知っておきたい補償と保険金の仕組み
平野 敦之
2018/08/22
火災保険にかかるリスク
住まい(店舗なども含む)や所有している物件にかかるリスクは実にさまざまです。火災保険の内容の前にその物件にかかるリスクの確認は火災保険の設計の第一歩です。
・賃貸物件の賃借人
自分で所有する家財への損害、家主及び近隣への損害賠償
・持ち家の所有者
所有する建物や家財への損害(店舗などの場合は商品や設備什器等)、近隣等への損害賠償
・賃貸アパート、マンション、ビルオーナー
所有する建物の損害、物件を借りている賃借人やテナント・近隣等への損害賠償、事故などの際の空室リスク
一般的に建物や家財などはモノの補償、第三者へは与えた損害に対する補償、家賃などはその他の補償という区分けになります。
火災保険は都道府県別による所在地、建物の構造(3区分)、その用途(住宅や店舗等)などによって保険料が変わります。
例えば自宅兼店舗で中華料理店を営んでいたが、お店を閉鎖して用途が住宅のみになった場合は、用途変更の手続きが必要です。このケースでは中華料理店という職業割増がなくなるため火災保険料は安くなります。逆に店舗の開業など事業を営む場合は、住宅用の火災保険ではカバーされないことがあります。
火災保険の主な補償内容
火災保険という名称ですが、実際には火災以外にガス爆発や他の自然災害(地震等除く)、水漏れなどさまざまなものが補償されます。具体的には次の補償をします。
・火災、落雷、破裂・爆発
・風災・雹災・雪災
・水災
・建物外部からの物体の落下・飛来・衝突、水濡れ、騒じょう・集団行動等に伴う暴力行為
・盗難
・不測かつ突発的な事故(破損・汚損)
現在の火災保険はこれらの補償を組み合わせてプランを作ったり、補償を選んで契約します。一番上の火災、落雷、破裂、爆発などはほとんどの火災保険で必須の補償です。これらを原因とする直接的な損害について修理費や再築費用を支払うものを損害保険金といいます。火災保険で支払われる保険金の種類には大きく次の2つがあります。
・損害保険金
・費用保険金
例えば火事で住宅が燃えてしまった場合、ボヤくらいなら元の状態に戻すための修理費が全焼したら契約金額を上限にその金額などが支払われるのが今の一般的な火災保険です。2,000万円の木造一戸建ての住宅が全焼して再築費2,000万円保険金が支払われれば家の立て直しはできますが、その他の費用までカバーできません。
具体的には火事の場合なら、焼け残った残存物の撤去には別に費用がかかります。こうした建物などへの直接の損害と別に費用を支払うのが費用保険金です。
火災保険も自由化されているので、商品内容自体は一律ではなくなっています。費用保険金の内容の違い、補償を自分で選んだり、自己負担する免責金額を設定など色々自分で選べることが増えています。
住まいの周辺のリスクを確認する
火災保険の補償の前にチェックしておきたいのが、ハザードマップの確認です。近年自然災害が増えていますが、地域によって過去どのような災害があって、どの程度のリスクが想定されるのかを知っておくことが大切です。
国土交通省 ハザードマップポータルサイト http://disaportal.gsi.go.jp/
地震災害なら地盤の確認、盗難ならその地域の治安など確認できることはやっておきましょう。
火災保険を安くするには
火災保険料は全国的に値上げ傾向です。2015年10月には保険料率の改定とともに、契約期間が最長10年になりました。
新築で住まいを買ったら住宅ローンの期間に合わせて火災保険を契約するのが常識でしたが、こうした状況も変わってきています。
・ハザードマップの確認、必要な補償、必要でない補償をチェックする
・少額の損害については免責金額(自己負担額)の設定を検討する
・契約期間はなるべく長期に、保険料は一括払いする(難しければ長期年払い)
細かいことは色々ありますが、まずは上記の3点は意識してください。
火災保険・地震保険の相次ぐ保険料改定に備えるために
火災保険・地震保険はこのところ数年に渡って改定(全国平均ではすべて値上げ)が続いています。負担を軽減するために地震保険の改定を3回に分けたことで改定が細かく行われている状況です。今後まだ以下の改定が見込まれています。
・2019年1月 地震保険改定
・2019年半ば~2020年頃 火災保険改定見込み
・2021年頃 地震保険改定見込み
2019年1月の地震保険改定は確定ですが、下の2つは日時がはっきり発表されていません。相次ぐ改定に備えて考えておくこと、することは次の3つです。
・改定情報を小まめにキャッチすること
・自分の保険契約がいつ満期で、改定がどう影響するか試算
・値上げになるなら、改定前に今の契約を解約して火災保険を見直すことを検討
火災保険は加入したらほったらかしにしておけばいい状況ではなくなっています。改定は頻繁に行われていますので、状況をみて柔軟な対応をすることが求められます。
この記事を書いた人
平野FP事務所 代表 CFP ®認定者、1級FP技能士、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
東京都出身。証券会社、損害保険会社を経て実務経験を積んだ後に1998年から独立して活動をはじめてFP歴20年以上。また相談業務を受けながら、中小企業の支援にも力を入れている。行政機関や大学での非常勤講師、企業研修などセミナーや講演も多数。メディアでの執筆記事も多く、WEBに公開されているマネー記事は550本以上。2016年にお金の情報メディア「Mylife Money Online」の運営を開始。主な著書に「いまから始める確定拠出年金投資(自由国民社)」がある。誰もが自分らしい人生を安心して豊かに過ごすため、「お金の当たり前を、当たり前に。」をモットーに活動中。「Mylife Money Online」のURLはコチラ→ http://mylifemoney.jp