40代でのマンション購入は遅い!? 40代で家を買うメリット・デメリットは?
牧野寿和
2017/08/15
(c) moonrise – Fotolia
40代でマンションを購入する人が増えている!?
40代といえば、まだまだ収入が増えていく可能性はありますが、同時に家計支出も増えていく時期でもあります。子どもがいれば、教育費の支出が増える、もしくは、その準備を進めなければいけない時期です。
サラリーマンの方であれば、定年退職や再雇用、リタイアといった自身の今後のライフプランを考えつつ、老後資金の準備も進めるべき時期でもあります。さらには子どもの独立、高齢になる親の介護や同居の可能性も視野に入ってきます。
つまり、40代は大きな変化が起こり始める時期であり、その先のライフプランと家計収支について、20代、30代だったとき以上に真剣に考えなければいけない時期と言えるでしょう。
そのためか、ファイナンシャル・プランナーである私のところにも
「生涯、賃貸住宅に住むつもりだったけれど、老後を自分の家でゆったりと過ごしたいと考えるようになった」
「転勤が多い職場で社宅や官舎に住んでいたけれど、役職が上がって転勤もなくなったので住宅を購入したい」
といった理由から、40代の人が多く相談に来られるようになっています。
晩婚化も一因なのでしょうか、実際に、40代でマンションを購入する方は統計的にも増えているようです(総務省統計局の「家計調査(貯蓄・負債編)」のデータや金融機関へのヒアリングから分析しています)。
40代でマンションを購入するメリットは?
それでは、まず40代でマンションを購入するメリットとデメリットについて考えてみましょう。
まず、メリットとしては次のようなことがあげられます。
(1)資金計画が立てやすくなる
40代になれば、勤め先の給与や公的年金額を含めた、生涯のおおよその家計支出が把握できます。
そのため、住居費にいくらかけられるのか、その金額も計算できるので、マンション価格や住宅ローン融資額をいくらにするかといった資金計画が立てやすくなります。
(2)ライフプランの不確定要素が減る
家族構成が固まり、子どもの独立のタイミングなどの変化も見通せるので、ライフプランの不確定要素が少なくなります。そのため、住み替えを考えずに間取りや立地などを選ぶことができます。
(3)頭金の用意ができる
十分な頭金を用意することができます。また、もともと住宅購入を考えていない場合でも、貯蓄をしていれば、それを頭金にあてることができます。
その分、住宅ローンの借入額を少なくする、返済期間も短くすることで、利息負担額を軽減できます。
(4)より高い価格の物件が購入可能になる
一概には言えないところはありますが、20代、30代に比べて収入が増えることで、借入れ可能額が大きくなります。
また、自己資金を増やすこともできるので、より高い価格の物件を購入できるようになり、資産価値の高いマンションを購入することが可能になります。
こうして見てみると、40代でマンションを購入する最大のメリットは、頭金の準備ができることでしょう。収入が増えて借入れ可能な金額も大きくなるので、資産価値の高い物件を購入することができると言えます。
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最大のデメリットは返済期間の短さ
次に、デメリットについても見てみましょう。
(1)返済期間が短くなる
収入の見込める現役中に住宅ローンを完済しようとすると、返済期間が短くなります。そのため、希望する金額の融資を受けられないことも考えられます。
自己資金が多くあればいいですが、そうでない場合は、購入する物件の価格を下げないと、手元の現金が少なくなってしまい、家計を圧迫することが懸念されます。
(2)老後の生活に支障が出る可能性も
住宅ローンの返済期間を長くしてしまうと、退職後も返済が続くことになります。そのため、老後の生活に支障をきたし、最悪の場合、老後破綻ということにもなりかねません。
(3)教育費と住宅ローンの支払いが重なる
子どもの教育費が多くかかる時期と、住宅ローンの返済が重なる可能性があります。住宅ローン返済の負担が大きいと、教育費の支払いや準備に支障をきたすこともあり得ます。
(4)親の介護負担から返済に支障も
親も高齢になるため、親の介護負担が発生するケースも出てきます。その負担から、住宅ローンの返済に支障をきたすことも考えられます。
40代でマンションを購入することの最大のデメリットは、返済期間の短さと言えるでしょう。また、収入が増えることで借入れ可能額が増えることは、メリットとデメリットの両面があります。
借りることができるからと借入れ金額を増やして、定年退職までの限られた期間で返済するとなると毎月の返済額が大きくなってしまいますし、逆に返済期間を長くすると老後の生活に支障をきたすことになりかねません。
老後資金や教育資金のことを考えながら、返済期間と借入額については慎重に検討する必要があるでしょう。
「30代で購入」と「40代で購入」を比較してみると?
