「新築は安全、中古は危険」は単なる思い込み
枦山 剛
2016/01/04
新築だから安全? 中古だから危険?
新築は新しいから安全、中古は古いから危険――。こうしたイメージを漠然と持っている人も多いかと思います。たしかに同一物件の新築時と数年後の状態を比較すれば、年数が経過するほど傷みが増えるのはしかたないことです。だからといって、新築物件のほうが中古物件より安全と考えるのは早計です。
2015年10月に横浜市で発覚した「傾きマンション」問題に見られるように、新築時に「手抜き工事」や「初期不良」を見抜くことは極めて困難だからです。杭打ちがそうであったように、いくら設計図を見ても、その通りに工事が行なわれたかどうかはわかりません。
また、コンクリートなどは、通常1年程度は経過しないと安定しないといわれています。コンクリートは水を多く加えたほうが工事をしやすくなる半面、ひび割れを招きやすくなります。工事を急ぐなどの理由で加水が多くなり、住んで半年も経たないうちに、外壁のタイルがはがれたり、ベランダにひび割れが生じたりするようなケースも実際に起きています。
建築技術や建材の品質は今もなお、日々進歩しています。そのため、より新しい建築物のほうが丈夫で安全と思われがちですが、そうはいいきれないのです。
安全性は新築か中古かでは決まらない
東日本大震災以降は震災の復旧や復興とオリンピック景気等によって建設工事が多発したのはご存知の通りです。その一方で、リーマンショックや長年の建設不況で、建設職人は毎年減り続けていたため、大幅な職人不足が起こりました。
その結果、未熟な作業員が能力以上の仕事を任されたり、人手不足による作業時間短縮目的の手抜き工事が行なわれたりといったことが原因で、品質に問題のある施工が散見されるといった問題も起きているのです。
実際、特に東日本では、建設作業員の奪い合いから工事単価が大きく跳ね上がり、それを狙ってそれまで建設業と無関係だった多くの人や法人が建設業に参入しました。そして、人手不足の深刻な建設会社から受注をしたのはいいのですが、結局、経験不足が原因で完工できずに途中で現場を放棄したり、品質不足の施工を行なって、発注者から契約を途中解除されたりといった問題を発生させています。
しかし、こうした例はまだよいほうで、なかには不良施工を見抜けないケースもあります。手抜き工事が見抜けずに仕上げ工事まで完了してしまえばプロでも簡単には手抜きや施工不良を見抜けません。
したがって、建物の安全性は新築だから中古だからという単純な問題ではなく、景気や社会情勢等にも影響される複雑な問題なのです。新しい物は古い物より品質が高いといった思い込みは捨てて、中古も新築も一長一短だということを理解しましょう。
この記事を書いた人
中学卒業後に大工、建設業、鉄工業などを経て、97年、若干23歳の時に鉄工業で創業する。大手ゼネコン5次下請けからスタートし、最終的には総合建設業者として大手ゼネコン5社の内2社、準大手ゼネコン5社、財閥系商社、建材メーカー、設計事務所、他数百を超える顧客と直取引するまでになり職人100人前後を抱える。同じころ飲食店、建設業専門経営コンサルタント業などを行なう関連会社3社も経営し、事業の多角化を行なう。 その間、約24年で多くの大型開発工事、投資用マンションとアパート建築、高層ビル建設、公共施設工事、メーカーの建材開発に携わり新施工法や新製品の商品化に貢献し徹底した品質管理と原価構造を学ぶ。しかし、拡大路線が裏目に出て廃業に至る。これを契機に経営者としての人生を徹底的に見つめ直し、顧客と社員と自身の相互利益を探求し学ぶ。 その後、不動産コンサルティングの業務に魅了され転身。 業界の活性化や顧客満足度の向上を阻む建設業界や不動産業界の古い慣習と収益構造に疑問を持ち、既成概念にとらわれない顧客サービスを模索し経営方針を固める。 現在、「経済活動を通し社会の不満、不便、不安を解消する」を経営方針に掲げ、顧客と企業の相互利益がかなうビジネスモデルを手掛け、建設と不動産に関わるすべての業界に変革を呼びかける。 (保有資格) 不動産系 1. 宅地建物取引士 2. 管理業務主任者 不動産コンサル系 1. 不動産コンサルティングマスター (合格後未登録) 2. 住宅建築コーディネーター 3.賃貸不動産経営管理士 4. 既存住宅アドバイザー 建築系 1. 一級建築施工管理技士 2. 監理技術者資格者証 3. 監理技術者講習修了証 4. 建築物石綿含有建材調査者 5. 特殊建築物調査資格者 6 マンション健康診断技術者 7. ブロック塀診断士 8. 建築仕上診断技術者 金融系 1. 貸金業取扱主任者 2. 住宅ローンアドバイザー ほか、損害保険募集人資格4種保有 その他 1. 相続診断士 2. 上級個人情報保護士 ほか、労働安全衛生法による資格16種保有