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契約・工事で知っておくべきこと(3/9)

快適な住環境を実現するには断熱性が重要

山田章人山田章人

2016/01/29

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快適な住まいの基本とは?

 快適な温熱環境の住まい、その基本線は、断熱性の高い「省エネ住宅」にすることです。一方の熱をほかの部分に伝えないようにするのが断熱効果ですので、外の寒さを家のなかに伝えない、逆に家のなかの暖かさを外に逃がさないようにするために、断熱材を屋根・外壁・床などに使用します。

 断熱の弱点ともいえるのが、窓です。この窓には、アルミよりも断熱性の高い樹脂サッシや断熱ガラスを使用することで、効果を増強します。

「次世代省エネルギー基準」について

 1999年に定められたのが「次世代省エネルギー基準」です。これは住宅の断熱性能の目安になる基準で、日本全国を6地域に分け、断熱・気密の必要性能の基準を明文化したものです。

 具体的には、建物の外皮の断熱性能を高めることや開口部の気密性を高めること、夏の日射を遮る工夫をすることや通風に配慮した設計をすることについて、材料のサイズや仕様などがまとめられています。

 この基準はすべての住宅に義務づけられているものではありませんが、税制優遇や補助金など多くの制度で条件とされています。また、2020年にはこの基準が義務化される予定となっています。これから建てる人は最低でもこの基準は満たしておいたほうがよいでしょう。

 今後、国の動きとしては、さらに断熱性能を高くする方向に動いていますし、この基準自体が進んでいるヨーロッパに比べれば数十年遅れているのが現状です。日本は比較的温暖な地域にあるのであまり厳しくありませんでしたが、進む温暖化やCO2削減の観点から断熱性能を高める動きは加速しそうです。

断熱性を高める方法

 それでは、具体的に断熱性を高めるにはどうすればいいのでしょうか?

 窓が断熱性の最大の弱点であることは上述しましたが、ガラスと枠の両方に工夫を加えることで断熱効果を高めていきます。ガラスは二重にして、その間に空気の層をつくることで断熱性を高める複層ガラスを、枠についてはアルミ以外に樹脂を使用するなどして熱を伝えにくくする製品が開発されています。また、窓の面積が大きければ耐熱性が下がるので、その部分も考慮しましょう。

 以前は、断熱サッシは高価なものでしたが、建物の断熱化の動きに合わせてここ数年でサッシメーカーも続々と新しい製品を開発してきています。アルミと樹脂では、熱の通しやすさが1000倍も違いますので断熱効果は明らかです。価格も、以前に比べればずいぶん一般的になりました。

 本州以西では樹脂のサッシは強度や耐久性の点で疑問視される人も多いですが、北海道ではすでに一般的で耐久性についてもアルミサッシと変わらない実績があります。

夏の日射を遮断する

 次に、夏の強い日射を遮断する方法を紹介しましょう。

 夏は断熱ガラスを素通りして、床・壁・カーテンを直接熱してしまうくらい強い日射が部屋に差し込みます。このとき、部屋のなかを快適にするには日射熱を遮ることが不可欠です。

 南側の窓については、庇(ひさし)の設置が一番効果的です。庇の深さは、暑さが最も厳しくなる8~9月の角度を計算して決めていきます。

 もちろん、ガラス・サッシ自体の遮熱性能を上げる方法もあります。Low-E複層ガラスと呼ばれる製品は、断熱用のガラスと、遮熱用のガラスがありますので、方位によって使い分けると効果的です。詳しくは施工業者にご相談ください。

 また、カーテンやブラインドは、窓の内側につけるか外側につけるかで大きな違いがあります。窓の内側の場合は、窓ガラスを素通りした日射熱をカーテンなどが受けてから室内に放射します。逆に外側につけた場合は、日射熱を受け放射された熱が窓ガラスを透過しにくいことから、室温が上がらないという仕組みになっています。

断熱材を選ぶときのポイント

 優れた断熱材を使うと、直接的な暑さ・寒さから家を守ってくれると同時に、冷暖房費の節約にもつながるという利点があります。ただ、断熱をよくするだけでは結露もしやすくなります。気密性能も同時に高めることで、結露の防止やシックハウス症候群の原因となる細菌の繁殖も抑える効果も期待できます。

 代表的な住宅の断熱工法には、「充填断熱」と「外張り断熱」、両方を合わせた「充填断熱と付加断熱」があります。最近では外張り断熱のみというケースは減ってきています。

 充填断熱とは、柱と柱の間に断熱材を入れる工法で、建築コストを抑えながら厚い断熱材を採用することができます。逆に外張り断熱では、断熱材を柱・梁の外側に張りつけるのですが、外部から柱・梁などを保護できるという役目もあることから耐久性が高いといわれています。施工のしやすさというメリットもあります。

 断熱材に最もポピュラーで安価なグラスウールなどの無機繊維系、コストはかかるものの断熱性・防火性に優れたセルローズファイバーなどの天然素材系などがあります。

 性能や厚み(薄さ)、それに対する価格はおおむね比例します。素材等にこだわりがない限り、施工のしやすさで選択されることになりますが、断熱の性能は設計者にきちんと説明を受けましょう。

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この記事を書いた人

一級建築士

5人建築家コンペでの家づくり 家escort京都 代表。 省エネ住宅診断士。 一級建築士事務所にて、神社仏閣から商業建築、住宅まで幅広く設計監理業務に従事した後、独立。2005年より、それまでの経験から、いい建物づくりには住まい手と設計者、施工者の相性のよい結びつきが不可欠と考え、住生活エージェントに専念。 住まい手が、自ら相性の良い建築家と施工者を選び出すのは至難の業であるという考えのもと、住まい手目線を基準に最適な建築家と施工者を結びつける代理人を目指す。自らの立場を、販売代理店ではなく、購入代理店と位置づけている。住まい手にとって最適な住宅とは何かを考え、老後までを考えた資金計画、不動産業者とは違う目線での土地探し、まだ施主様すら気づいていない好みや個性を引き出し最適な空間を生み出す工夫など、家づくりの準備を充実させることによって、結果、生涯心地のよい住まいを手に入れていただくことをミッションとして活動している。

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