ここで、30歳のとき、40歳のときにマンションを購入した場合について、返済額などをシミュレーションして比較してみましょう。
購入するマンションの物件価格や住宅ローン金利は同じ条件とします。
(条件)
●マンション価格:3000万円(住宅ローンの諸経費、物件購入の諸経費は考慮しません)
●金利:年利1.0% 全期間固定金利(通常は、返済期間が短いほうが金利は低くなりますが、比較のため同率の金利としました)
●完済時の年齢:60歳
●頭金:40歳で購入する場合のみ500万円(30歳から毎月約42000円、10年間で500万円を積立てたとします)
頭金を貯める間には家賃も発生する
上の表の通り、30歳で購入した場合の総費用は約4223万円、40歳で購入した場合は約3259万円と、総費用に964万円差が出ることがわかります。
しかし、ここで見落としてはいけないことがあります。それは、マンションを購入するまでに生じる家賃負担です。
40歳でマンション購入した場合、30歳で購入する場合よりも10年間、余分に家賃を負担しなければなりません。
そこで、先ほど確認した差額の964万円を10年間分の家賃と考えると、1カ月当たり約8万円(964万円÷10年÷12カ月)になります。つまり、10年間、家賃8万円の賃貸住宅に住めば、総費用はほぼ同じになるということです。
ただし、家計の収支を考える上では、家賃として8万円を支払うだけでなく、頭金を貯めるための毎月の貯蓄額が必要になります。このシミュレーションでいえば、毎月約42000円を10年間積立てることになります。
もちろん、もっと前から頭金の準備を始めていれば、毎月の貯蓄額はこれよりも少なくなります。
また、ここでは住宅ローン金利を全期間固定型の1.0%で計算しましたが、通常は返済期間が短いほうが金利は低くなります。ちなみに40歳からの固定20年の金利を0.3%下げて年利0.7%で計算すると、利息分返済額で約95万円安くなります。
このように、金利や借入額、家賃の額といった諸条件によって、総費用は変動するため、どの年代で購入したらよいかは一概に言うことはできません。
ご自身の考え方や家計収支、家族構成によっても、ベストなタイミングは各家庭ごとに違ったものになると言えるでしょう。
したがって、ご自身と家族のライフステージに合わせて、マンションを買いたいと思ったタイミングで購入されることをおすすめします。もちろん、ゆとりある資金計画に基づいて購入されることが大切なのは言うまでもありません。
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40代でマンションを購入するならここに注意
このように見てきますと、40代でマンションを購入するのは決して遅くはありませんし、無理なことではありません。
ただし、注意しておくべきことが大きく3つあります。
(1)返済期間が短いので頭金の準備が大切
前述した通り、40代でのマンション購入のデメリットは、何と言っても返済期間が短いことです。その分、利息の負担は減りますが、毎月の返済額が大きくなってしまいます。
とはいえ、返済期間を長くすることは、老後のリスクにつながりますので、十分な頭金を用意できるよう、できるだけ早いタイミングで貯蓄を始めるようにしてください。
(2)中古マンションを購入する場合は、建て替え時期に注意
マンションの場合、築後40年から50年前後で建替えの問題が起きます。マンションの寿命は約50年と言われています。
マンションの建替えでは、多額の建て替え資金をどうするか、所有者に重い負担がのしかかる可能性が高いと言えます。もし、建て替え費用が負担できない場合、再び、終の棲家を探さなければならない事態にもなりかねません。
高齢になると、入居できる賃貸住宅も少なくなるため、これは切実な問題となってしまいます。
40代での購入の場合、新築マンションであれば、存命中に建て替え問題と直面する可能性は低くなりますが、中古マンションを購入する場合には、築年数と建て替え時期に注意するようにしてください。
(3)退職金をあてにしたローンは組まない
退職金を住宅ローンの返済にあてることを考えている人もいますが、それは避けるべきでしょう。退職金は老後の生活資金であり、リタイア後にも収入があることが確実な人を除いて、退職金をローンの返済に使うことはおすすめできません。
退職金で住宅ローンを一括返済した人のなかには、70歳後半や80歳代になると生活費が不足し、老後破綻に陥ってしまう人が少なくありません。
住宅ローンは現役中に完済できるよう資金計画を立てることが大切です。
老後の生活を見据えた資金計画がより大切になる
前述したように、40代になってからマンションを購入することは決して無理なことではありません。
ですが、20代、30代のうちに購入する場合と比べると、教育資金や老後資金の準備がより重要になりますし、短い期間で返済をしていかなければなりません。
気に入ったからと衝動買いしてしまうような行き当たりばったりの行動は慎み、将来の家計収支をシミュレーションするなどして、老後の生活を見据えた資金計画を立てておくことが必要となります。
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この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。