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「人口100人でみた日本」で10年前と現在を比べる

朝倉 継道朝倉 継道

2025/10/28

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お子さんが「社会」に興味を持ち始めたら

お子さん、あるいはお孫さんが、小学校高学年くらいになり、自身を取り囲む「社会」のありように興味を持ち始めた―――そんなとき、一緒に眺めてみるとよい資料がある。

厚生労働省が、厚生労働白書に添えて毎年公表している「人口100人でみた日本」だ。日本の人口を仮に100人であるとして、雇用、福祉、医療など、さまざまな分野の数字を拾い、まとめたものとなる。わが国社会の「いま」をかいつまんで、分かりやすく知ることができる。

なお、おススメは、この資料に示されている各数字を過去の年次版のものと比べてみることだ。時間を経て変わっていく国の姿がリアルに掴めてくる。

この記事では、最新の2025年版(令和7年版)と10年前の2015年版(平成27年版)を見比べつつ、内容のいくつかを紹介していくこととしたい。

子どもより、おじいちゃん、おばあちゃんの人数が多くなった

まずは、子どもと高齢者の数だ。日本の人口を仮に100人とすると、それぞれ以下のとおりとなる。

65歳以上 75歳以上 15歳未満
25年版 29.3人 16.8人 11.2人
15年版 26.0人 12.5人 12.8人

このとおり、15年版では、15歳未満の数字がわずかながら75歳以上を上回っていた。

しかし、25年版では逆転されている。少子高齢化がぐんぐんと進んだこの10年ということになる。

なお、15歳未満と65歳以上全体を比べた場合は……

15歳未満と65歳以上の比較
25年版の65歳以上 約2.62倍
15年版の65歳以上 約2.03倍

ちなみに、これら両者の人口は、国の推計を見るといまから10年後はこのようになっている。(国立社会保障・人口問題研究所 日本の将来推計人口・令和5年推計)

2035年の推計人口
年齢 人数
65歳以上 3773万2千人
15歳未満 1169万1千人

65歳以上人口は、15歳未満人口の3倍をゆうに超える(約3.23倍)との予測だ。

少子化は進んでも、大学生・大学院生は増えている?

上記のとおり、少子化が進んでいるわが国だが、学校で学ぶ児童や生徒、学生の数はどんな様子だろう。

小学生 中学生 高校生 大学生・大学院生
25年版 4.8人 2.5人 2.3人 2.4人(唯一増えている)
15年版 5.2人 2.8人 2.6人 2.2人

上記のとおりだ。小・中・高校生の数字はそろって減っている。一方で、大学生・大学院生は増えている。

そこで、文部科学省が昨年末近くに公表した「学校基本調査」の結果を覗いてみると(24年度確定値)……

  • 大学(学部)進学率 59.1%
    (前年度より1.4ポイント上昇し、過去最高)
  • 大学院も含んだ大学全体の在学者数 約295万人
    (前年度より約4,200人増加し、過去最多)

なるほど。現在、日本のキャンパスはかなり賑やかなようだ。

ただし、在学者数の内訳を見ると……実はこうなっている。

対象 在学者数 前年度からの増減
学部 約262万8千人 約4,500人減
大学院 約27万2千人 約5,700人増
専攻科 約900人 ほぼ横ばい
別科 約6千700人 約1,900人増
その他 約4万2千人 約1,200人増

このとおり、大学で学ぶ人の中心となる学部在学者の数は増えていない。少子化の影響はここに正しく(?)表れてきているともいえそうだ。

雇用が増え、働きやすくもなった?

次に「労働」の分野だ。こんな数字がある。

雇われている人
男性 女性
25年版 26.6人 22.9人
15年版 24.9人 19.2人

見てのとおり、男女ともにいまは増加している。さらに……

失業している人
人数
25年版 1.4人
15年版 1.9人
長時間(週60時間以上)働いている人
人数
25年版 2.7人
15年版 4.5人

このとおり、10年前に比べいまは雇用が増え、失業が減り、かつ長時間労働も減っていることを窺わせる数字が挙がっている。

4割超が「通院」

健康・医療の分野を見てみよう。こんな数字がある。

病気やけがなどで通院している人
人数
25年版  41.7人
15年版 37.8人

驚いた人も多いのでは。わが国においては、現在「通院している人」が、なんと人口の4割を超えている。

なお、この数字の出どころは「国民生活基礎調査」(2022年の大規模調査)だ。年代別の内訳をひろってみる。

各年代においての人口100人に対する通院者数
年代 人数
9歳以下 13.1人
10~19歳 13.8人
20~29歳 15.4人
30~39歳 21.1人
40~49歳 28.0人
50~59歳 41.9人
60~69歳 59.0人
70~79歳 70.8人
80歳以上 72.8人
65歳以上 69.6人
75歳以上 72.9人
全年代の総数 41.7人

このとおり、60代はほぼ6割が通院者だ。さらに70代だとほぼ7割。80代以上となると7割をやや超えてくる。これら高齢の世代が、全年代での数字を大きく押し上げていることがよくわかる。「老いても健康」は理想だが、現実にはなかなか難しいチャレンジでもあるようだ。

「日本の1日」も見てみよう

以上、厚労省による「人口100人でみた日本」の最新2025年版と10年前の2015年版から、いくつかの数字を抜き出し、それぞれを比べてみた。ほかにも興味深い項目、数字があるので、下記リンク先にてぜひご覧になっていただきたい。

厚生労働省 白書、年次報告書

ところで、厚生労働白書に添えられている誰にでも分かりやすい資料として、もうひとつ「日本の1日」というのもある。こちらも上記リンク先でご覧いただける。日本で1日に起こる出来事の数を調べてみた―――との内容だ。

数字をひとつ、この中からピックアップしてみよう。さきほどの「100人でみた~」同様、最新のものと10年前のものを比べてみる。

結婚するカップル(1日あたり)
25年版 1,325組
15年版 1,764組

15年版に比べ、25年版の数字は約3/4。大きく減っている。

結婚と出産の結びつきが強いといわれるわが国にあって、少子化・人口減少を強力に押し進める、まさに基盤になっているといえる数字だろう。

(文/朝倉継道)

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この記事を書いた人

コミュニティみらい研究所 代表

小樽商業高校卒。国土交通省(旧運輸省)を経て、株式会社リクルート住宅情報事業部(現SUUMO)へ。在社中より執筆活動を開始。独立後、リクルート住宅総合研究所客員研究員など。2017年まで自ら宅建業も経営。戦前築のアパートの住み込み管理人の息子として育った。「賃貸住宅に暮らす人の幸せを増やすことは、国全体の幸福につながる」と信じている。令和改元を期に、憧れの街だった埼玉県川越市に転居。

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