います。自分だけ巻き込まれるのは嫌という、“共食い大家さん”になっていませんか。

登録するだけでよかった「賃貸住宅管理業者登録」の廃止

そして、第2弾として、先日21年6月15日に施行されたのが、「賃貸住宅管理業者の登録制度」です。今までは、(無意味な!)登録するだけでよかった「賃貸住宅管理業者登録規程等」を廃止したのです。

賃貸住宅管理業とは……、ということが不明確なこともあったので、それを明確化し、大家さんから委託を受け、「賃貸住宅の維持保全」・「賃貸住宅の家賃等の金銭管理」・「入居者対応」などを行う事業として明記されました。

こちらは業者における登録義務や業務に対する規制で、
(1)管理戸数の規模「200戸」以上は賃貸住宅管理業の登録義務
(2)賃貸住宅管理業者の業務では、業務管理者の配置、事務所毎に賃貸住宅管理の知識・経験等を有する者の配置(義務付け)

その他、大家さんに家賃減額があること、リスクなどの内容を明確化することや、説明すべき内容を、契約締結前に重要事項説明すること。また、契約期間中に解約となる場合があることや、家賃収入は将来にわたって確実に保証ではないこと、徴収して原状回復費用に充てているにも関わらず、「原状回復費負担なし」等々の、説明責任が義務化されたのです。

何が真実なのかは大家さん自身で学び見極めること

今回ビックリしたのは、国土交通省・消費者庁・金融庁が法制度のために作ったリーフレットをみても、消費者保護が優先されています。

電話または訪問により勧誘する行為を、大家さんなどに承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く“迷惑に思われるような時間、午後9時から午前8時”までの時間帯に行うことや、大家さんなどを困惑させる行為(勤務時間中であることを知りながら執拗な勧誘を行ったり、面会を強要して困惑させること)、こういった行為が違反になるのです。

万が一サブリース契約をされる場合は、クーリングオフはないので、重要な判断材料となる重要事項の説明から契約締結までに、約1週間程度の十分な期間をおくことがお勧めします。

国交省の「賃貸住宅経営において特に注意したいポイント」リーフレットには、賃貸経営をお考えの方だけでなく、賃貸住宅に入居される方へも説明書きがありますので、一読いただければと思います。

昔、地主さんに「サブリース契約は気をつけて!」と言ったら、このように言い返されました。

「(当時)大河ドラマに出ている西田敏行さんが出演しているCMの会社が騙すわけないやろぉー!」

これなんですよねぇ……。当たり前のことを公然と話したら嫌われるのです。何が真実なのかは、大家さん自身で学ぶことが必要ですね。

【関連記事】
〜お金や地位、名誉は他人に奪われることもあるが、「学んだことは奪われない」〜

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
  • Hatebu

この記事を書いた人

株式会社アトリエハウス 代表取締役・「白ゆり大家の会」主宰

保育士、製菓会社、建売会社のCADオペレーター・現場審査立会い業務を経て賃貸仲介会社へ転職。その後、地元老舗不動産会社から事業拡大のためヘッドハンティングされ、宅地開発、建売事業を行いながら賃貸管理会社・建設会社を設立。全営業責任者となり、建築営業において全国NO.1の営業表彰を受ける。2014年、アトリエハウスを設立し独立。不動産コンサルタント・講師業として活躍。不動産会社、建築会社や賃貸住宅オーナー向けに講習会も行う不動産のエキスパート。 資格:ファイナンシャル・プラニング技能士2級、宅地建物取引士、2級建築施工管理技士、賃貸不動産管理士、住宅ローンアドバイザー、不動産キャリアパーソン、損害保険代理店資格、占術鑑定士(四柱推命・気学<九星・方位・家相学>)、保育士・幼稚園2級教諭。

ページのトップへ

ウチコミ!