中古住宅は実際の物件を見て選ぶことができる
枦山 剛
2016/01/04
「青田売り」「図面買い」のリスク
「新築時に〝手抜き工事〟や〝初期不良〟を見抜くことは極めて困難」だと前述しました。しかし、現実には、新築物件を購入する際に、新築時の状態を確認できることすら稀です。戸建てにしろ、マンションにしろ、新築物件の大部分は「青田売り」だからです。
青田売りとは、物件の完成前に販売することです。買う側はモデルハウスやモデルルームを参考に、未完成物件を「図面買い」することになります。業者が青田売りを推し進める最大の理由は、早期に資金を回収できるからです。一棟もしくは一戸でも売れ残りが出てしまうと、その間、現地の販売センター等も閉鎖するわけにいかず、また事業資金の借入利息も膨らんでいきます。つまり業者からすると、新築物件はより早く売ってしまいたい、さらにいえば、何としても売ってしまわなければならないのです。
一方で、売買契約を結んでしまった以上、引き渡し日を遅らせるわけにもいきません。ともすれば、賠償問題にも成りかねません。そのため、どうしても安全性よりも工期優先の考えに陥りやすく、手抜き工事等が発生する一因となるのです。
中古は特定の物件の販売に固執しない?
これに対して、中古物件は新築ほど販売を急いでいないケースがほとんどです。もちろん、物件の所有者である売り主のなかには、やむにやまれぬ事情から一刻も早く手放したい人もいるでしょう。けれども、実際に販売の窓口となるのは仲介業者です。仲介業者の立場からすれば、必ずしも特定の物件を売ることに固執する必要はありません。なぜならば、いくつも抱えている物件のなかからひとつ買ってもらえれば、自社の利益を確保することができるからです。
そういう意味では、買い主自身がいろいろな物件を吟味した上で、「これなら」と納得する物件を購入することができるといえます。
ただし、納得できる物件選びのためには、仲介業者の「もうひとつの事情」を知っておくこと必要です。仲介業者の手数料は「片手」と「両手」といわれる手数料があります。両手とは売り主と買い主の両者から手数料をもらえる取引で、片手とは売り主か買い主のどちらか一方から手数料をもらう取引です。この違いで仲介業者に入る手数料は倍変わるのです。
当然、仲介業者は手数料を多くもらえる両手を優先します。この違いは取引に仲介業者が2社入るか、1社だけしか入らないかの違いです。通常は2社なら片手、1社なら両手となることがほとんどです。したがって購入者の希望をより満たす物件があっても、その物件が片手なら、たとえ購入者の希望を満たさないものであっても、両手が取れる物件をあの手この手ですすめてくる一部業者もいます。
こうした事情を知らなければ、仲介業者にとって都合のよい偏った情報のなかから物件を選ぶことになりかねず、購入した後で後悔する可能性が高まります。仲介業者が、片手と両手の物件を選別せず、購入者の希望条件を優先して物件をすすめてくれるなら中古購入のメリットが最大限発揮できます。
実際の物件を見て選べるメリット
モデルハウスやモデルルームでは、設備や内装等も標準仕様ではなく、別途費用のかかるオプションをフル装備しているケースも珍しくありません。配置されている家具やインテリア等も高価で、実際の住み心地のイメージとは大きく異なります。
一方、中古物件はありのままの姿を確認することができます。安全性はもとより、風通しや隣室の音の聞こえ具合までチェックすることができます。「現物を見て選べる」こと以上に信頼できる情報はないのではないでしょうか。
●現物を見ないと判断できないこと
外壁等の欠陥の有無/実際の間取り/眺望/日当たり/風通し/部屋の広さ/近隣や上階、隣室等の騒音/設備のレベル/管理のレベル(マンションの場合)/売主等からの実際に住んでみての声
この記事を書いた人
中学卒業後に大工、建設業、鉄工業などを経て、97年、若干23歳の時に鉄工業で創業する。大手ゼネコン5次下請けからスタートし、最終的には総合建設業者として大手ゼネコン5社の内2社、準大手ゼネコン5社、財閥系商社、建材メーカー、設計事務所、他数百を超える顧客と直取引するまでになり職人100人前後を抱える。同じころ飲食店、建設業専門経営コンサルタント業などを行なう関連会社3社も経営し、事業の多角化を行なう。 その間、約24年で多くの大型開発工事、投資用マンションとアパート建築、高層ビル建設、公共施設工事、メーカーの建材開発に携わり新施工法や新製品の商品化に貢献し徹底した品質管理と原価構造を学ぶ。しかし、拡大路線が裏目に出て廃業に至る。これを契機に経営者としての人生を徹底的に見つめ直し、顧客と社員と自身の相互利益を探求し学ぶ。 その後、不動産コンサルティングの業務に魅了され転身。 業界の活性化や顧客満足度の向上を阻む建設業界や不動産業界の古い慣習と収益構造に疑問を持ち、既成概念にとらわれない顧客サービスを模索し経営方針を固める。 現在、「経済活動を通し社会の不満、不便、不安を解消する」を経営方針に掲げ、顧客と企業の相互利益がかなうビジネスモデルを手掛け、建設と不動産に関わるすべての業界に変革を呼びかける。 (保有資格) 不動産系 1. 宅地建物取引士 2. 管理業務主任者 不動産コンサル系 1. 不動産コンサルティングマスター (合格後未登録) 2. 住宅建築コーディネーター 3.賃貸不動産経営管理士 4. 既存住宅アドバイザー 建築系 1. 一級建築施工管理技士 2. 監理技術者資格者証 3. 監理技術者講習修了証 4. 建築物石綿含有建材調査者 5. 特殊建築物調査資格者 6 マンション健康診断技術者 7. ブロック塀診断士 8. 建築仕上診断技術者 金融系 1. 貸金業取扱主任者 2. 住宅ローンアドバイザー ほか、損害保険募集人資格4種保有 その他 1. 相続診断士 2. 上級個人情報保護士 ほか、労働安全衛生法による資格16種保有