ビー玉を使っても、床の傾きはチェックできない!?住宅購入時のチェックポイント
牧野寿和
2016/07/05
外壁のひび割れやタイルの剥がれ落ちはないか?
マンションの資産価値は、利便性と管理が重要なポイントになります。駅の近くにある便利なマンションであっても、外壁のコンクリートに深いひび割れや、タイルの剝がれ落ちのあるような物件は、構造か地盤に問題があると考えられます。イザというときに売却したり貸し出したりすることができないどころか、購入してはいけない物件です。
また、そもそもそうした物件は、銀行からマイナス査定されてしまい、100%ローンが組めない可能性が高いのです。つまり、「頭金ゼロ」で買うことができない物件ということになります。
そこまでいかなくとも、不具合をそのまま放置しているような物件は避けるべきです。外壁のほかにも共用廊下や階段、ベランダや天井など、見てすぐにわかる箇所は必ずチェックして、何か気になる点がある物件は、管理状態を疑ってみる必要があるでしょう。
ひび割れ以外にも見ておくべき点は?
ひび割れのほかに懸念材料となる主な不具合としては、外壁から白い粉のようなものが浮き出ているような現象(エフロレッセンス)があります。これは、コンクリートに含まれるアルカリ成分が水に溶け出すことによって起こるもので、内部に雨水が侵入していることが考えられます。
なかには、外壁から鉄筋が露出している場合もあり、これは施工不良によることが多く、コンクリートの強度劣化につながるので、そのような物件は避けるべきです。また、築年数の古い物件では、給排水管が建物の外側に取り付けられているものもあり、経年劣化が心配されます。
ほかには、1階部分が駐車場になっている物件であれば、建物を柱だけで支えるピロティになっている場合、壁の支えがない分、当然強度が低くなります。実施に東日本大震災後にはピロティ型の多くの建物が、柱と柱の間に壁をつくったり、ふたつの柱に鉄骨をクロスさせることで両側の柱に均等に力をふり分けるなどの補強工事を行なっています。
ビー玉で床の傾きはチェックできる?
外壁などの共用部分は定期的に修繕工事が行なわれていれば問題ありませんが、当然、専有部分である居室内に不具合がないかを確認しなければなりません。
居室のひび割れは、玄関ドアや窓など頻繁に開閉する部分に見られることもありますが、これは壁内部の石膏ボードの継ぎ目に隙間が開いただけのことが多く、あまり心配はいりません。一方、天井などに複数箇所のひび割れがある場合、構造に何か問題があるかもしれません。不動産会社の担当者に原因を聞くか、ホームインスペクションのプロの手を借りるといいでしょう。
また、物件見学にビー玉を持参して床の傾きを調べようとする人がいますが、施工上のバラつきや家具の重みで部分的にわずかに床が傾いている場合があるので、不具合といえない場合でもビー玉が転がってしまう場合があります。
ちなみに、新築マンションの場合は1000分の3(1m当たり3mm)、中古なら1000分の5(同5mm)程度までの傾きは欠陥とされず、法律によって許容範囲とされています。
不安であれば、マンションの住民に居室でビー玉が転がらないか聞いてみましょう。複数の居室で同じ方向にビー玉が転がったり、同じ時期に複数のドアや窓が開閉しにくくなったりしているようであれば建物全体が傾いている可能性があります。
ほかにも、キッチン下の排水管の劣化による水漏れがないか、外壁から雨水が侵入したことによるベランダや窓付近の壁の黒ずみがないか確認しましょう。後者は雨漏りによることが多いので注意してください。
管理規約でリフォームには制限がかかる場合も
最初は小さな不具合であっても、経年とともに住み心地を悪くするばかりか耐震性に影響を及ぼすこともあります。マンションは一戸建てと違い、基本的に建て替えはできません。修繕資金が貯まるまで我慢してすまなくてはいけないかもしれないのです。
また、リフォームすれば改善されるはずと思うかもしれませんが、マンションには管理規約が定められていて、専有部分であってもリフォームが認められないケースもあります。たとえば、古いマンションの設備に関する管理規約による制約を見てみましょう。
・床をフローリングに変更する場合、階下への遮音性を配慮した高い性能が必要になる
・建物自体の電気容量が小さくても、個人で勝手に容量を増やせない
・浴室のバランス釜給湯をガス給湯式ユニットバスに交換しようとしても、ベランダに給湯器を置いて配管用の穴を外壁に開けなければいけないので認められない
なお、外観に関する変更は、外壁をはじめ、ベランダや共用廊下に面しているところは基本的に認められません。どこまでリフォームが可能なのか、購入前に確認しましょう。
一戸建てと同じように、住み始めてから生活に支障をきたすような不具合が見つかっても、すぐにリフォーム資金を融通することは困難です。利便性・管理とともに、物件見学の際には不具合がないか、慎重に見きわめるようにしましょう。
この記事を書いた人
CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
1958年名古屋生まれ、大学卒業後、約20年間旅行会社に勤務。出張先のロサンゼルスでファイナンシャルプランナー(FP)に出会い、その業務に感銘を受け、自らもFP事務所を開業。 その後12年間。どの組織にも属さない「独立系」FPとして、誰でも必要なお金のことを気軽に考えてもらうため「人生を旅に例え、お金とも気楽に付き合う」を信念に、日本で唯一の「人生の添乗員(R)」と名乗り、個別相談業務を行なうとともにセミナー講師として活動している。 また、賃貸不動産の経営もしており、不動産経営や投資の相談にも数多くのアドバイスやプランニングをしている。