中古マンションを購入するメリット・デメリットは? 不動産のプロが徹底解説!
菅 正秀
2017/11/02
人気の中古マンション! そのメリット・デメリットは?
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いま、マイホームの選択肢として、中古マンションの人気が高まっていることをご存知ですか? 実は、首都圏では、新築マンションの成約数より中古マンションの成約数が上回っているほどです。
不動産経済研究所が発表した2016年の首都圏の新築マンションの供給戸数は3万5772戸、一方、2016年の首都圏での中古マンションの成約数は、東日本レインズのデータによると、3万7198件となっており、中古マンションの契約数が新築マンションの供給戸数をも上回っていることになります。
「絶対に新築がいい!」「中古を自分好みにカスタマイズしたい」など、考え方は人それぞれだと思いますが、中古派はもちろん、あなたが新築派であっても、ぜひ中古マンションも選択肢として考えてみることをおすすめします。
そのための検討材料として、ここでは中古マンションを購入するメリット・デメリットを客観的に考えてみましょう。
中古マンションの5つのメリット
まず、中古マンションのメリットです。中古マンションのメリットとしては、次の5つがあげられます。
<1>価格が安い
<2>気に入った地域・場所で選ぶことができる
<3>新築に比べて立地がいいものが多い
<4>実物を見学できる
<5>リフォームして、自分の好みの住環境がつくれる
それぞれのメリットについて、具体的に見ていきましょう。
<メリット1>価格が安い
まず、新築物件より基本的に「安い」ということがあげられます。
購入にあたっては、まず予算を考えることでしょう。物件価格が安いということは、同じ予算で50m2が70m2にといったように、ひとまわり広い部屋を選べたり、2LDKが3LDKにと、間取りを一部屋増やしたりといったことが可能になります。
また、新築と違って、売り主との相対取引なので価格の交渉もできることも、中古マンションの優位性と言えるでしょう。
もうひとつ注目したいのは、「価値の目減り」が少ないという点です。一般的に、マンションは、新築した翌年から急激に価格が下がりますが、築15年くらいから、それ以降の値下がりは緩やかになります。
つまり、購入価格と何年か暮らしてから売却したときの価格差が小さいという事です。たとえば、購入後に予期しない転勤などで不要になった場合でも、値落ち額が新築物件よりも少なくてすむのです。
<メリット2>気に入った地域・場所で選ぶことができる
これが、中古マンション最大のメリットではないかと私は考えています。
住みたいエリアを限定した場合には、新築に比べ物件数が多くなります。あなたの住まいの近くで、いま何件の新築分譲が売り出されているでしょうか?
たとえば、人気のエリアになればなるほど、新たにマンションを建てる土地を確保するだけでも大変ですから、それほど多くの件数があるとは思えません。
一方、中古マンションの場合は、ちょっと物件検索サイトで検索しても数十件ヒットするのではないでしょうか?
あなたの住みたい地域で、予算に合わせて最適な物件をチョイスできるのが中古マンションのいいところなのです。
<メリット3>新築に比べて立地がいいものが多い
不動産と言われる通り、土地は動かすことができません。また新たに造ることもできません。いい土地は早い者勝ちで埋まってしまいます。
ですから、人気のある住宅地ほど、築年数の古いマンションは新築や築浅の物件に比べて、駅前の便利な立地や地盤のいいエリアにあるものが多く、よい立地条件を備えているという特徴があります。
立地条件は、将来売却することがあるときに物件の価格に大きく影響します。
<メリット4>実物を見学できる
新築の場合、まだ完成していない物件を、モデルルームを見て購入するパターンがほとんどです。そのため、いざ内見してみたら、「思っていたのと違う!」というケースが実際にあります。
これに対して、中古マンションの場合は、当然、すでに完成しているので、どのような部屋なのか、自分の目で見て確かめることができます。
マンションの管理状況、窓から見える眺望や通風、採光など、気になるポイントを購入前に確認できます。
自分の目で見て、納得して購入できるのが、中古マンションのいいところなのです。
<メリット5>リフォームして、自分の好みの住環境がつくれる
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新築マンションは、最新の設備や機能、サービスがついていて、豪華なパンフレットを見ていると心を奪われますよね。でも、それらのものは、あなたにとって本当に必要なものなのでしょうか?
