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住宅診断の必要性について

皆川聡皆川聡

2016/06/16

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前回、中古住宅市場の活性化ということで、法定耐用年数を超過した物件について記載させていただきました。 今回は、その中古住宅市場の活性化のために、その前提となる住宅診断(ホームインスペクション)の必要性について、記載いたします。

早期発見・早期治療と早期発見・早期修繕

さて、皆様、そもそもご自身のお身体について、年一度は、健康診断をされると思いますが、それは何故なさるのでしょうか?

おそらくそれは、ご自身のお身体のどこかに病気がすでに発症、またはその因子が発生していた場合に、それらをできる限り早期に発見するためだと思います。 さらに、発見した因子などに対して、早期治療を行うことにより、健康寿命を延ばし、ご家族などとより長く幸せに過ごすことだと思います。

建物についても、早期に悪い箇所を発見し、早期に修繕等の対処を行うことにより、建物も頑強なまま維持され、長寿命化し、建物内の生活環境も改善されます。 建物内の快適環境により、心身も建物も健康寿命が長くなると言えます。

従前の担保評価とこれからの担保評価

皆様、ご自身もしくはその周辺の木造の建物で、築30年以上経っていて、その家に住んでもいいかなと思うほど手入れが行き届いた物件もあると思います。 単純に築年数だけで建物は評価できないと言えます。

そもそも、中古住宅は大工や住宅メーカーの施工の程度とその後の使用者のメンテナンス状況等により、建物の劣化状況が異なります。 要するに蓋を開けてみないと劣化状況は分かりません。

また、従来の金融機関の担保評価では、外観調査を前提とした鑑定評価が主流でした。 金融機関からは、「債務者または債務予定者に気が付かれないように、調査し評価せよ」ということでした。

「本当に評価しているのか!?」と元板前の私は、そう思いつつ、いつも評価をしておりました。

また、金融機関では、バブルの経験を教訓に、過度に楽観的な融資を戒めることから、担保については保守的評価ということも根付いており、そのことも相俟って、法定耐用年数を超過した建物はゼロ評価という行内査定が一般的に続いております。 しかし、昨今では、中古住宅市場の活性化が国交省から叫ばれております。

要するに、 「今までは蓋を開けないようにしていましたが、今後は蓋を開けましょう」 「そして、リスクを開示しましょう」 ということです。

今後は、次のようなイメージになります。

建物の物的な劣化状況やその疑義の確認を住宅診断士が行い、
それらの調査を基に経済価値の判定を不動産鑑定士が行い、
それらを基に融資付けを金融機関が行う
従前、ゼロ評価であった築古建物については、今後は、きちんとメンテナンス等を施していれば、住宅診断士の結果と不動産鑑定士の鑑定評価により、建物の価値が見直されます。 そしてまた、当該価値の精査部分に融資が付けられる時代がやってきます。

住宅診断の必要性

皆様お持ちの物件のメンテナンスの状況はいかがでしょうか? 費用対効果のバランスでなかなか難しい面も多いと思いますが、その劣化状況を放置することの方が、将来、割高なコストとして跳ね返ってくることも多々あります。 その状況をリフォーム屋さんに確認してもらうから、わざわざ住宅診断士を頼まなくてもいいよ、というのも一つの手段だと思います。

しかし、リフォーム屋さんの中には、リフォームありきの診断のため、「診断料は無料またはそれに近い金額で行います」といった業者もおりますので、リフォーム業者選定には注意が必要になります。 昔よりも減ってはいますが。。。

今までのお付き合いの方など、信頼関係が既に構築されていらっしゃる方でしたら、住宅診断士も必要ないとも思います。 しかし、初めて、リフォーム会社へご依頼される方は注意が必要です。

そこで、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会の住宅診断士は、第三者性保持しておりますので、ご安心いただけると思います。 また、賃貸物件でしたら、できる限り最低限のコストでもって、効果増を期待するということの観点も必要になるものと思われます。 本当に、賃貸物件に対して修繕費用をかけて、空室対策や賃料値上げに効果があるのか否かについて、また、今行うのか5年後行うかなどは、より慎重なご判断が必要になるのではないかと思います。

まとめ

まとめますと、従来では、築古物件の建物価格がゼロであったという時代から、建物をメンテナンス等により、可愛がっていれば、建物価値が見直される時代になってきています。 これこそが、中古住宅市場の活性化であり、その前提として、客観的な住宅診断が必要になることが分かっていただけたと思います。 皆様のお持ちの物件も、これまでの常識にとらわれずに、今後の動向も踏まえて、ご資産形成にお役立ていただければ幸いです。

今回はここまでとさせていただき、次回につきましては、「住宅診断の内容」について、記載させていただきます。

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この記事を書いた人

不動産鑑定士

株式会社あおい不動産コンサルティング。大手不動産鑑定会社、株式会社三友システムアプレイザルに従事し、その後独立。 不動産鑑定業務が主ですが、住宅診断(ホームインスペクション)も対応しております。財務諸表・会社法・税務等についても、スキームに応じた鑑定評価の立ち位置を認識しております。相続・事業承継関係等にも勿論対応させて頂きます。<br> 賃料の評価・査定につきましても、数多くの案件を携わっており、得意にしております。 [担当]物件調査 皆川聡は個人間直接売買において物件調査により権利関係の確認をします。 個人間直接売買における皆川聡の詳しい役割はこちら

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