中古マンション購入時の諸費用は? どんな費用をいつ、いくら支払うの?
斎藤 岳志
2017/06/05
© oka – Fotolia
中古マンションの購入には「諸費用」がかかる
最近、中古マンション購入のお手伝いをさせていただく機会が増えてきました。
「イメージ通りの場所に、理想的な物件を見つけたんです!」
「自分たちのライフスタイルにピッタリの部屋が見つかりました!」
マイホーム購入を前に胸躍らせながら相談にいらした方たちに、ファイナンシャル・プランナーとしては厳しいことをお伝えしなければいけないときもあります。
それが、「購入時の諸費用」の話です。
中古マンションを購入するには、物件価格だけでなく、それに加えて諸費用(諸経費)がかかります。仮に、3000万円の中古マンションであったとしても、3000万円だけ用意すれば、購入できるわけではありません。
実は、この諸費用について見落としている人が意外といらっしゃるのです。
中古マンションを購入する際にかかる諸費用はどれくらいかかるのでしょうか。だいたいの目安としては、「物件価格の7~10%くらい」になります。
3000万円の中古マンションであれば、物件価格の3000万円に加えて、210万~300万円くらいを諸費用として準備しなければならないということです。
(関連記事)
中古マンション購入の流れは? 物件探しから住宅ローン融資までが一目でわかる!
諸費用にはどのようなものがあるのか
では、諸費用には、どのようなものがあるか、具体的に見ていきましょう。諸費用には大きく、次の6つがあると考えてください。
(1)仲介手数料
(2)登記費用
(3)火災保険料
(4)住宅ローンの事務手数料と保証料
(5)固定資産税・都市計画税
(6)不動産取得税
図1 中古マンション購入時にかかる諸費用
不動産会社に支払う仲介手数料
© sunabesyou – Fotolia
仲介手数料とは、不動産を売ったり買ったりする際にその取引を仲介する不動産会社へ支払う手数料です(後述しますが、仲介手数料がかからない取引もあります)。不動産会社に仲介を依頼しただけでは手数料を支払う必要はなく、売買契約が成立したときに発生する成功報酬です。
仲介手数料の金額は、不動産会社が勝手に決めているわけではなく、「(物件価格×3%+6万円)+消費税」(400万円以上の物件の場合)が上限と決まっています。
上限が決まっているだけなので、それを超えなければ仲介手数料をいくらに設定してもいいのですが、ほとんどの不動産会社では上限額をそのまま請求してきます。
仲介手数料については、不動産会社と交渉すれば多少値引きしてもらえることがあるかもしれません。ですが、仲介手数料は営業担当者の成績に直結するもので、円満に取引をまとめてもらうモチベーションにつながるものなので、マイホームを買う側としては値切らずにそのまま支払うのがいちばん多いパターンです。
また、そもそも仲介手数料の値引き交渉ができることさえ知らない人が多いのではないでしょうか。
仲介手数料を支払うタイミングですが、
・契約時に半額、決済引き渡し時に半額
・決済引き渡し時に全額
という2つのパターンのどちらかが大半です。
(関連記事)
「仲介手数料 無料」でも儲かる不動産取引の裏側(売買編)
所有権、抵当権の登記費用
売買契約が成立して、中古マンションを購入したら、「所有権の移転登記」を行なわなければなりません。所有権の登記は、一言で言えばその物件の所有者が誰なのかを客観的に証明するために行なうものです。これができていないと、後々トラブルになりかねません。
また、住宅ローンの融資を受ける場合には、購入したマンションが担保となるため、抵当権の設定登記も必要になります。不動産を担保にする証拠として、債権者(お金を貸している人=金融機関)が、その不動産に抵当権を設定するのです。
抵当権とは、住宅ローンの返済が続けられなくなった場合に、債権者(お金を貸している人=金融機関)が担保となっている不動産を売却して融資したお金を返してもらえる権利のことです。
これらの登記を行なうためにかかる費用が登記費用になります。登記の手続きは自分でもできますが、司法書士に依頼するのが一般的です。
登記費用の内訳としては、次の2つです。
・登録免許税
・司法書士への報酬
ちなみに、登録免許税とは登記を行なうときにかかる税金で、登記の手続きにかかる費用と考えておくとわかりやすいかと思います。
登録免許税の金額は、下記の表の通りです。
図2 登録免許税の計算方法
登録免許税と司法書士への報酬を合わせた費用がどれくらいか、だいたいの目安ですが、3000万円の中古マンションの場合、25万〜30万円くらいとなります。
支払いのタイミングは、決済引き渡し時に、現金で支払う場合が多いようです。
万一に備えて加入する火災保険料
万一の場合に備えて、家財を守るためにも、火災保険は地震保険と合わせて加入しておきたいものです。
まず加入期間ですが、建物・家財に関しては10年、地震保険に関しては5年が最長になります。保険料は、物件の価格(実際は保険会社の評価額をもとに計算されます)にもよりますが、3000万円位の物件の場合、10万円前後が目安になります。
火災保険料は、保険開始日(=マンションが自分の所有になる日)より前に支払うことが多いので、売買契約を結んでから購入代金の決済を行なうまでの間に支払うことが多いです。
保険会社によっては、初回口座振替というところもあるので、その場合は、決済の翌月に引き落としがかかるというケースも見受けられます。
住宅ローンの事務手数料と保証料
●事務手数料
住宅ローン融資を受ける場合には、通常、金融機関に事務手続料を支払います。
融資金額にかかわらず一定の手数料を支払う「定額制」と、融資金額に応じて金額が変動する「定率制」の2種類があり、金融機関によって取り扱いが異なっています。定額制は、たとえば「一律5万円+消費税」、定率制は「融資金額の2%+消費税」というケースがあります。
●保証料