最近は、中古マンションを安く買って、自分なりに部屋を一新してしまうリノベーション志向の人もいらっしゃいます。
マンションは、構造上、現状の内装、間取りをすべて取り払って、まったく新しい部屋にリボーンさせることも可能です。もちろん、そこまでしなくても、設備を自分好みに変える、内装や間取りを変更することで、あなたの思い通りの部屋をつくる楽しみもあります。
銀行も購入資金にプラスして、リフォーム資金も一括して住宅ローンとして融資してくれるようになりました。
中古マンションにはデメリットもある
ここまで、中古マンションのメリットを見てきましたが、もちろんいいことばかりではありません。デメリットも押さえておきましょう。
中古マンションのデメリットとしては、次の3つがあげられます。
<1>購入時諸経費は新築物件よりも高額
<2>好きな区画を選べない
<3>マンション自体の劣化や共用部・住宅設備導入に制限がある
それぞれについて見ていきましょう。
<デメリット1>購入時の諸費用は新築物件よりも高額
新築物件に比べると、購入時の諸費用が高額になる傾向があります。これにはふたつの要因があります。
ひとつは、「住宅促進税制」が使えるかという要因です。
国は住宅を購入する人に向けて、さまざまな税金の特例を設けています。新築マンションにはすべて適用されますが、中古マンションには物件によって一部使えないものもあります。
ただし、基本的には築25年以内の物件なら新築と同様の特例を受けることができます。
もうひとつは、仲介手数料がかかるかどうかの問題です。
一般に新築物件は、事業主が販売会社に「代理」という方法で分譲されています。これは宅地建物取引業法に規定があり、売り主が販売を担当する不動産会社に買い主分の手数料も負担する契約です。そのため、新築マンションを購入する人は、見た目上は、手数料を負担することなく購入できます。
ただし、実際は手数料を負担していると考えておいたほうがいいでしょう。「見た目上は」とご説明したのは、広告宣伝やモデルルームの費用と同様に、仲介手数料に相当する金額が、マンションの価格に原価として折り込みずみだからです。
<デメリット2>好きな区画を選べない
中古マンションは、所有者の都合で売りに出されるものです。そのため、あなたが気に入ったマンションがあって、「このマンションの部屋を購入したい」と考えても、そのマンションに何件の売り物件があるかはわかりません。
1件しかないこともありますし、0件の場合もあります。上の階より下の階のほうが価格が高いということもあります。そして、引き渡してもらえるまで1年以上かかるものもあります。
これは、その物件ごとに売主さんの事情が異なるからです。
なかには「〇〇マンションで、大阪城の見える28階以上の東向き」と決めて、何年も売り物件が出るのを待っていらっしゃる人もいます。
<3>マンション自体の劣化や共用部・住宅設備導入に制限がある
部屋のなかをどれだけリフォーム・リノベーションしても、マンションの外観や共用部は、あなただけの意思で変えることはできません。また、マンションに設置されているのが旧型機械式駐車場であれば、高さ制限などがあります。
新築マンションは、ペット飼育可の物件が増加傾向にありますが、中古マンションではペット不可の可能性が高いです。フルフラット(バリアフリー)やオール電化、お風呂の追い炊き機能などで制限があったり、構造上、導入できない設備があったりということも。
これらは購入前にしっかり確認しておきましょう。
中古マンションと新築マンション、どっちがおすすめ?
