自宅売却で一括査定サービスは利用すべきか
高橋正典
2016/01/04
一括査定サービスのメリット・デメリット
一度情報を入力するだけで、複数の不動産仲介会社から大まかな査定をしてもらえる一括査定サービス。無料・手軽であることから、売却を検討している人にとっては非常に便利に思えますが、デメリットもあります。
まずメリットですが、売却する際のある程度の相場がわかることと、売ろうとしている物件のエリアで販売活動を行なっている不動産仲介会社がわかることです。
その一方で、実際の物件を見ているわけではないので、契約を取るために無責任な高額査定を出してくる会社が多いことがデメリットです。また、査定を依頼→メールで査定金額を提示で終わりではなく、営業電話がかかってくるという面倒な面もあります。不動産仲介会社は、一括査定サービス経由で査定依頼が入ると広告費をポータルサイトに払いますので、広告費を回収しようと必死なわけです。
実際このサービスを利用するときは、2~3社に絞るようにしましょう。このなかで根拠のない高い査定額を出してきた会社は、省いて考えたほうがいいかもしれません。相場からかけ離れた査定をする会社は、信頼できませんので。
また、査定をしてもらったからといって必ず契約をしなければならないわけではありませんので、じっくりと信頼のできる不動産仲介会社を選びましょう。
売り出し価格はどのように決めるのか
一括査定サービスを利用し、大体の相場観がつかめたら実際に売り出し価格を検討します。不動産仲介会社は実際に物件を見て、数百万円の幅をとった査定額を提示してくることがほとんどです。そこで、希望金額を伝えて調整するのですが、おすすめしたいのは3段階で価格を設定するものです。
① 売れたらいいなと思う価格(最高額)
② おそらく売れるであろう金額(現実的)
③ これ以上は下げられないという価格(最低額)
これらの価格について、営業担当者に「それぞれの価格にどのような根拠があるのか」「売り出しから成約までのスケジュールはどれくらいになりそうか」「値下げするとすればどのタイミングが適当か」を説明してもらいましょう。
このように、売り主と不動産仲介会社との間で「売却」というゴール目標を共有することが、安心できる販売活動につながるのです。
3段階の価格の決め方
3段階の価格の決め方ですが、①については競合物件がない場合はある程度チャレンジした価格設定にしてもいいと思います。たとえば、過去の事例を基にした相場が2000万円であれば2300万円くらいに設定します。そうすると、2000~2100万円で制約できる可能性が高まります。
逆に競合物件がある場合は、強豪より安くする必要はありませんが、あまりに欲張った設定をすると売れ残りという大失敗の結果になってしまいます。
先ほどの例で行くと、競合が2000万円で出しているのに2300万円で出し続け、全然反響がないことから徐々に価格を下げるも数か月が経過し、「この物件はずっと掲載されている」というマイナスのイメージが定着してしまうと、さらに安価で下取りされるというケースにもなりかねません。
あまりに無茶な価格設定をしてしまうと、売り時を逃してしまう可能性があります。これまでに、最初から適切な価格設定をしていれば希望金額で売れた物件も、無茶な設定をしてしまったがために、最終的に大幅に安い価格で売ることになってしまった事例はたくさんあります。
中古物件の売却で重要なのは、「タイミング」です。①について本音でどう思っているのか、信頼できる不動産仲介会社・営業担当者に聞いてみましょう。それによっては、②や③の段階での売り出しを検討してもよいかもしれません。
この記事を書いた人
株式会社バイヤーズスタイル代表取締役
株式会社セラーズエージェント取締役。 一般社団法人 相続支援士協会 理事。 1970年、東京都中野区生まれ。売りっぱなしの単なる「物件紹介屋」と言われる日本の不動産業界の慣習を変え、生涯にわたり、より顧客に寄り添う「エージェント(代理人)ビジネス」にシフトさせるべく、株式会社バイヤーズスタイルを設立。業界で初めてすべての取扱い物件に「住宅履歴書」を導入、顧客の物件の資産価値向上を担う。一般的に売りづらいとされる、築年数の古い中古住宅の売買に精通しており、顧客から厚い信頼を得ている。 さらに、ひとつひとつの中古住宅(建物)を正しく評価し、流通させるため「売却の窓口(R)」を運営し、その加盟店は全国に広がる。 不動産流通の現場を最も知る不動産コンサルタントとして、各種メディア・媒体等においての寄稿やコラム等多数。 宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー、国土交通大臣登録証明事業不動産コンサルティング技能登録者。 著書に『実家の処分で困らないために今すぐ知っておきたいこと』(かんき出版) 、『プロだけが知っている!中古住宅の魅せ方・売り方』(朝日新聞出版) 、『マイホームは、中古の戸建てを買いなさい!』(ダイヤモンド社) 、『不動産広告を読め』(東洋経済新報社)など。