4つの欠陥問題から見えてくるミサワホームの企業体質
岩山健一
2016/10/21
その悲劇はゴルフ場での出会いから始まった
【ケース1】あるプロ野球選手を襲った悲劇
「蔵のある家」と聞くと、皆さんは何を思い出しますか? お金持ちの家でしょうか。それとも、昔話に出てくる家を思い出すでしょうか。私は、ある大手のハウスメーカーのことがすぐに浮かんできます。
あるプロ野球選手が、ゴルフコンペでミサワホームの社長と一緒にプレーしたときのことです。このプロ野球選手を仮にA氏としましょう。ちょうど新居の建設を考えていたA氏が、社長にそのことを相談すると、すぐに社長の命を受けた営業担当者がA氏の自宅を訪れ、新居の建築計画がスタートしました。
実は、A氏は鉄筋コンクリート造を希望していたのですが、ミサワホームは木造プレハブ専門のハウスメーカーです。不安に思ったA氏が本当に施工できるのか確認すると、ミサワホームからの回答は「特建事業部があるから大丈夫」というものでした。ちなみに、特建事業部とは本筋(木造プレハブ)とは異なる構造や規模の建物の依頼があった際に対応するための部署のことです。
その回答を信じたA氏は見事に裏切られ、完成した自宅は住み始めてすぐに雨漏りが発生します。A氏がミサワホームに連絡を入れると、下請け業者がやってきましたが、修理をしても雨漏りは直りませんでした。
検査で判明した驚きの事実
私がA氏から依頼を受けて検査をしたところ、防水不良はもちろん、鉄筋のかぶり不足があったほか、設計図と実際の施工との相違が多く確認されました。特に設計との相違については、計画されていたスラブが施工されていないなど、かなり深刻な構造上の問題があったのです。
そして、検査後の指摘事項を伝える席で、驚きの事実が判明しました。実は、この建築工事は、下請けの工事業者に丸投げされていたのです。丸投げとは、一括で下請けさせることで、この建築工事において、ミサワホームはほとんど業務に参加していなかったのです。
しかも、その下請工事業者は、技術的には三流と言わざるを得ないレベルで、そのような業者に何の管理もせずに丸投げで工事をさせれば、まともな家など建つはずもありません。
この案件は、協議の末に、家を土地ごとミサワホームが買い戻すことで解決したのですが、もし補修工事をしていたとすれば、工事の過程でさらに不良箇所が明らかになったことでしょう。
私が支援している2件の裁判からわかること
2件の裁判支援から見えてきたものとは?
実は、現在、弊社ではミサワホームに関わる2件の裁判を支援しています。もちろん過去にも多くの紛争事例があって、ミザワホームという会社は、本質的にはかなり技術レベルの低い会社であると言わざるを得ないというのが私の見解です。
現在裁判が進行している物件は2件とも兵庫県にあります。当然2件とも質の違う問題なのですが、この2件が2件とも、このミサワホームという会社の闇部を象徴する内容となっていることを、ここで簡単に紹介しておきましょう。
【ケース2】超高級住宅を造ったはずが超欠陥住宅だった
ある大学の理事長が、兵庫県内の高級住宅地に建てられた超高級建売住宅を購入しました。建てたのはミサワホームです。ところが、この超高級建売住宅は地盤沈下を含め多岐にわたる問題を引き起こしていました。協議の末に、建て替えることが決まったのですが、話はそれで終わりではありませんでした。
建て替えということは、少なくともまったく同じ家が建てられるということは当たり前のことでしょう。その他にも施主が要望することに応えつつ、建築を進めればいいのですが、どうもそれがスムーズにいかないのです。その原因を聞いて私は驚きました。ミサワホームがいうには、実はこの家がもともと、違反建築であり、そのため元通りに建築することができないのだというのです
そんなバカな話があるのでしょうか。にわかに信じられない話です。どうやらミサワ側が、建て直しの持ち出し費用を安く抑えるために発した虚言だったようです。
建て直してもらった家は、もともとは3階建てだったはずが、3階ではなく小屋裏(*1)とされていたり、ドライエリア(*2)がなくなったり、さらには地下の床下に流水があったりと、どうしようもない造りなのです。このような建物を供給されて、怒らない人はいないでしょう。
