築37年・屋根の抜け落ちた空き家を、新築同然に再生した方法とは?
高橋 洋子
2016/07/28
築37年、屋根の抜け落ちた空き家の工事前の様子<ビフォー>
空き家再生には3つの方法がある!
空き家を購入した後、誰もが直面するのがリフォームをどうするかという問題です。リフォームにかける費用はなるべく抑えたいと考えるのは当然のことです。でも大地震に備えて、耐震補強はしっかりと対策しておきたいところです。
今回は、空き家をマイホームに素敵によみがえらせたり、戸建賃貸として家賃収入を得る家にしたりするためのリフォームの考え方をご紹介します。
空き家に手を入れて再生するためには、段階別に次の3つの方法があります。
(1)リフォーム:壁紙がはがれたら貼り直す、水回りが壊れたら修理するといった修繕工事
(2)リノベーション:間取りもデザインも大幅に変える大規模改修工事
(3)建て替え:家を解体して更地にし、新たに家を建てる工事
「予算」と「規模」で再生方法を決める
工事後、築37の空き家が新築同然によみがえった<アフター>
この3つのうち、どれを選ぶかは「予算」と「手を入れる規模」によって決まります。ここでは、戸建賃貸用の物件を購入した場合を考えてみましょう。
まず空き家といっても、そもそもリフォームをしなくても人に貸せる状態の物件もあり、なかには清掃しただけで入居者が見つかったケースもあります。
一方、それほど傷みがない場合でも、たとえば水回りのように、不具合の箇所によっては、専門家に修理やリフォームを任せなければならないケースもあります。そうした場合でも、できるだけ低予算ですむように、必要最低限の工事ですませたいものです。
傷みが進んでしまっている場合には、ある程度お金をかけて、大幅に手を入れなければならないこともあります。そういった場合は、リノベーションという選択肢が考えられますが、リフォームよりもずっとお金がかかりますし、建物の構造上、リノベーションができない物件もあります。
上記のように、リノベーションができないなど、場合によっては建て替えたほうがいいこともありますが、お金をかけすぎると投資効率が悪くなり、費用を回収するまでに長い時間がかかってしまいます。
そこで、最近では低価格で一戸建てが建築できる「ローコスト住宅」を売りにするハウスメーカーも増えており、800万~1000万円で家が建つようになりました。投資家のなかには、空き家を買って解体・撤去して、1000万円ほどのローコスト住宅を建て、新築戸建てとして賃貸に出す手法をとっている方もいます。
このように空き家を購入後、貸し出すまでにはさまざまな選択肢があるのです。
リフォーム前にプロに診断してもらう
リフォーム業者の無料の診断結果がまとまった報告書
リフォーム費用を抑えることは、投資効率を上げることにつながりますが、リフォームにお金のかからない家を見分けるのは至難の技です。
最近では、水平を計る機能をもったスマートフォン用のアプリがあり、マイホームを探しているご夫婦の内覧に同行すると、ご主人がスマートフォンを床に置いて、水平器のアプリで床の傾きを測りながら、「東側に1度傾いているのですが、どうしたらいいでしょうか」と不動産会社に質問する光景も見られます。
傾きのほかにも、木造一戸建てにありがちな、シロアリ被害、お風呂場の木の腐食などに気づく場合もあります。
自分の目で気づけばいいのですが、隠れたところの不具合まではなかなか見抜くことはできません。そこで、プロの目で家を厳しくチェックしてもらうことをおすすめします。
住宅そのものに欠陥があると修繕費用がかさむため、購入前に住宅診断(ホームインスペクション)を行なうといいでしょう。専門業者であるホームインスペクター(建物診断士)に依頼すれば、5万円ほどで家の状態を診断してもらえます。
ちなみにホームインスペクターの受験資格は特にありませんが、建築士、宅建資格保有者が受験するケースが多く、合格率は25%前後。相応の知識が必要です。それぐらい素人にはかなわない専門知識を持っています。
また、リノベーション業者の無料診断サービスを利用するのも賢い方法です。購入前の中古住宅でも診断してくれます。
リフォーム会社の無料の住宅診断を活用しよう
私は、築37年の中古一戸建てを買うかどうか迷っていたときに、リノベーション業者に無料診断を依頼しました。診断後に20ページほどの報告書にしてまとめてくれます。
家を目視でチェックしたあと、パソコンの専用ソフトに数値を入力し、画面上で家を揺らして、家の強度を調べるなど、とても素人ができるレベルではない診断をしてくれました。
こうした診断を受けたことで、私も家を買う前に、耐震状態の悪さや土台にひび割れがあることを知ることができたのです。
ただ、古い家の場合は、プロの目で診断を受けたとしても、壊してみて初めてわかることがあります。わが家の場合は、それはお風呂場でした。古い浴槽を取り外すと、浴槽を支えていた木のほとんどが腐っていたのです。リフォーム業者によると、在来工法で建てた木造一戸建てのお風呂の支柱は腐っていることが多いそうです。
空き家を購入する際には、しっかりと建物の状態をチェックして、リフォームプランも同時に考えながら物件を選ぶことをおすすめします。次回はリフォーム会社の選び方とリフォームプランの考え方について解説します。
この記事を書いた人
暮らし研究所エメラルド・ホーム代表
暮らしのジャーナリスト・ファイナンシャルプランナー 1979年岐阜県生まれ。 情報誌の編集、フリーライターを経て現職。空き家をリノベーションし、安くマイホームを購入した経験から、お得なマネー情報の研究に目覚め、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。講演・執筆・FP相談を通じて、家探しの基本から中古住宅の価値向上とリノベーションの魅力を伝えている。空き家活用に関するセミナーは3年でのべ2000名が参加し、「わかりやすくて、おもしろい。勇気がもらえる」と幅広い世代から好評を得ている。著書に『家を買う前に考えたい! リノベーション』(すばる舎)、『100万円からの空き家投資術』(WAVE出版)など。