住宅メーカー・建築家・工務店、注文建築での家づくりはどこに頼むべき?
山田章人
2016/01/20
住宅メーカーのメリット・デメリット
まず住宅メーカーですが、営業範囲が広く、土地探しや資金計画など初期的なサービスにも対応しています。特に長く営業を続けているメーカーは、経営基盤も安定していますし、設計・施工の体制も盤石です。
建築方法としては、独自の工法を持っていることが多く、合理的に作業を進めていくことから工期が短いのも特徴です。現場での工事は、地元の工務店や下請け会社が行なう場合がほとんどです。とはいえ、プランが規格化されていることから、制約が多くなってしまいます。プラン外の要望は、コスト的にも割高になることもあるので注意が必要です。
逆に、工事終了後のアフターサービスはしっかりしてくれるので、住み始めてからのトラブルなどにはすぐに対応してもらえます。
工務店のメリット・デメリット
工務店は、地域密着型かつ小回りの利く機動力・きめ細かさが売りです。急な要望などにも素早く対応してくれる良心的なところも持ち合わせていますで、地元での評判を選定材料にすると良いでしょう。
設計から施工まで一貫して行うことから、施工のしやすさを優先した設計になるきらいがありますが、全体的にコストは低めに抑えられます。ただ、追加工事などは「◯◯一式」という見積もりが多く、詳細が不明な場合もあります。
しかし、家の近くにある会社ですので、何かあったときにはすぐに駆けつけてくれるというメリットもあります。
建築家のメリット・デメリット
建築家は、施工会社とは独立して設計と工事監理を専門に行ないます。建築家に依頼した場合は、施工会社の選定も建築家が行なう場合がほとんどです。
建て主のオーダーに合わせたオリジナルのプランで設計を行いますが、工事費以外に設計監理料(工事費の8~15パーセントが目安)が必要になりますので、コスト的には一番高くなります。建築家のこだわりにより、仕様が細かくなりすぎて工事費が大きく膨らむ可能性もはらんでいます。また、少数精鋭の事務所が多いことから、アフターサービスの体制としては弱いかもしれません。
とはいえ、建築家の作風を生かしたオリジナルの家が建つのは魅力的だと思います。
家を建てる以外の依頼にも対応してくれるのか
家を建てる時には、土地探しもしなければなりませんが、初めてですと何からしていいのかわからいもの。そこで、土地探しから協力してもらうという方法もあります。
客観的な資金計画や、幅広い住宅ローンのアドバイスなども必要不可欠ですので、セカンドオピニオンとしてでも意見を聴けるほうが良いでしょう。
夢を実現するパートナー選びなので慎重に
このように、住宅メーカー・工務店・建築家によってメリット・デメリットがあるわけですが、建て主の夢を実現するためのパートナー選びなので慎重に行ないたいものです。
「家を売る」ことだけを目的としているパートナーとは、あまりよい関係を築けません。建て主の家族やその後の生活のことまでも考慮し、二人三脚で夢の実現に導いてくれるパートナーが望ましいと思います。
最近では、家は売る買うと表現しますが、少し前までは家は建てるといいました。文字通り、パートナーとして一緒に家を建てる気持ちを大切にしてくれる会社を選ぶようにしましょう。
そのためには、以下の項目をチェックしながらパートナー選びをしてみましょう。
●「家を売る」ことばかり考えていないか
●準備段階(土地選びや資金計画など)にも親身に相談に乗ってくれるか
●建て主のオーダーを実現できるよう動いてくれるか
●建て主の不安を自分ごととして受け取ってくれるか
建て主にとっては一生で一度の大きな買い物になる可能性が高いマイホーム。よいパートナーに恵まれることが、よい家づくりを成功させる秘訣なのです。
この記事を書いた人
一級建築士
5人建築家コンペでの家づくり 家escort京都 代表。 省エネ住宅診断士。 一級建築士事務所にて、神社仏閣から商業建築、住宅まで幅広く設計監理業務に従事した後、独立。2005年より、それまでの経験から、いい建物づくりには住まい手と設計者、施工者の相性のよい結びつきが不可欠と考え、住生活エージェントに専念。 住まい手が、自ら相性の良い建築家と施工者を選び出すのは至難の業であるという考えのもと、住まい手目線を基準に最適な建築家と施工者を結びつける代理人を目指す。自らの立場を、販売代理店ではなく、購入代理店と位置づけている。住まい手にとって最適な住宅とは何かを考え、老後までを考えた資金計画、不動産業者とは違う目線での土地探し、まだ施主様すら気づいていない好みや個性を引き出し最適な空間を生み出す工夫など、家づくりの準備を充実させることによって、結果、生涯心地のよい住まいを手に入れていただくことをミッションとして活動している。