(*1)屋根と天井との間にできる空間のこと。通常は天井板によってふさがれているが、ロフトや収納として利用されることもある
(*2)地下室の外壁に沿って設けられる採光や換気などのための空堀
【ケース3】超高級住宅地で工事中に隣家を沈下させる
関西の芦屋といえば超高級住宅地です。その地形は、南斜面の雛壇になっており、昔からの石垣擁壁が特徴的な地域です。
そこでミサワホームの下請の業者が大変なことをやってしまいました。よりによってその石垣の根石を抜いてしまったのです。その結果、隣地である私の依頼者の庭先にはひび割れが発生し、家は傾いてしまうという最悪の事態が引き起こされました。
にもかかわらず、ミサワホームは何食わぬ顔で工事を継続しようとします。このようなトラブルに慣れっこなのでしょうか。そこで、工事差し止めの仮処分申請を起し、現在も係争中となっているのです。
そもそも人のものを壊したら、まず謝るのが順序のはず。その上でどのように直すのかを提案し、折り合いがつくまで話し合うのが普通の企業の対応です。
しかし、ミサワホームはその「普通」という感覚を持っていないのでしょうか。神戸という土地柄からか、土木工事に従事する業者のなかにはあまり素行のよくない業者がいるのですが、そのような業者をあえて使う必要はないはずです。また、たとえそのような業者であったとしても、悪いものは悪いとして、責任を取らせることは当然のことでしょう。
にもかかわらず、このような状況に際しても、関西の悪名高い弁護士を擁して、時間稼ぎをしてくるのがミサワホームという会社の体質だというのが私の印象です。
ミサワホームの構造は木質パネルプレファブ工法と呼ばれるもので、ツーバイフォーとはまったく異なる構造です。
まず、細い木材を格子状に組んで、その枡のなかに断熱材を詰め込みます。そして、両側から接着剤で4mmの薄ベニアを貼り、プレスしてパネルを造ります。このパネルを組み合わせて家を造るのですが、過去に検査したミサワホームの建物においては、断熱材が入っていないパネルがあったり、このパネル自体が基礎にアンカー固定されていなかったり…。現場におけるずさんな施工が過去にはよく見られたものです。
【ケース4】どれだけ修繕しても雨漏りが直らない大学教授の家
もうひとつ、私が知っているケースをご紹介しましょう。
ある大学教授の家が、雨漏りで大変な状況となっていました。ミサワホームが補修をするからと、足場を架け、部分的に屋根を剥がして工事をするのですが、いくら工事をしても抜本的な補修には至らず、また再発するのです。
困り果てた大学教授から依頼を受けて建物を見ると、基礎に鉄筋が入っていない箇所があったり、断熱材が入っていなかったり、パネルがアンカーボルトに固定されていないなど、考えられないような施工不良が多くの箇所で確認されました。
最終的にはこの家は、建て直しに近い費用を捻出させることで和解したのですが、不幸なことに、大学教授がこのトラブルに悩まされていた時期は、ちょうどお子さんが可愛い盛りの時期と重なってしまったのです。子育ての大事な期間を欠陥住宅に捧げてしまった、その教授の怒りが収まることはありませんでした。
問題を引き起こしたハウスメーカーの担当者に共通すること
これは私の経験から感じたことですが、ミサワホームに限らず、欠陥問題を引き起こしたハウスメーカーの担当者たちは、不思議と皆同じ顔をしているように見えます。
もちろんそれぞれまったくの別人なのですが、皆同じ顔をしているのです。同じ顔というか、同じ表情といったほうが適切かもしれません。
彼らの表情は何を表しているのでしょう。会社を守ろうとする気持ちでしょうか、それとも、自分のクビを守りたいという気持ちでしょうか。もしかしたら、皆で嘘をついていることを隠しながら、早くこの打ち合わせが終わってくれと切望している顔なのでしょうか…。私からすれば、まるで、人間であることを捨てるときの表情のように見えて、悪寒が走り、心底恐ろしくなるのです。
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この記事を書いた人
株式会社日本建築検査研究所 代表取締役
一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。