新築マンションには新築マンションのよさがあり、中古マンションには中古マンションのよさがあります。
ですが、もし、ほしいマンションのイメージが固まっていて、いろいろ比べてみて、納得のうえ購入したいのであれば、中古マンションをおすすめします。
中古マンションの物件数の多さや、リフォーム・リノベーションの自由度を考えると、理想の生活により近づけるのは、中古マンションのほうに軍配が上がりそうです。
想像してみてください。
あなたの住みたい地域で、住んでみたいマンションを選び、自分の必要な設備に入れ替え、自分の使い勝手に合わせたリフォームして、そこで憧れのライフスタイルを満喫する…。
なんだかワクワクしてきませんか?
中古マンションを買うならここに注意
さて、あなたが実際に中古マンション探しを始める前に、注意しておいてほしいことお伝えしてこのコラムを締めくくりましょう。注意点は4点あります。
<注意点1>マンションの管理規約・使用細則を確認する
新築・中古にかかわらず、マンションにはそのマンションだけに適用されるローカルルールがあります。これは、多数の人間が互いに快適に暮らすためには必須になります。
専有部分の用途、ゴミ出し、リフォーム、駐車場・駐輪場の使い方、ペット飼育や楽器の使用ルール等、細かく決まっていますので把握しておきましょう。
<注意2>耐震性のチェック
建物を建築するためには、一定の耐震基準をクリアしなければなりません。建築されたのがいつかによって、その耐震基準が違っています。
昭和56年 6月1日以降に建築着手した物件には、新しい耐震基準が適用されています。購入を検討する中古マンションが新耐震基準に適合しているのかどうか確認しましょう。
<3>築年数には注意が必要
先ほどお話しした税金の特例が使えるのかどうかにかかわってきますので、築年数が25年以内かどうかをチェックしましょう。
ただ、築年数が25年を超えていても、資格のある建築士による耐震基準適合性証明を取るか、ホームインスペクションを使えば、税金の特例を使える物件もありますので、確認してみましょう。
<4>マンションの管理会社による「重要事項に係る調査報告書」もチェック
マンション管理の委託を受けている管理会社は、「重要事項に係る調査報告書」というものを作成しています。これには、マンション全体の修繕履歴、長期修繕計画の有無、修繕積立金等の値上げの予定の有無、管理人の勤務形態などなど、マンションの管理運営関することが詳しく書かれています。
これらは、宅地建物取引業法による重要事項説明の説明事項になっていますので、仲介をする不動産会社や営業担当者に問い合わせれば教えてもらえます。
新築マンションのメリットである「設備が最新式である」、「購入時の諸費用が少なくてすむ」といったことは、購入時には大きな魅力として映るでしょう。ですが、そうした目新しさや、そのときだけの「お得感」だけにとらわれず、「これからあなたが暮らす住まい」として価値があるのかしっかり検討してください。
この記事を書いた人
株式会社フェリーズディア 取締役チーフコンサルタント
宅地建物取引士、マンション管理士、住宅ローンアドバイザー、福祉住環境コーディネーター。 1958年、大阪府大阪市生まれ。創価大学法学部卒業。大学卒業後、弁護士事務所に勤務、宅地建物取引士資格取得を契機に大手不動産会社に転じる。法律知識を活用し中古住宅、中古マンションの仲介営業を担当。 その後、顧客と一緒にモノづくりをするために、地域中小建設会社に移り、注文住宅・賃貸マンションの受注営業を担当。大手建設会社との競合が激しい中、操業以後に流入してきた近隣住民のクレームにお悩みの経営者さんに、不動産会社時代の人脈を使い工場の移転先を斡旋した上で、その跡地に93戸の賃貸マンション建設の受注をするなど、15年間で約32億円の受注する実績をあげる。現在は、建築にも明るい不動産コンサルタントとして、不動産会社のエスクロウ業務(契約管理)・新人社員指導等を行なっている。 一生に一度の買い物ともいえる住宅の購入をアシストできる人材を育成し、業界の健全な発展に貢献すべく活動中。