住宅ローンの保証料とは、もしも住宅ローンの返済ができなくなったときに備えて保証会社を利用するための費用です。
保証料は毎月の返済の金利に上乗せで支払うパターンと、最初に一括で支払うパターンがありますが、一括で支払う場合、融資1000万円あたり20万~30万円くらいになるケースが多いです。
ちなみに、ネット銀行の住宅ローンは保証料がかからないものが多いですが、その分、審査が厳しいといわれています。
仮に、3000万円の融資を受けるとしたら、ローン手数料と保証料で、70~100万円前後が目安になります。これに関しては、融資金額から差し引かれることが多いので、ご自分で支払うということは、滅多にありません。たとえば、3000万円を借りた場合、通帳に2930万円とか2900万円が振り込まれることになります。
(関連記事)
金利や手数料は本当に安い? 安易にネット銀行の住宅ローンを選んではいけない4つの理由
毎年かかる固定資産税・都市計画税
●固定資産税
不動産を購入すると税金がかかります。中古マンションも同じです。
まず、固定資産税です。これは、土地や建物などの固定資産にかかる市町村税です。毎年1月1日時点の所有者に課税されるもので、4〜6月頃に納付書が送られてきます。
中古マンションを購入する場合は、売り主がその年の固定資産税を支払うことになるので、日割りで買い主の負担分を計算して清算することになります。
固定資産税の金額は、市町村が決定する固定資産税評価額に税率をかけたものです。税率は市町村が決めることになっていますが、標準税率が1.4%となっており、ほとんどの市町村が1.4%を適用しています。
固定資産税=固定資産税評価額×1.4%
なお、固定資産税には軽減措置がありますが、詳しくはここでは触れません。市町村の役所に問い合わせてみてください。
●都市計画税
次に、都市計画税です。これは、都市計画区域内にある土地・建物にかかる市町村税で、固定資産税と同じく、毎年1月1日時点の所有者に課税されます。
税額についても固定資産税と同じく、固定資産税評価額に税率をかけて計算します。税率は、最高限度0.3%以内で市町村が決定します。
都市計画税=固定資産税評価額×0.3%
なお、都市計画税にも軽減措置があります。
土地や建物を取得するとかかる不動産取得税
不動産取得税は、土地や建物を購入した、建物を建てた、贈与を受けたといったときに、その所有者となった人にかけられる税金です。
不動産取得税は、不動産を取得したときに一度だけかかります。
不動産取得税=固定資産税評価額×3%
不動産取得税は、上記の計算式で求められますが、現在は軽減措置が取られています。詳しくは都税事務所や県税事務所に問い合わせてみてください。
諸費用を抑える方法はないの?
思った以上に諸費用の負担が大きいことに驚かれている人も多いのではないでしょうか。そこで、諸費用を抑える方法についてお話ししておきましょう。
諸費用を抑えるために有効な方法は「仲介手数料がかからない物件」もしくは、「仲介手数料を値引きしている不動産会社」を選ぶことです。
(関連記事)
3000万円の中古住宅を購入、諸費用を100万円安くする方法とは?
仲介手数料がかからない物件を選ぶ
先に、仲介手数料は営業担当者のモチベーションにつながるということを申し上げました。その話と矛盾するように聞こえるかもしれませんが、不動産取引のルール上、仲介手数料がかからない物件があるのです。
それは、「不動産会社が所有している物件」、いわゆる「売主物件」と呼ばれる物件です。不動産会社が所有している物件を、その不動産会社から直接購入する場合には、仲介手数料はかかりません。
中古マンションなどの広告を見ると、必ず「取引様態」という欄があります。そこには「媒介」とか「仲介」といった言葉が書かれていますが、「売主」と記載されている物件が、仲介手数料のかからない物件です。ちなみに、取引様態とは、その不動産を販売する上での不動産会社の役割のことをいいます。
また売主物件であれば、住み始めた後に見えない部分に不具合が出た時の補償である「瑕疵担保責任」が最低2年間つきます。さらに、その不動産会社の提携ローンを有利な条件で利用できるケースもあります。
このように、売主物件は買い主にとっては、比較的メリットが多いと言えるでしょう。
もちろん、販売価格のなかに、初めから仲介手数料分が上乗せされている場合もあります。その場合、費用的なメリットはなくなってしまいます。
とはいえ、売主物件であれば、その物件のいいところも悪いところも不動産会社が把握しているはずです。そこが個人売り主の物件を仲介で購入する場合との違いです。売主物件には、価格だけでは判断できないメリットがあると言えるのではないでしょうか。
また、不動産会社のなかには、仲介手数料を値引きしている会社があります。そうした不動産会社に仲介を依頼すれば、仲介手数料の負担を減らすことができます。
ただし、仲介手数料を値引きする分、サービスが低下してしまっては意味がありませんので、信頼できる不動産会社かどうかを事前にしっかり見きわめるようにしましょう。
(関連記事)
価格、立地が断然有利! いま新築より中古マンションを選ぶべき5つの理由
中古マンション購入で失敗! ありがちな5つのケースと注意点をプロが解説
中古マンションの相場を自分で調べるには? 誰でも簡単にできるプロのやり方
この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
FPオフィス ケセラセラ横浜代表 百貨店在職中にファイナンシャル・プランナーの資格を取得。税理士事務所、経営コンサルティング会社などを経て、FPオフィス ケセラセラ横浜を開設、代表を務める。 マイホーム購入・売却相談のほか、不動産投資のサポートも行なっている。株式投資やFXなど一通りの投資を実践した後、2007年より不動産投資をスタート。現在は、自らの資産運用はほとんど中古マンション投資に絞って取り組んでいる。