空き家処分は不動産会社だけでなく、広がるネット活用と流通について
大谷 昭二
2020/04/11
イメージ/©︎123RF
空き家848万9000戸、その種類とは?
近年、地域における人口減少や既存の住宅・建築物の老朽化、社会的ニーズの変化及び産業構造の変化等に伴い、居住その他の使用がなされていないことが常態である住宅が年々増加しています。
平成30年住宅・土地統計調査(総務省)によりますと、総住宅数を居住世帯の有無別にみると、居住世帯のある住宅は5361万6千戸(総住宅数に占める割合85.9%)、居住世帯のない住宅は879万1千戸(同14.1%)となっています。
居住世帯のない住宅のうち、空き家は 848万9千戸と、2013年と比べ、29万3千戸(3.6%)増となっています。また、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と、2013年から0.1ポイント上昇し、過去最高となっています。
空き家は大きく4つの種類に分類ができます。
■賃貸用の住宅
432万7000戸(総住宅数に占める割合=6.9%)
新築・中古に関わらず、賃貸のために空き家となっている住宅のことで、空き家全体の50.9%を占めています。
■売却用の住宅
29万3000戸(同0.5%)
新築か中古かに関わらず、売却することを目的として空き家になっている住宅のことで、同集計によると、空き家全体の3.5%の割合です。
■二次的住宅
38万1000戸(同0.6%)
週末や休暇の際に避暑や避寒、保養などを目的として使われる別荘や、残業などで遅くなったときに寝泊まりする家のような、普段は人が住んでいない住宅のこと。空き家全体の4.5%の割合です。
■その他の住宅
348万7000戸(同5.6%)
賃貸用の住宅、売却用の住宅、二次的住宅以外の人が住んでいない住宅のことで、転勤や入院など、何らかの理由によって長期不在になっている住宅や、取り壊すことになっている住宅を指します。空き家全体の41.1%を占めていています。
空き家の再生活用は、相続にまつわって起きることが多く、相続後、長年放置した物件(土地、建物)をいざ、売却しようとしても、さまざまな理由から不動産会社、不動産店が取り扱ってくれないことが多く、その原因は、必ずしも空き家が老朽化からという理由だけとは限りません。修繕が必要な空き家であったとしても、趣味やリフォームして居住することなどから、空き家を探している人は存在します。特に近時は、移住がブームで地方の古民家に人気が出ています。
従って、扱ってもらえない原因を探り、解決できれば、多少壊れた空き家であっても売却することは不可能ではありません。一方、不動産会社や不動産店の側もそれぞれの空き家がもつ原因を探り、問題を洗い出し解決方法をクライアントに提案することで、流通も可能になると思います。
相続、生前贈与された空き家の処分方法
(1)親の判断能力に問題がない場合
この場合も、親から直接空き家の処分を依頼される場合と、子に譲渡して処分を子に任せる方法が考えられます。
■親から直接空き家の処分を依頼された場合
この場合は、不動産売却の代理権を得る必要があります。代理権を得た場合、契約は代理人である子が締結するが、契約の効果は代理権を与えた本人、すなわち親に生じます。
■親から購入、または生前贈与を受ける場合
この場合は、子が一旦不動産の所有権を取得し、自分の所有物として不動産を処分することになります。
(2)親の判断能力が著しく低下している場合(制限行為能力者)
■成年後見制度
現代社会において、意思能力の喪失や低下で問題となるのが認知症です。認知症は法律上の言葉ではありませんが、事理を認識する力や記憶力、判断する力に障害が起きている状態を示す総称として用いられています。
親が強度の認知症により事理弁識能力を欠く状況にある場合に財産を処分するためには、成年後見人制度を利用することになります。財産管理能力がないのであれば、早めに家庭裁判所に成年後見の申立てを行い、成年後見人による財産管理することが望ましい方法です。親族が後見人になることもありますが、親族間に対立があれば第三者的立場の弁護士等が後見人に選任されることが多くなります。
■家族信託制度
認知症に備える事前の対策方法として「家族信託」があります。家族信託は、財産を管理する方法の一つで、自分の資産の管理や処分を家族に任せることをいいます。
資産を家族に預ける立場の「委託者」、財産を預かって管理・運用・処分する権利を持つ「受託者」、そしてその財産から利益を受ける「受益者」で構成されており、受託者は委託者の信託目的に従って受益者のために財産を管理し運用することになります。後見制度は、認知症などで判断能力が低下した人を法律的に支援するための制度であるのに対して、家族信託は、認知症になる前の財産管理制度として最近注目されています。
■任意後見制度
任意後見制度は、将来自分の判断能力が不十分な状況になった際に援助してくれる人を前もって指定して、援助してもらう内容も具体的に決めておく制度です。
この制度は、あらかじめ後見人になってくれる人と契約を結んでおく必要があります。その際、契約書は公正証書にしておかなければなりません。そして、本人の判断能力が不十分になった時は、契約をした人(=任意後見人)が、本人を援助することになります。なお、この契約は家庭裁判所に申立があって任意後見監督人が選任された時から効力を生じます。
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この記事を書いた人
NPO法人日本住宅性能検査協会理事長、一般社団法人空き家流通促進機構会長 元仲裁ADR法学会理事
1948年広島県生まれ。住宅をめぐるトラブル解決を図るNPO法人日本住宅性能検査協会を2004年に設立。サブリース契約、敷金・保証金など契約問題や被害者団体からの相談を受け、関係官庁や関連企業との交渉、話し合いなどを行っている。